変わらないモノ




「んー…」

陽が昇りきり、時刻は既に10時を越したとこだろうか…。巫女をやっているという乃亜が自室からやっと出てきた。


「巫女ってもっと規則正しいのかと思った」
「え…あぁ、もうはっきり言って、ここに訪ねてくる人なんていないからね」


乃亜は自分以外がこの社にいることを思い出した。寝起きらしい彼女は、少し髪に寝癖をつけており昨日出会った時の神々しい容姿とはかけ離れていた。


「夜ふかしに飲酒、それに不摂生…。よくこんなので生きていけるな……」
「あら、人間意外とやっていけるものよ?」
「…はぁ。朝ごはんあるけど、食べる?」


呆れた顔でため息をひとつつくと、とっくの前に準備を済ませた朝ごはんを指さした。


「すごい…!これ全部貴女が?」
「葵、…私は葵って言うんだ」
「…。そう、いい名前だわ」
「な、撫でるなよ」


貴女とこのあとも呼ばせるのはなんだか忍びないので、葵は自分の名前を名乗った。そこには昨日の警戒心はなく、乃亜はまたふわりと頭をなでてやる。すると葵はすこし恥ずかしそうにその手をはらった。


「フフッ、早く食べさせてちょうだい?お腹ぺこぺこだわ!」
「わかった。とりあえずそのあいだに顔洗って髪直してきて」
「……人は見かけによらず、ね」
「何か言ったか?」
「なんでもないわよ〜」


社の奥、はなれにある建物には台所と居間、2階には寝室がある。というのは形式上であり、この台所を使ってる形跡はあまりなくゴミ箱にはカラになったカップラーメンが溢れていた。

葵は朝起きてすぐに食材の確認をしたが、積まれたカップラーメンを見ればわかるように他には何もなく、仕方なく今もっている所持金で買いものをしたということらしい。
乃亜はその姿を見て、男の子らしいカッコをしている葵だが家庭的なことに驚いているようだった。


もう既に朝ごはんと昼ごはんの時間ではあるが、乃亜は葵の作ってくれた朝食に手を合わせると「いただきます」と言い、食べ始めた。

「事情はわかったわ。それで、帰らなくていいの?」


食べている間に、乃亜は葵に昨日何があったのかを聞いた。すべてを理解したところで乃亜は葵に話をふった。
だがその言葉を聞いた葵は、すぐに乃亜から目をそらした。


「この世界に、帰る場所なんて…」
「……そうかしら?」


葵は意味がわからず、周りを見渡したが先ほどと変わった様子はなく首を傾げる。
すると乃亜が「外、よ」ともぐもぐと口を動かしながら言った。葵の作った朝食が気に入ったのか、食べる手は止めようとしない…。


「……」
「葵ちゃんのこと、迎えに来たんじゃないかしら?」
「なんで、そんな…」


換気用についた小さな窓から外を除くと、そこにいたのは朱麗と悟浄だった。葵がそのふたりを確認し、動揺していると「ごちそうさま、美味しかったわ」と席を立ち、何を考えたのか乃亜は窓から身を乗り出した。


「そこのおふたりさん、そっちから入れるわよ」
「!!?」
「良い?葵ちゃんの本当の仲間でなくても、今の葵ちゃんにとって1番大事なピースよ。一人でも欠けたら完成しないパズルなの」
「パズル…?」
「そう。昨日私言ったでしょ?「きっとすぐ帰れるわ」って。ココ、時間と空間の女神様の社のだから、ココに導かれた葵ちゃんはきっと帰れるわ!」
「時空と空間の、女神……」
「じゃ、私はちょっと出かけるからあとはごゆっくり〜」
「え、ちょ…」


なんだかいいことを言い残すと、乃亜は逃げるかのようにして去っていった。それと入れ替えで入ってきのは朱麗だった。


「…なに」
『なんで帰ってこなかったの』
「別に…、帰る必要なんかないだろ」
『……』


目を合わすことなく答えた葵に、朱麗はずいっと距離を詰めた。


パンッッ…


「…は?」
『ちょ、姉貴!!?急にビンタって…』
『うるさい、悟浄は黙ってて』


何をするかと思えば朱麗は何一つ迷うことなく、葵の頬を平手打ちしたのだった。それには義弟の悟浄と言えど、驚いたようで止めようと半歩前に出たが、朱麗にあっさり釘を打たれてしまう。


