「あっ、あぁっ……洋ちゃぁ……っ」
「は、スゲー嫌そうな顔してるわりには可愛い声で鳴くじゃねーか」

その場に体をねじ伏せられ、両足を限界まで開かされた僕は、必死に腰をくねらせて逃げようとする。
しかし、僕の股間に無理矢理与えられている快楽のせいで、情けなくも腰が抜けてしまって。

「そんなに腰振って……無理矢理犯されてよがってんの?」
「あっ、やぁんっ……」
「気持ちいいんだろ? なぁ……今日のアトリエでのお前……すげーヤラしい顔してたよ」
「……ッ!」
「こうなること……期待してたんだろ?」
「う、ぁっ……!」

いつの間にかお尻の中に突っ込まれていた洋ちゃんの長い指。
洋ちゃんの指は僕のお尻を激しく出入りして、遠慮なしに僕の肉襞を掻き抉った。

「ひゃうっ……んっ……!」
「イイ声だよ、笹川……お前、絵だけじゃなくてコッチの才能もあるんじゃねーの?」
「やだ……洋ちゃ……も、やぁ……」
「何がイヤなんだよ? こんなに気持よさそうに鳴いてるクセに」

洋ちゃんはクスクスと凍りついた笑みを顔に貼りつけながら、僕の奥深くを引っ掻いた。

そう、僕は洋ちゃんを想って自慰に耽ることも少なくなかったのだ。それも、後ろの。

僕はお尻が凄く気持ちいいことをよく知っていた。

「あっ! あぁんっ……! だめっ……だめぇッ……!」
「ははっ」
「そっ……そこはぁ……!」

ビクンビクンと小刻みに肢体を跳ねさせる僕を、洋ちゃんは冷ややかな目で見下ろしていた。

「ココがいいのか?」
「やっ……! ひ、やぁっ……」
「てかお前、随分と気持よさそうにしてるけど……俺以外の男に体を抱かせたりしたのか?」
「違っ……そんな、こと……してなっ……」
「ふーん、じゃあなんでココがこんなに気持ちいいんだ? なぁ、なんでだよ?」
「あっ! あっ、あぁっ……!」

洋ちゃんは不満げに、僕の中を指で激しく突き上げた。
イイところを突かれる度に、洋ちゃんに犯されたがっていた僕の身体は欲望から涙を流して歓喜に震える。

「ほら、正直に言えよ……処女じゃねぇくせに、嘘ついてんじゃねぇよ!」
「ちがうっ……! 誤解……誤解だからっ……! あぁっ、指抜いてぇっ……!」
「本当は抜いてほしくねぇんだろ? 本当は指じゃなくて、もっと太い男のチンコをケツにブチ込まれたいんだろ!?」
「そんな──あぁっ! あぁぁっ……洋ちゃっ、洋ちゃぁんッ……!!」
「うるせぇ!! 俺をそう呼ぶんじゃねぇよッ……胸糞悪い……!!」
「ひぁっ、あっ、あぁっ……あぁぁーっ……!」

ここにいる洋ちゃんは、今まで一緒に過ごしてきた洋ちゃんじゃなかった。
今、僕を陵辱しているのは洋ちゃんなんかじゃない。
洋ちゃんは……洋ちゃんは、僕にこんな酷いことしない。

「なぁ、笹川先生……? 画家なら画家らしく、自分の体をキャンバスにしてみるのも一興じゃないか?」
「……ッ!?」
「ははっ……先生、これを見てくれよ。離婚して家を出て行った母さんの画材だ」
「洋ちゃっ……!?」

するりと僕のお尻の中から洋ちゃんの指が引き抜かれる。そして、その代わりに──。

「ああぁぁんっ……!!」

筆が一本、挿入された。

「ここにはな、形も太さも違うたくさんの筆があるんだ……お前の淫乱なケツ穴に何本入るだろうな?」
「ああぁっ……! やめっ……やめてぇっ……!!」
「楽しいなぁ、笹川……! 俺は今、愉快で愉快でしょうがないよ!」
「あっ……ひあぁっ……!」

ズブリと、一本ずつ一本ずつ、僕のお尻の中に筆が挿入されていく。
もうまともに彼を見ていられなかった。

「ほら先生、今自分の尻に何本入ってるかわかるか? 答えてみろよ……」
「い、やっ……!」
「嫌じゃねーよ! 尻に筆突っ込まれてこんなにチンコ勃起させながら先走り漏らしてるクセに!!」
「いやっ……いやぁ……」
「見ろ、これで四本目だ……よく味わえよ……!!」
「あぁぁんっ……!!」

