* * * 「はいはい!みんな!そこまでっ!」 今にも刀剣男士たちがぶつかりかけようとしたその時だった。 可憐な声が上がり、一人の女性が真ん中に立つ。 この本丸の主であり、審神者の美奈。 彼女の登場で、刀剣たち全員に動揺が走る。 みんな、美奈が大好きだった。 だからすぐ、持っていた刀をおろし、鞘におさめる。 間違っても大好きな美奈を、切らないように・・・・。 「美奈、これはその・・・・!」 鶴丸が口ごもった時、美奈はこの場に不釣り合いな笑い声をあげた。 「あはは!ごめんね、みんな。実はこれ、お芝居なの。 私と、この闇落ちメンバーで考えた。 お芝居っていうより・・・想定、かな?」 彼女の言葉に、闇落ちメンバー以外は目が点になる。 美奈の後ろで、小狐丸がぽりぽりと頬をかき、 堀川と今剣の二人が笑った。長谷部はコホンと咳払いをする。 「想定・・・とは、どういうことであるか?美奈殿・・・」 宗近が苦笑しながら彼女に問うと、美奈は目を細めて説明し始めた。 「これだけ刀剣が集まれば、今回みたいに、 もしかしたら闇落ちしてしまう刀剣たちがいるんじゃないかと思ってね。 その時刀剣たちは自分の意志で、かつて仲間であった刀剣と戦えるかな・・・と思って。 でも・・みんな、大丈夫みたいね。 苦しみながらも、あなたたちはかつての仲間たちと戦おうとした。 それはあなたたちが、正しい歴史を守ろうとしたということ。 誇りに思っていいことよ。そして・・・ごめんなさい。 こんな試すようなマネをして・・・・。 大丈夫。今回闇落ち役をしてくれた刀剣たちは、みんなあなたたちと同じで、 歴史を変えちゃいけないと思ってるから・・・。」 ぺこりと美奈がみんなに頭を下げる。 全てを知った刀剣たちの顔に、安堵が広がった。 わっ・・・と、闇落ち役を買って出た刀剣たちの元に、他の刀剣たちが集まる。 「歴史を変えちゃいけないこと、ちゃんと主から学びました。 義元公も、きっと望んでないことです。」 「いくら辛くても、歴史は変えちゃいけないんだよね?兼さん。」 「加州、言ったでしょ?沖田君の運命は変えさせないって。 だから、安心していいよ。」 「国広が死んでしまっては、 他の国広作の刀剣たちまで死んでしまうことになるからな。本意じゃない。」 「魔王といえど、それなりに私を大事にしてくれましたから。」 「いち兄、さっき言ったのは・・・その・・・全部嘘だ。 俺っち、あんたを兄貴だと思ってるし、頼ってる。ひどいこと言って、ごめん。」 「ぬし様を独り占めするのはよさそうですが、 闇落ちなどすれば、ぬし様を悲しませてしまいますからね。」 「歴史を変えてしまうのは、主命に反している。よって俺は、闇落ちなどせん!」 わーわーと騒ぐ刀剣たちを見て、美奈はにっこりと笑った。 そう。誰にも闇落ちなどして欲しくない。 そして、誰にも折れて欲しくない。 元は刀といえで、彼らは自分にとって、かけがえのない存在なのだから。 「美奈、今回は芝居だったわけだが、 もしこの中で本当に闇落ちした刀剣がいたとしたら、 その時はどうする・・・・?」 騒ぐ彼らを見ながら、美奈のそばにいた鶴丸が静かに尋ねる。 彼女は真剣な眼差しをして、彼のほうを見て言った。 「その時は全力で潰させてもらいます。 歴史を改変するなど、もってのほかです。私は審神者。 歴史を守る者でもあるのですよ。」 彼女の言葉に、鶴丸はニヤっと笑うのだった。 *長々と読んでくださり、ありがとうございました! おまけが長過ぎ!(笑) back |