重なる想い出




―ねぇ、知ってる?

―夕顔はね………




「なんで朝顔じゃなくて夕顔なんですか?」

「ん〜?」


表で掃除をしていた少女が聞いてきたので、店の表に出る。

そこにはまだ咲いていない朝顔…ではなく夕顔の鉢植えが何個か並んでる。
今は昼の少し前の時間。
夕顔はまだ咲かない時間。


「ははっ」

「…何笑ってるんですか!」

「いや、俺も昔に同じ質問したなって」


―なんで朝顔じゃなくて夕顔なんだ?


そんな質問したなと、少女の言葉を聞いて思い出し笑ってしまった。
あの時、あの人は優しい目をして質問に答えてくれた。


―ねぇ、知ってる?


「なぁ、知ってるか?」

「何がです?」

「夕顔って本当はヨルガオっていうんだと」

「へぇ〜」

「ヨルガオっていうのは、花言葉が『夜』なんだってさ。だから暗い夜道に店まで来てくれた人達に『良い夜』をって意味で夕顔を置いてあるんだ。あと夜に咲く夕顔なら夕方頃に花がお客を咲きながら迎えて、見送る事が出来るからだとさ。他とはちょっと違う感じがして良いだろ?」

「そうなんですか〜。なんだか奥が深いですね!」

「まぁ、俺も人から聞いたんだけどな」


まだまだ咲かない夕顔を撫でる。


―僕も人から聞いたんだけどね


そう言ってたあの人も優しく夕顔を撫でていた。

また思い出して笑う。


「『だから朝顔よりも夕顔なんだ』」




昔と変わらない、ある夏の懐かしい思い出と今。





―――――――

始めまして あをつきといいます
56様からお誘いを頂きました!!

テーマは『夕顔』で書かせていただきました
アルバイト少女と若い店主と思い出の人 みたいな感じで
懐かしい思い出と重なる今……


56様ありがとうございました!!




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