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。
たまらない羞恥心。やるせない屈辱。
大量の大粒の涙がボロボロと溢れ落ちる。

「あ? なに泣いてんだよ……泣きてぇのはこっちだっつの……!」
「うっ……ううぅ……」
「好きでもねぇ……むしろ憎いくらいのお前と恋人ゴッコして……心にもないような甘いセリフを言わせやがって」
「うぅ……うあぁぁ……」
「反吐が出るんだよ、お前といるとさ……自分が惨めで惨めで……吐きそうになるんだよッ……!!」

洋ちゃんは手にとった真っ赤な絵の具の蓋を外すと、チューブを僕の体の上で思いっきり握りつぶした。
ブチュッと汚らしい音を立てて、大量の“赤”が僕の体を彩る。

「お前の真っ白な肌には、深紅が似合うよ」

ぶちまけられた、赤、赤、赤。
その赤を一際大きな筆で掬うと、洋ちゃんは僕の体にたくさんの赤い線を描き始めた。

「ほら……こうしてやると、体にムチを打たれて滲んだ血液が、体中から溢れ出してるみたいだ……」
「はぁっ……ん……」

ほぅ、と恍惚の表情で囁く洋ちゃん。
その目は何かに取り憑かれているかのように虚ろだ。

「真っ赤なキズだらけで、情けなくて、惨めで……なのに、前を勃起させて……」
「あ……ぁ……」
「この赤に、お前の先走りが合わさって……」

洋ちゃんの筆が僕の鈴口から垂れる透明な液を掬いとって、竿に塗りたくるように滑り降りてゆく。
敏感な僕の体は、尚も激しい筆の愛撫を求めて腰を浮き上がらせていた。

「やっ……あぁん……!」
「はははっ! これじゃあキャンバスっていうよりパレットみたいだなァ、笹川?」
「ふぁっ……やっ……」

後ろを突き上げる四本の筆と、皮膚を舐めるように走る一本の筆。
自分の体が本当のパレットのように扱われているこの状況に、僕はいたたまれないほどの恥辱を感じていた。

しかしその一方で、確かに並々ならぬ興奮をも覚えていた。

「ほら、気持ちいいか? 筆で胸や脇腹を嬲られて、尻の中を犯されて……気持ちいいんだろ?」
「あっ……あぁんっ……洋ちゃ……」
「素直になれよ、笹川。そうすればお前の大好きなチンコ突っ込んでやるからよ」
「あっ……あぁ……洋、ちゃぁん……」

ああ──欲しい。
僕の心は恥辱の嫌悪感でいっぱいなのに、股間にそそり立つはち切れんばかりの欲望は、涙を流して激しい愛撫を期待していた。

「うっ…ぁ……洋ちゃ…もう……ほし、…よぉ……」
「あ? なんだって? もっとハッキリ言えよ」

本当はすごくすごく、洋ちゃんが欲しいよ。
僕は洋ちゃんが好きで、大好きで、洋ちゃんと最後まで──。

「ずっと、洋ちゃんと……! んんっ、……して、みたかった……!」
「……」
「でも洋ちゃんっ……して、くれないからっ……! 僕はっ……んぁっ、ずっと、一人で……!」

僕は必死に想いを言葉に紡いだ。
涙の嗚咽と興奮とで呼吸が荒ぶってしまい、上手く単語が繋げられない。

「はぁ……洋ちゃんっ……! 好き……好きっ……」

僕は洋ちゃんとしか、こんなこと──。

「はっ、そうかよ?」

僕の告白を聞いた洋ちゃんは、妖しげにニヤリとほくそ笑んだ。
でも心なしか、少しだけ悲しそうにも見える。

「じゃあ──」

洋ちゃんは僕の尻穴に挿入された四本の筆をまとめて掴み上げると、そのまま一気に外へ引き抜いた。

「ひっ、あぁぁーッ……!?」

引き抜かれる際に形や太さの違うそれぞれの筆が中の肉を抉り、なんとも言えない快感が僕の全身を襲う。

「はぁ、ぁっ……あぁ、ぁっ……」

僕は大きく股を開いて足の指を反らしながら、ビクビクと体を痙攣させた。
口からは情けなく涎を垂れ流すが、気持ちよさで狂った僕の思考はもうそんなことどうでもよかった。

