確信(凍夜side)


いつだっただろうか…
ツナと菜也が、それぞれボンゴレと奴良組の道を共に歩むことを決めたのは。
ツナはボンゴレ10代目を、菜也は藤組2代目を…そしてオレは奴良組4代目を継いでいたんだ。ボンゴレと奴良組はたしかに同盟だけれど、正確に言えば、両者を繋ぎ合わせているのが藤組だった。

イタリア最強のマフィア…
そして、妖怪の総大将であるぬらりひょんを筆頭に作られた、奴良組。
オレ達は、確かに最強だったはずなんだ。
なのに、あの日…


"「10代目が射殺された…
…それと、藤組が全員、行方不明になっている…」"


電話越しに聴こえた隼人の声は震えていて…
慌てて京都に駆けつけようと思ったその時、奴良組にも奇襲がきた。

あの日、全てが終わりへと向かっていったんだ…。
























ビーッ ビーッ ビーッ


「リングの反応が出たぞ!」

「ミルフィオーレか!? あいつら…チョイスまでは攻撃してこないって言ってたくせに!」


ボンゴレアジト内に響き渡る大音量の警報音。慌てて皆が集まってるであろう情報室へと向かえば、10年前のツナ達が騒いでいた。
画面に映るのは、リングの反応。
警報音はこれのせいだな……、アレ?


「ちょっと待て、ここって…花開院家跡じゃねぇか。」

「け、花開院家…跡?」

「あぁ…昔から何かと縁のある陰陽師の家だ。家つっても屋敷なんだが…何でここにリング反応が…。
…まさかっ!」

「えっ!? ちょ、凍夜さん!?」


後ろでツナ達がオレを呼び止めているが、そんなの知ったこっちゃない。

もしかしたら…アイツかもしれねぇ。
藤組の生き残りの、菜也かもしれねぇんだ!

アジト内を走り、出口を抜ける。
そして、このまま花開院家跡へと使おうとした時…オレの目の前に懐かしい面々が現れた。


「凍夜よ…妾は花開院家跡に行く。
懐かしい気配を感じた。」

「…やっぱり、菜也、なのか…?」

「恐らくな。お主はここにおれ。
今外には奴等が出歩いておる…
菜也を必ずここへ導く。だからお主はここに隠れておれ。」

「…悪い、羽衣狐。」


羽衣狐や狂骨など、顔馴染みの京妖怪がきた。
でも以前のような強い畏れは感じられない…もっと大所帯だったのに、今では数えきれる程の者しかいない。そうだ、被害はこんなにも大きいんだ。

恐らく、京妖怪に再会するのは厳しいだろう。
できたとしたら、それは正に奇跡だ。

言われた通りに茂みに隠れ、菜也であろうリングの持ち主がこちらに来るのを待つ。突如動かなくなったオレに疑問を抱いたのか…耳につけてある通信機からツナ達の声が聞こえてきた。


"「凍夜さん! 何かあったんですか!?」"

「ツナか? リングの反応があったところに行こうと思ったんだが…知り合いに会ってな。その人が菜也を連れてきてくれるって言うから、念のためオレここで待ってるよ。」

"「やっぱり、
あのリング反応…奴良さんなんだ…」"

「その可能性が高い。
お前らは一応中で待っておいてくれ。もしオレの身に何かあった時は…代わりに頼む。」


通信機にはGPSもつけられているから、オレの居場所も分かる。それはリングにも言えたことで…ボンゴレリングなど、不思議な力を秘めたリングから居場所を突き止めることができる。
つまり、リングの持ち主がいつ頃こっちの方に来るのかを、情報室にいる皆は知っているわけでー


"「凍夜さん!
東方向、500メートル先からリング反応がきています!」"

「東だな!サンキュー、ジャンニーニ。
…あ、そうそう。もし菜也じゃなくて敵だったら、相手のリングを奪って排除してくっから。」


リングの反応を取れても、その持ち主が誰かは分からない。それに、リングといっても色んな種類があるわけだから、ボンゴレリングとも断定できない。
そのため、
敵か味方は実際に見てみないと分からないし…


