銀色ジャスティス | ナノ


▼ ジジイになってもあだ名で呼び合える友達を作れ

ドォォンと鳴り響く爆発音。あたしはそれを気にすることなく昼寝を続けた。だがそれはある男に妨害されることになる。


「風香起きろ。そんで総悟起こせ」

『……』

「風香?」

『……zzz』

「………」


カチャッと音がする。
あ、ヤバイと思った時には既に遅く、あたしが寝ていた場所に容赦なく刀が降り下ろされた。あっぶね。


「やっぱ起きてやがったか」

『起きてなかったらどーするつもりだったんですか、土方さん』

「そん時ゃそん時だ」

『うっわ最低この上司』


あたしは内心で彼――土方十四郎を死ねこのクソ上司が、と貶しながら総悟を起こしに取りかかる。
土方さんは窓の外を望遠鏡で何かを見ている。え、まさか覗き?うわ気持ち悪。
土方さんはとうとう尻尾出しやがった、と呟いた。何のことだかさっぱりだ。


「山崎、何としても奴らの拠点おさえてこい」

「はいよっ」


山崎退――通称ザキは、土方さんに命令されたことを実行するため部屋を出て行った。奴らの拠点?意味がわからない。こんなことなら会議の時きちんと起きてりゃよかった。ちょっと後悔。
土方さんはタバコの煙を吐いて言った。……タバコくさっ!


「天人との戦で活躍したかつての英雄も、天人様様の今の世の中じゃただの反乱分子か」

『……』

「この御時世に天人追い払おうなんざたいした夢想家だよ」


土方さんは手に何かのチラシを持っていて、それをクシャと丸めた。何かイラついたあたしは土方さんからそれを奪い取り総悟の頭に思いきりブチ当てた。


「〜〜っ」


相当痛かったらしい総悟は目に涙を浮かべながら起きた。


「何すんですかィ、風香」



土方さんは内心ざまあみろとでも思ったのか、普通に総悟に話しかけていた。 


「風香もそうだけどよ、お前らよくあの爆音の中寝てられるな」

「爆音って…またテロ防げなかったんですかィ?何やってんだィ土方さん、真面目に働けよ」

『そーだそーだ』

「もう一回眠るか、コラ」


土方さんの眠りは永眠な気がして恐い。


「天人の館がいくらフッ飛ぼうがしったこっちゃねェよ。連中泳がせて雁首揃ったところをまとめて叩き斬ってやる。真選組の晴れ舞台だぜ、楽しい喧嘩になりそうだ」


そう言って土方さんは刀の峰をなでる。ちなみに、そのまま指が全部落ちちゃえばいいのに、何て思ったのは秘密だ。





第一訓 池田屋篇
ジジイになってもあだ名で呼び合える友達を作れ





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