パズルピース




時空の狭間があるって、一体どういうこと…?』


聞いてきたという噂がまた普通にはありえなさそうなことで、清蘭はすぐにピンとこないのかそのまま聞き返した。


「まだそのことについては、詳しい情報にたどり着けてないんです…」
「でも昨日の婆さん時が満ちた時、左右反転の世界への道を示すとか言ってたよな?」
「なー、だからオレ腹減ったよ〜…」



弱々しく訴える悟空はまたすこし離れて歩いていた。清蘭はその変わらない悟空を見て少し笑うと、『わたしも、少し休憩したいかも』とまるで三蔵に話すかのように悟空に同意を示す。
三蔵はめんどくさそうにため息を吐いたが、『あそこのお店今日だけパフェのアイス1個オマケだって♪』と付け足されると「仕方ねえ、入るぞ」と針路を変えるのだった。その態度の変わり方に悟浄と八戒は呆れたような、困ったような顔を見合わせるのだった。


「オマエの胃袋はホント燃費悪いよな」
「まだ食えるぞ?」
「そんなこと、聞いてねぇよ」



間食だというのに悟空は朝と同じ、もしかしたらそれより多いかもしれない量をぺろっと平らげた。


『それでその、お婆さんの言ってたことってどういうことなのかなぁ…』
「左右反転の世界ってのが俺らの世界と、清蘭ちゃんの世界ってことじゃねぇのか?」
「だとしたら時が満ちた時、とはある一定の時間とかでしょうか…?」
「別世界の俺かー。強えかな、戦ってみてぇー!」



そのヒントを辿ってみるが、他に手がかりがあるわけでもなく何かを試すことも出来ない。それならいっそ…ーー


『時空の狭間があるってわかってるなら、それを伝えてく人がいたら楽なのにね』

「ここにいるわよ?」
『……え?』
「私朝ごはんまだなの。奢ってくれたらいろいろ教えてあげてもいいわ♥」


不敵な笑みを浮かべる彼女は一体何者…ーーー







changement








「そういえばあの人が気になること言ってた」


葵は宿に帰る途中に買った昼食を頬張り、思い出したかのように話を始めた。


『あの人ってわたし達とすれ違いで出てった女の人?』
「ん。…よく分かんないけど、時空と空間の女神様の社って言ってた」
『…時空と空間の女神』
『ねぇ、それって!』
『でも姉貴、あれっておとぎ話だろ?ホントに実在すんのかね?』
「おとぎ話?実在?何の話だ?」


朱麗や他の4人が驚き、顔を合わせる中、葵はひとり話について行くことが出来ずにいた。


『太陰様だろ?葵知らねぇのか?俺でも知ってるぜ?』
「たいいん、さま…?誰それ」
『だーかーらー…えっと、なんだっけ?』


悟空がドヤ顔で自慢しようと葵に話そうとするが、肝心なところが抜け落ちているらしい。他のみんなはその様子を呆れた顔で見守り、すぐに八戒が口を開く。


『葵さんの世界には多分、十二天将の伝承が自体が無いのでしょう』
「じゅうにてんしょう…?」


そう言われたところでピンとくるわけでもなく、さらに頭の上にはてなマークが増えるばかりだった。


神妖十二天将って言うのはこの桃源郷を創造し、そして三蔵法師が継承していく開眼経文に力を与えたとされる12人の妖怪の神様のことよ』
『先ほど悟空の言っていた太陰様というお方は、その神妖十二天将のお1人なんですよ』
「…悟空がそんなこと知ってるなんて、すごい……」
『って、そこかよ…』


壮大なスケールの話に驚くのかと思えば、悟空がそんなことを知っていたということに驚いたらしい葵に、悟浄が思わずツッコミを入れてしまう。
当の悟空本人は『あ、当たり前だろ!空が青いの当たり前みたいな感じじゃねぇか!』というので、葵はすかさず「じゃあなんで空は青いのか知ってるか?」と聞いた。
空が青いのは当たり前で知っているが、それが何故なのかはやはり知らなかった。
それと同じく、神妖十二天将があって、12人の妖怪の神様がいることをわかっても、その内容はやはりよくわかっていないのだ。頭を使うことに関しては、どこまで行っても悟空は悟空なことに葵は少し安心した。


「悟空がココでも変わらず悟空で良かった」
『ど、どーゆーことだよ!』


悟空はすこしバカにされたような感じがして、葵に食いかかる。だが、葵はまた少しくすっと笑うのだった。


「そのまんまの意味だけど?あぁ、ちなみに空が青く見えるのはね、青い光の方が波長が短いから。波長が短いと目に見える所に届くまでに、見えないチリとかに沢山ぶつかってて、青の光がそこかしこに散らばってるから。だからほかの光より良く見えるわけ。ちなみに夕焼けが赤く見えるのは…」
『も、もういい!』
「そうか?」
『葵さんは、博識なんですね』


ついでだから、と説明していると、悟空が慌てて割り込むようにして切り上げさせてきた。
小さい頃から色んなことをやらされていたので、葵は特にそんなことを知っているのがすごいとは思っていなかった。
そんなことでも褒められたことへの驚きと、すこしの嬉しさを感じ「そうでもない、と思う」とどこか恥ずかしそうに返した。