"「…あ!新しいリング反応をキャッチしました!」"

「場所は何処だ?」

"「場所は…、
凍夜さん! そのまま真っ直ぐ行って下さい!」"

「真っ直ぐ…?
…あぁ、成る程な…待ち伏せしてんのか。」


正確に分かるまでは、予測して行動しなければならない。
そして歩いていると、男女の声が聞こえてきた。気配を消して影から見てみれば、予想通りの人物を発見。


「…見ぃつけた。
呪いの吹雪 "雪あらし"」


それは敵と、やっぱり10年前の菜也。
雪あらしで視界が奪われている隙に、敵を倒した。


『凍夜兄ちゃん…!
ぅわあっ!??』

「よっと…
アジトの出入口がバレるわけにいかねぇからな…悪ぃけど運ばせて貰うぜ。」


菜也を抱えて、アジトへと向かう。今まで緊張してたのか…オレを見た途端、菜也は泣き出した。
まだ未来へは来たばかりだ…今の状勢をそう詳しくは聞いていないはず。それは即ち、オレが菜也に話さなくちゃいけないということだ。


「……未来を変えるためだ、仕方がねぇ。」


憂鬱な気持ちに気付かないふりをして…オレはアジトへと戻った。
そしてアジトに着けば、皆が菜也を出迎えた。ここに来るまでの間…菜也はずっと泣きじゃくっていたわけだが、10年前のツナ達を見て戸惑っていた。

だが、それも数秒だけのこと。



『…皆、いる……何で…』

「えと、話したら長くなるんだけど…
ここは10年後の世界なんだ。オレ達は皆この時代に飛ばされて…」

『…もしかして…また、ボンゴレなの…?』

「え?」


下を向いて、強く握り拳をつくっている後ろ姿に「マズイ」と思った。
でもそれは手遅れだったようでー


『アンタのせいで…!
アンタのせいで皆死んじゃったじゃないっ!!
お母さんもお父さんもっ、陽炎も、藤組の皆…
皆っ…ボンゴレと関わったから死んじゃったじゃん!』

「…っ」

『……返してよ…
お母さんとお父さんを、皆を返してよっ!!
マフィア関係に私達を巻き込まないでよっ!!』


そこまで感情を露にしない菜也が…
泣きながら、悲鳴のような声でツナ達に叫ぶ。
勿論、そんな事を捲し立てられて動じないツナじゃない。いつもなら隼人も「10代目になんてことを…」ってくどくど言いそうだが…この剣幕じゃ言えないよな。


『アンタなんか…!』

「はいストーップ」

『…っ』


呪いの吹雪"雪山殺し"で、電池が切れたように倒れる菜也を抱き止める。その様子に心配するツナ達だが…うん、やっぱりなぁ。
ツナは顔真っ青だ。こういうの、素直に受け取っちゃうタイプだもんなぁ。


「あの…オレ……」

「あ〜…ごめんなツナ。菜也も一気に色んな事があって困惑してるんだよ。ムカつくかもしんねぇけど許してやってくれ。オレからもちゃんと説明しとくからさ。だからこいつの言ったこと…真に受けなくていいからな?」


はい…と小さく返事はしたが、もう真に受けちゃってるよなぁ。どうしよう。
取り敢えず、今は菜也を運んで寝かせよう。


「じゃあ、オレがこいつ見とくからさ。起きたら知らせに行くわ。そん時に、オレの情報も教えるよ。」

「情報…?」

「あぁ。
敵は白蘭だけじゃねーんだぜって話。
そんじゃまたな。」


ごくりと唾を呑む音を背に聞きながら、向かう場所はオレがここで借りてる部屋。後で菜也の部屋も用意してもらわなきゃいけねぇなと思いつつも…
頭の中を占めるのは、敵の情報。


「…行方不明って言われてたが…まさか花開院家跡に居たとはな。」

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