すっぽりと穴の空いた僕のお尻の中に、早く彼のモノを挿入してほしい。

「──大好きな俺のチンコに犯されて、バカみてーにイッちまえよッ……!!」
「やっ、んあぁぁぁーッ……!!」

長年待ち望んだ洋ちゃんの熱くて硬いモノが、ようやく僕の中へ捩じ込まれた。
僕の全身は歓喜に震えて、それはまるで陸地に打ち上げられた魚のようだった。

「はっ……あぁぁ…ぁっ……!」

僕はこの感覚がなんなのか、これがどういうことなのか知っている。
この感じ──これは間違いなく、快楽の波だ。絶頂の波だ。

「は……? なにお前、突っ込まれただけでイッたのか? 出さないで、後ろだけで?」
「はあぁ……ぁ、ん……」

意識がはっきりとしないまま、僕は喘ぎ混じりに小さく頷く。
未だにピクピクと疼く体を、自分の意志で静止させることができない。
自分の体が言うことを聞いてくれない。自分の体が洋ちゃんに屈服させられてしまったような感覚。

「お前、いつもこうやって後ろ使ってオナニーしてたのか?」
「やっ……ぁ……」
「とんだ変態だよ、お前。学校じゃあんなに大人しくて絵に描いたような優等生やってんのに、裏の顔はただの変態野郎だったのか」

涙が出るくらい辛かった。悲しかった。恥ずかしかった。
なのに、どうして僕の股間は勃起したまま透明の涙を流し続けているのか。

どうして本気で抵抗しないのか。
どうして本気で逃げようとしないのか。

「おら、気持ちイイんだろ? 言えよ、気持ちイイって」
「……っ」
「今更、気持よくないなんて言えないよなぁ……笹川?」
「んっ……!」

洋ちゃんの手が僕の陰茎を強く握った。

「はぁ、あぁんっ……!」

そしてすぐ、僕のモノが痛いくらいに激しく上下に扱かれる。
こんなに激しい愛撫をされて、気持ちよくないはずがなかった。

「あっ……あっ、んっ! だめぇ……洋ちゃ、ぁっ! 僕、またぁっ……」
「何度でもイケよ! 憎いお前がアホみてぇに鳴いてる姿見てると、笑えるくらいスカッとするよ」

笑えるくらいスカッとする──洋ちゃんはそう冷たく言ったけれど。

「あぁ、んっ……洋ちゃっ…! あっ……!」

僕にはどうしても、そんな風には見えなかった。
そう言った洋ちゃんの表情はむしろ、寂しそうで、悲しそうで。

「なぁ、笹川! 俺が憎いだろう! 長年お前を騙し続けてきた俺が、憎くて憎くてたまらないだろう!!」
「んっ……! んぅ、やっ……ぁ!」
「だけど淫乱で変態なお前はそんな俺のチンコ美味そうに咥え込んで、いやらしく腰振ってアンアン鳴いてんだぜ? 自分がすげー惨めに思えてくるだろ? この状況に甘んじている自分に虫酸が走るだろ? 殺したくなるくらい俺が憎いだろ? どうしようもないこの状況に──諦めの気持ちさえ抱くだろッ……!?」
「ひっ、あぁぁーっ……!」
「それだよッ──! 俺が今までお前に対して募らせてきた“想い”はソレと同じだッ……!!」

身を切るような沈痛の叫びを曝け出す洋ちゃんは、今すぐにでも泣き崩れてしまいそうにすら見えた。

「ひっ、んっ……あぁ……っ!」
「ホラ! 何度でもイッちまえ! 情けない姿を晒して俺を満足させろよ!! それがお前にできる唯一の罪滅しなんだよ!!」
「ああぁあぁっ……!」

洋ちゃんの牡に荒々しく肉襞を突き上げられ、僕は衝撃を耐えるようにぐっと空を掴む。
するとその手が偶然、何かに触れた。

「……っ! んっ、あっ……」

それは、カッターで狂ったように切り刻まれ、床に剥がれ落ちた──。

「あ───」

──洋ちゃんの絵の欠片。

「く、……なんだよ……何か言いたげだな? 恨み言の一つや二つくらいなら聞いてやってもいいぜ?」
「う、ぁ……んっ……」

そうだ、ちゃんと言わなきゃ。
ここで言わなきゃ、洋ちゃんはもっともっと。

「洋……ちゃっ……!」

──もっともっと、壊れてしまう。

「ねぇ……洋、ちゃんっ……」

──ねぇ、洋ちゃん。

「洋ちゃ……これ──この、絵っ……! 同じ風景を描いた作品で……構図も似てるけど……」
「…………」
「こっちのっ……絵は……! 僕のと、違って……すごく……あったかい、ね……?」

