愛しています(母side)


分かっていた…
いつかこんな未来が来るんだろうって。
だって、うろ覚えだけど、『リボーン』のマンガを私はよく読んでいたのだから。

でもまさか…ミルフィオーレとあいつらが組むとは思わなかった。おかげで花開院も奴良組も壊滅だ。


「でも…菜也と沢田が、きっと何とかしてくれるよ。」

「…そうですね。」


先日、外で見張りをしていた奴等の会話がたまたま聞こえてきたんだ。10年前のボンゴレファミリーが集まりつつある、と。
てことは、だ。
きっと菜也も来る。

そしてさっき、それは現実となった。

目の前の光景に、涙を流していることにさえ気付いていない。それほどショックを受けている様子だ。辛いけど、これを乗り越えなければ未来を変えられないんだ。


「おいおい…モルモットの脱走劇か〜?」

「…鯉菜様」

「…くっ…陽炎、アンタまだ走れる…?」

「走れますが…鯉菜様は…」


立ち塞がるのは、憎たらしい科学者。こんなところで足止めされるわけにはいかないのに。


「君達のおかげで大変面白いものができているよ。まだ未完成品だが…せっかくだから紹介しよう。」

「ぁあぁっ…」

「あれは…っ!」

「…嘘……たつ、や…?」


目の前に現れたのは、身体が何倍にもある物体。
声も顔も…どことなく、達也の名残がある。
でも、手や足も人間のそれとは違う…
尾だってなかったし…


「君の旦那がちょうど人間だと知ってねぇ。
せっかくだから被験者1号は彼にしてみたんだよ。
どうだい? 格好よくなっただろう?」

「グルル…ガアァアァ!!!」

「…達也…」

「鯉菜様…!
ここはオレに任せて…」

『…嘘だ…アレがお父さんなんて…
嘘だ…嘘だあぁぁっ!!』

「菜也様! 落ち着いてくださ…
鯉菜様、菜也様を連れてここは逃げて下さい!」


目の前にいるコレが…達也だなんて信じられない。
信じたくもない。でも…今、奴良組の妖怪を1人ずつ葬ってるのは、コイツなんだ。


「ガァァッ!」

「ぐあっ!?」

「! おっと…これはこれは…
敵味方見境なく攻撃しているな…失敗作ということか。巻き込まれぬうちに退散しようかな。」

「…てめぇ…」

「鯉菜様! 早くここは退散を…」

「…陽炎、菜也を頼むわ。」

「はっ!?」

『なっ…お母さんっ!!』


味方が殺られたのを見て、逃げた私達を追いかけてきた奴等が慌てて退散。達也で人体実験をしてた科学者も、去っていった。
ここに残るのは…
妖怪と敵の死体、私達生き残り、それと、化け物に変わり果ててしまった達也だ。


「さっき畏れを吸い取られたばっかでさー…
もう私には菜也を逃がせられるだけの力も残ってないんだわ。
それに、
暴れる旦那を世話するのは…妻の務めでしょ?」

「…っ、分かりました…!
必ずや、菜也様をボンゴレのところへ!!」

『いやだ…いやだよお母さんっ!!』

「いけません、菜也様!」


陽炎の腕の中で暴れる菜也。
あぁ…大事な娘を、こんな辛い目に合わすなんて。
私は母親失格かもしれない…
それでも、生きてほしい。
両親が目の前で死ぬところなんて、この子には見せたくない。

それにー、
上手く行けばまた会えるのだから。



「陽炎、皆…後は頼んだわよ。
それと、菜也…またいつの日か会いましょう。
それまでは元気にやってるのよ?」



最後に菜也の頭をポンと撫でたところで、陽炎は去っていった。
他の生き残りの皆もそれに続く。


「…さてと、
これで舞台に立つのは私と達也、アンタだけだね。誰もいないんだ…鬱陶しいくらいに、激しくイチャつこうじゃないの!」


目元を拭いて、刀を握る。
畏れもほとんど残っていないけど…
数倍にも大きくなった達也へと、駆け出した。

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