状況整理



『……なぜそう言い切れる』

三蔵はよりいっそう睨みをきかせると、大して進んでもない箸から手を離した。

「じゃあその最悪の場合≠ェ起こっててもいいってこと?」
『な、そんなわけないでしょ!!』
「……」


食ってかかるかのように朱麗が返答する。葵はそこにいる全員の顔を改めてみる。何一つ変わらないみんなの顔。いつも見てきた顔。同じなのに、違う違和感。そこに苛立ちと、何故か羨ましさを感じていた。


「そもそも、普通に考えたらわかる事だけど?だって…ーーー」









changement













「つまり清蘭さんも僕達とはまた違う三蔵一行≠ニ西へ向かってるということですね?」
『…そうよ』
「でもそんなおとぎ話みたいなことってホントにあるんだなー」
「ま、俺としてはこんなカワイコちゃんが葵と交か…」

『卯月!!』


悟浄はいつもの調子で清蘭に手をかけようと近づいた瞬間、清蘭は先程まで暴れていたのとは違う名前を呼び出す。
呼び出されたは卯月≠ヘその手に持っている金棒を、近づいてきた悟浄の足元スレスレに威嚇の1発を振り下ろした。


「うげぇっ!?」
『近づかないで!!次は当てるから!!』
「す、すみませんでした……」
「とにかくこれからどうするのかを決めないと行けないんですが、どうしましょう…?」



いつなんどきでも一行の決定権を握るのは三蔵で、その三蔵に八戒が話をふった。もちろん返ってくる答えなど決まっていて、結局のところいつも通りに西へ向かうのだ。
先ほど清蘭と話した内容が本当だとしたら、葵もきっと西へ向かうと思ったからだ。なによりこんなところで野宿など続けてなどいられない。なぜなら食糧危機がすぐそこに来ているのだ。


「ん?」


八戒と三蔵は揃って悟空を見たが、当の本人は何もわかっていない様子だ。


「ということになったのですが、大丈夫ですか?」
『……それでいい。きっと兄さん達も西へ進んでるはずだもの』
「兄さん…?」


悟空はアタマをかしげ、清蘭に疑問を投げかける。清蘭は悟空をちらっと見ると、また目線を外すと疑問に答えた。


『玄奘三蔵法師は私の義理の兄よ』


義理の兄なんて言うものだから、これには流石に驚きを隠せない。悟空と悟浄ほどではないが、驚愕の事実に八戒も三蔵も驚いている様子だった。


「次元が違うと三蔵も変わるっつーことだな」
『顔と声はまるっきり一緒だけどね』
「てかよ、西に進むっつーことは清蘭ちゃんジープに乗っけるしかなぇよな」
「そういうことになりますね。ジープで半日ほど走った先に街が見えるはずです」

『…私、ジープには乗らない』


西へ進むことを再確認したところで清蘭がその会話をさえぎる。


『だって、見たところこのふたりと一緒に後部座席に乗らないといけないんでしょ?そんなのお断りだわ』
「なんでだ??」
「すげー、言われようだな俺ら」

『……』


同じ顔で、同じ声なのにどこか違って、他人でしかない。清蘭はそんな4人にはできるだけ近づきたくなかった。


『私の精霊に鹿がいるわ。私はその子に乗って追い、かけ…』


話の途中、清蘭は一瞬目の前が真っ暗になって視界が揺れる。どうやら能力の使いすぎらしく、軽い立ちのようなめまいを引き起こした。
それと同時に用心棒として出していた【卯月】がポンッと姿を消した。
それを見た八戒が清蘭を心配して手を差し伸べたが、彼女はその差し伸べられた手をを振り払った。


『触んないで!!私は大丈夫よ!!!』
「しかし…」
「おいおい、変に意固地起こすなよ…。お前サン葵より意地っ張りか?」

『知らないわよ、そんなの!』


明らかに無理してるのが見て取れるのに、近付いてくるモノ片っ端からたたき落とす勢いで食ってかかる。そんな様子を見ていた三蔵は舌打ちをしたのち、清蘭を呼んだ。


「おい」
『な、なによ』


義理の兄と同じ顔、声で呼ばれると流石に悟浄達に言うように強く言い返せない清蘭だった。


「お前はジープの助手席に乗れ。俺が後ろに乗る」
『……え』
「それも嫌ならその精霊とやらを呼び出してついてくるなり、野垂れ死にするなり勝手にしろ」
『……わかったわ。助手席に乗せてもらうわ』


清蘭は少し考えた末に、そう判断した。自分の能力の限界などわかっている。いつもと違う環境で、神経をすり減らしながら精霊を使い続けるなんて自殺行為に近い。元のみんなに会うにはこんなところに一人置いていかれるわけにはいかないのだ。



「めずらしく三蔵様が優しい」
「三蔵だってたまには優しいんだぜ!!たまには!」
「…オメェら死にてぇのか」
「「スンマセーーン」」

『………』


悟浄が三蔵の優しさに食いつくようにつつき、それをフォローしてるつもりで悟空がまたつつく。
そんな茶番のような日常風景がなぜだか愛おしくて、切なく感じる。


「ではそういうことで。出発はあすの朝早くということでいいですね?」


八戒の提案に誰も反論することはなく、朝1出発のため就寝となった。清蘭は普段は葵が使用しているという毛布を受け取り、一行から離れたところに腰をおろした。


「キュー…」


そんな彼女を見ていたジープは八戒の肩から飛んでくると、まるで心配しているような顔で清蘭を見上げていた。
そんな清蘭もジープを受け入れると、優しく撫でる。
このジープも私がいつもなでるジープじゃない。そう思うと、この世界すべてが怖くなる。
まるでこの世界に1人 取り残されたように感じるのだった。















…みんなに 会いたい





















***
今回は清蘭さんサイドが多かったですね!
なんか切り替えるところがなくて、清蘭さんの心情とかも出しときたかったし
まぁこれはこれでー!って感じです←

なので次回の出発、街につくらへんは葵さんサイドで行きたいなー。と!


最後の会いたいっていうのがグレーなのは二人分の気持ちです( ˇωˇ )
ちなみにたぶん葵さんは性格上口は荒いけど、とりあえず様子見でおとなしくしてます!口は荒いけど!!(笑)

冒頭の
「そもそも、普通に考えたらわかる事だけど?だって…ーーー」
に続くとしたら

「その清蘭ってやつの代わりに私がここに来たって言うことだろ?だったら私の代わりに清蘭が向こうに行ってるんだろ。まぁさすがに、三蔵一行が別次元にも存在することには驚いているがな」


みたいな感じかなぁ??
悟空なんて頭の中の外も「????」って感じだろうなー。
そこをやはり八戒が
じゃあこういう感じでしょうか?ってまとめてくれるんですねー!

ちなみに絵にするとこんな感じですね。



これ書いてる黒音と咲夜はわかってるけど
読んでくれてる方が意味わかんねーよってなったら意味もないと思って
咲夜に絵を頼んでみました( ˇωˇ )


今回はこんな感じで終わりです!
では!!


読んでくれてありがとうございました。
黒音 /咲夜


2016.05.15

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