『ハイハイ、話が脱線してるわよ?戻しても?』
「あ、ハイ」


とてつもなく話が脱線したところで朱麗が手をパンパンと叩き、切り上げると話を戻す。


『それで、太陰様って言うのは時空と時間を司り無天経文を作り上げたとされている黒き女神、って言われてるの』
「黒き女神…。あの人は女神っていうには程遠い感じだな。不摂生もいいとこだったし」
『巫女服みたいに見えたし、あの人自体は女神様ではないんだと私は思うけどね』
『じゃー、まっ、とりあえずあのお姉さまを探すとすっかね』


ちょうど吸い終わりのタバコを、灰皿に押し付けながら悟浄が立ち上がる。
まだいろんな疑問点は残るが、一番の打開策として乃亜を探すことになった。
葵自身もだんだんと打ち解けてきたのか、時々柔らかい表情を見せる。ふと何かを思い出したように三蔵の方を見れば、ちょうど三蔵と目が合ってしまった。


「…あ、」
『行くぞ、お前ら』
「……」


何を話そうと思ったわけでもないが、話しかけようとした時を見計らうように三蔵はお前らに呼び掛けた。

自分を通して心配しているのは、清蘭のこと。それが手に取るように分かった。
その清蘭の事を誰よりも大事にしてきたのは、他でもないココにいる三蔵だということは聞かなくても分かる。
そんな当たり前のことよりも、三蔵の発したお前らには自分が含まれていないということに、葵は出来れば気付きたくなかったと重めのため息を吐き出し、部屋を後にした。


顔色をうかがって 過ごすのは 昔から得意だったから


ダイジョウブ








changement








「12人の妖怪の神、か。まァた、壮大な話だな」
『…私たちの世界では、それが当たり前だったけどね』


清蘭はどこか寂しそうな顔をした。今まで当たり前だったことが、全否定されるここ3日。多少は慣れ親しんだものの、ところどころに自分が一緒に過ごしてきた仲間じゃないことを目の当たりにするのだった。


『でも、不思議ね。信じている神様が違うだけで同じ世界のようで、違う世界なんだもん。なにより、朱麗みたいな6人目もいないし』


そう言いながら清蘭は改めて4人をを見渡す。自分と入れ替えでいなくなってしまったと自分とが違うように、自分のいた世界とこの世界とはまったくもって別世界なんだということ。先程のことに上乗せするようにのしかかる気がした。


「そういうば先ほどから朱麗という方の名前を耳にしますが、その方も別世界僕達と一緒に旅を…?」
『えぇ。私のお姉さんみたいな人、かな。あ、でも悟浄の義理のお姉さんで、見た目とは裏腹に結構面倒見がいいの』


そのまさかの事実に特に驚たのは悟浄本人と、悟空だった。悟空は
「え!!?悟浄に姉ちゃんがいるのか!?」と錯乱状態。八戒に「向こうの世界の悟浄に、ですよ」と言われ落ち着きを取り戻す。
そんな中、悟浄は少し複雑そうな表情を浮かべていた。


「その…、俺の姉貴っつーのは、あれか?もしかして俺と同じ…」


今まで自分が紅い髪、紅い眼で苦労してきたからなのか、顔を見たことも、会ったことも、触れたこともない朱麗を心配するような顔をした。


『……朱麗は、禁忌の子じゃないよ』
「そう、か…」



悟浄はその言葉を聞くと、まるで安心したような顔を見せた。そんな悟浄を見ながら清蘭はどこか違和感を感じる。

この世界の悟浄は自分の恋人ではないことなんて、最初っからわかってる。なのに良くも悪くも恋人と同じ顔だからなのか、例えそれが大好きな朱麗だったとしても、他の女の人という事には代わりがなくて、自分ではなく他の女の人を心配する悟浄のことが少し嫌だと、知らぬうちに頭の隅で考えてしまっていたからだ。


『それに、今は八戒と恋人だし』

「え……?」


まるでそんなことにどこか八つ当たりするかように言った言葉を聞き、今度は八戒が固まった。
八戒の脳裏に蘇るのは、もちろん最愛の花喃の顔…。その後すぐに少し焦るような、心配するような顔した。
一体向こうの僕は、アナタを愛せているだろうか。


「向こうの僕は…幸せそうですか…?」
『ええ、とっても幸せそうに笑ってるよ』


どこか寂しそうで、それでいて安心したような八戒は、「そうですか…」
とポツリとつぶやいた。



























***
乗り越えられたことへの安心や寂しさ、それに少しの羨ましさな八戒さんでシメです!!!!!!!!

どうも。更新が怠ってたとか、まぁうん。そうなんですけども、個人的に忙しかったり忙しくなかったりでした(おい)


今回の話はえーっと時間軸がだいたい揃った感じですかね?いや、でも葵さんたちの方がお昼なので、少し早いかな。

とりあえず清蘭さんたちも乃亜さんに出会えました。何者?のところの彼女は乃亜さんです。不摂生な巫女様です←

ここからやっと帰れる方法を聞き出す?問いただす?感じですね。
【時が満ちた時、左右反転の世界への道を示す】の意味にもこうご期待!って感じで。
タイトルは、だんだんとピースが集まりつつある感じをイメージしました。まだまだピースは足りないんですけどね。(笑)


後半は清蘭さんが
ここは自分の世界じゃないんだ
って改めて思うシーンが重なってましたねー。
二人とも早く帰れますように!!!←




読んでくれてありがとうございました。
黒音/咲夜

2016.07.14

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