「あっ…」

「ん?」

「…ケータイ」

「ん?」


ケータイをぽちぽちとやっていたら、竜崎が釣れました。
のそのそと私のケータイ目掛けて歩み寄る竜崎は嬉しげな表情。
釣れた釣れた。


「おいしそうです…」

「でしょ」


わざとぷらぷら揺らすと、唇に人差し指をあてた竜崎の視線もゆらゆら動いた。

スイーツストラップ。

今のところ付いてるのは、ショートケーキとマカロン。これからもっと増やしていこうと意気込んでいるところだ。可愛いし、竜崎も釣れるし私にはとても都合がいい。



「あ、竜崎のケータイにもつけたら?どっちかあげる!」

そう言うと、竜崎の瞳が輝いてニタッと笑った。きっとこれがこの人の最高の笑顔。
可愛くてくすくすと笑う私にも気づかないくらい夢中になって見つめている。


「では、ショートケーキがいいです」

「はい。大事にしてね」


外して渡すと、竜崎はそれを大切そうにジーパンのポケットにしまった。


「あれ?付けないの?」

「どこにです?」

「ケータイ。それストラップだもん」

「…ケータイは必要なときしか使いません」

「?」

「必要なときにしか使わないものに付けたらもったいない気がします。それ以外のときにも眺めたいです」

「ふぅ、ん…」

「せっかくのマユさんからのプレゼントなので、これはこれで大切にします」


いつもの無表情でそう言われたのに、その言葉がめちゃくちゃ嬉しくて、胸にじーんときて、反応に困ってしまった。あっさりと言われたから余計に。

ついさっきポケットにしまったくせにもう取り出してストラップの紐をつまんで、ショートケーキを揺らして嬉しそうにしている。よほど気に入ったらしい。
なにか呟きながらご機嫌のまま去っていく竜崎の背中をぼんやり見つめた。


きっとスイーツだから釣れたんだけど、私があげた物だからもっと喜んでくれたのかな。より一層、大切にしたいって思ってくれたのかな――



「……もう…、」




どんっ。


「……!マユ、さん?」

白い背中に、ほとんどぶつかるくらいの勢いで抱き着いた。


「竜崎、好きっ、大好き!」


もう、たまらないくらい好き。とにかく、竜崎が大好きだ。誰にも渡さない!こんなに愛しい人。
竜崎がくれるふとした愛情が私の心をこんなにも幸せにしてくれる。

ぎゅうっと腕に力を入れる。
少し滲んだ涙が、白いシャツに染み込んだ。

しばらくして竜崎は私の腕を外して、くるりと向き合った。
竜崎の顔がずいっと近づく。


「マユさん」

「はい?」

「あなたは、私が好きなスイーツの中でも特別です」

「…え?スイーツ?」

「触れても崩れない、味わってもなくならない、あたたかい、何より甘美な私だけの大切なスイーツです」

「……ふふ、なんかくすぐったい」

「会えないときはこのショートケーキを見て、マユさんを想います」

「はい」



笑い合って、甘くて溶けそうなキスをした。





結局。

竜崎のスイーツ好きに私が釣られてたみたいだ。






Fin


スイーツストラップは竜崎が喜びそうだなぁと思ったのがキッカケ。
ちなみに私のストラップはサンジくんが2体☆もはやこだわりも無いです。





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