陵辱に泣き叫んで、枯れた声。掠れて上手く声が出せないけれど、一生懸命、言葉を紡ぐ。

「このふたつの絵は……全然、ちがうっ……、ぱっと見……似通っているように見えるけどっ……」
「…………」
「全然、ちがう……別もの、だよっ……!」
「──は?」

洋ちゃんの陵辱する手が止まった。
ひどく震えた洋ちゃんの瞳が、僕を見つめている。

「僕には、わかるよ……こっちの絵は、僕のと違って……抽象的で、少し……荒いんだけど……」
「……」
「でも、とっても色鮮やかで……」
「…………」
「なんだか、あったかい……洋ちゃんの絵は……すごく、あったかい……」

──ねぇ、洋ちゃん。

「ここの、色使いも……かすれ具合も、すごく素敵だね……? 青空の、霞とか……お日様の光に反射する、水たまりとか……雨上がりの香りが、絵から伝わってくる、みたい……」
「…………」
「すごく……綺麗な絵だ……」

洋ちゃんはやり場のない悲しみを僕への恨みに昇華して、自我を保っていたんだね。

「僕は……好きだな……」
「あ……ぁ……」

そうしないと、洋ちゃんは悲しみに押し潰されて、自分が壊れてしまいそうだったんだね。

「僕は……この絵が好き、だなぁ……」
「ああぁぁぁぁっ……」

洋ちゃんは、僕の上に崩れ落ちるようにして、泣き叫んだ。
全身から放たれる洋ちゃんの嗚咽が、この薄暗い空間に響き渡る。

「うぁあぁぁっ……!」
「洋ちゃん……」
「ああぁぁぁぁああぁ……!」
「洋……ちゃ……」

こんなに温かくて優しい絵を描く洋ちゃんが、酷い人のはずがないじゃないか。
今日ちょっと酷いことされたからって、僕が洋ちゃんみたいな優しい人を嫌いになれるはずがないじゃないか。

「ああぁぁあ……ごめん……ごめん、俊雄っ……!」
「うん……」
「俺は……俊雄に……八つ当たりみたいな、こと……して……!」
「ん……」
「俺は……なんて……馬鹿なことをっ……!!」
「ううん、もういいよ。洋ちゃん……大丈夫だよ」

洋ちゃんが僕の名前を呼んでくれた。
笹川……じゃなくて、やっと僕の名前を呼んでくれた。

──ねぇ、洋ちゃん。
僕は洋ちゃんが大好きなんだ。こんな酷いことされても、嫌いになれないくらいに。

「あぁぁ……ああぁぁ……!」
「洋ちゃん……」

もし、洋ちゃんも僕と同じ気持ちを抱いてくれているのなら──。

「洋ちゃん、聞いて……?」
「う、ぁぁあぁ……」

これからもう一度、最初から一緒にやり直そうか。
僕たちの真っ白になったキャンバスに、もう一度、新たな色で新しい愛を描いていこうか。

──ねぇ、洋ちゃん。

「僕は洋ちゃんのことが、好き」
「……っ!」
「好き、大好き……!」
「俊……雄っ……!」

洋ちゃんの両腕が、僕をぎゅっと抱きしめた。
その腕に、さっきまでの乱暴さは感じない。

「洋……ちゃ……」

彼の絵は、彼の心を映しだす鏡。
こんなにも温かくて、優しくて、それはまるで“あの絵”のように。

「好きだ。俺も好きだ、俊雄」
「あ……ぁ……洋、ちゃぁ……!」
「好きだったんだ、ずっと」

僕も、そっと愛しい彼の背中に腕をまわして、強く抱きしめる。
密着した僕と洋ちゃんの胸からは、激しい心臓の鼓動。

ああ──聴診器なんか当てなくたって、二人の心音がハッキリと耳に届いてしまうくらい。

「俺は……ずっとずっと、お前を愛していたんだ──」
「洋ちゃんっ……」

そして僕たちは、お互いを強く抱きしめ合いながら、甘く蕩けるような情交の続きを交わした──。



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