『馬鹿じゃないの!?いつまでそうやって意地はってるつもり?確かににここはアンタの三蔵一行がいる場所じゃないし、ましてや世界が違うのかもしれない。
でもね、少しでも接点があったら心配ぐらいするの。アンタ、そんなこともわかんないの!!??』


その言葉を聞いて葵はなぜ叩かれたのかを理解した。その理由を理解した上で「そんなの…わかるわけないだろ」とどこか諦めたように言った。


どんなに頑張っても
褒めてもられるのは自分じゃない。

どんなに頑張っても
見てもらえるのは自分じゃない。

どんなに頑張っても
触れてもらえるのは、笑いかけてもらえるのは


いつだって自分じゃない。


もう、うんざりだ。
他人に期待するのも、自分に期待するのも。



「……だから強くなって、強がって、それで私は生きてるんだ。アンタ達の大事なお姫様とは違う…」


『…だからなんだって言うの?そんなの……ただの甘えじゃない!言い訳して、傷つくのを恐れてるだけじゃない!』
「これ以上もう何かを手放すのは嫌なんだよ!!!!失ってからじゃ、遅いんだ……」
『……』
「なのに、その大事さに気付くのはいつも手放してからなんだ…」


その言葉を聞いた朱麗は葵を包み込むように抱きしめると「ホント、馬鹿ね」と優しく言った。

いつからか他人が怖くなった。
信じた後で裏切られるのが
消耗品のように捨てられるのが

寂しかった
怖かった


『いい?ここにいる間は私達を頼りなさい。信じることが出来なくても、頼るの。何でもひとりで考えたらダメよ?』
「…信じなくていいのか?」
『もちろん信じてくれたら嬉しいわ。でも他人を信じるなんてすぐ出来ることでもないでしょ?』


だんだんと葵のことを理解してきたのか、朱麗はウィンクをしてそう言った。葵はといえば少し困った顔をした気がしたが、朱麗は気にすることなくその手を引き、外へと連れ出す。


『さ、昨日聞いた噂をたどるわよ〜!』
「噂…?」
『ウソかホントかわかんねぇけど、調べる価値はあるだろうよ』


話が終わるまで時間を持て余していた悟浄は、短くなったタバコを消すと肺に残った煙をフーッと吐き出しそう言った。葵はどこかめんどくさそうで、それでいてなんだかんだ面倒見のいい悟浄を見ながら「やっぱ根本は変わらないんだなぁ」とぼんやり考えていた。








changement










「なぁ、さんぞーーーー!!ハラヘッタよーーーー」


最初こそ悟空は先頭を歩いていたものの、時間が経つにつれ後退してゆき、最終的には最後尾を歩いていた。とは言っても宿を出発してからこれから2時間がたとうというところだ…。


「黙って歩け」
「お前、ほんと燃費わりぃーな」
「悟空、頑張ってください」



いつものことなので、清蘭を除くほか3人はさして心配することなく歩みを止めることは無い。その様子を気にしながら歩く清蘭の表情は一番はじめに比べ、とても優しく見える。


『そう言えば出かける前はバタバタしててあまり良く聞いてなかったんだけど、帰れるかもしれない方法があるって一体どういうことなの…?』
「昨日夕飯買いに行った時にばあちゃんに聞いたんだ!」
「この街のどこかに時空の狭間というものがあるらしんです」


















***
ででん!
微妙に短い気がするが、ここで説明を詳しくすると長引くので切り上げです!

五分の四くらい?はもうなんか葵さんですね!!!
そして乃亜さんはどこかに逃げたのかでかけたのか( ˇωˇ )
巫女さんというイメージだと清楚でしっかりしててって感じですけど、今回の乃亜さんのポイントとしては【巫女、黒髪、黒い瞳、お姉さま、結構適当】な感じです!
表舞台(仕事中)に出ればきらびやかで、引っ込むとすごく差がある感じのイメージです。

ちなみに葵さんは過去に色々やらされて(勉強とか武術とかその他もろもろ)育ったので、割とやれば何でもできる感じをイメージしてます!人の世話をやくのは嫌いではないタイプですね。むしろ好きなのかも?


次話で時空の狭間とかを掘り下げましょう!!!!(提案)←







読んでくれてありがとうございました。

黒音/咲夜


2016.06.21

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