驚きの日


ピッ!!

「始めっ!!」



体育館に響き渡る試合開始の笛。
そしてー


「んぐあっ!!」
「ツナっ!?」
「何やってんだ…!?」


バレーボールが見事に溝うちに入った沢田。
…凄い…そんな所に命中させるなんて、逆に器用過ぎるわ。
そのままズターンと床に倒れる沢田に、周りの者も口をポカンと開けている。

『期待していただけに…皆ビックリしてるね。』
「た、たまたまだよ! ほら、応援しよ!!」

顔を真っ赤にしながら起き上がる沢田。
その姿を見ながら溜め息を吐く私に、京子ちゃんはニコッと笑顔でフォローを入れる。
そして、
ピッという笛の音と共に、またもやボールが沢田の元へゆくが…



ドスッ!
「おわっ」

スカッ
「うわぁっ」

ズテーン
「痛てぇっ」


ボールを溝内でキャッチし、空振りし、転けてボールを落としまくる沢田綱吉…
その姿に、観客から不穏な声が聞こえてくる。

「ヒドイ…」
「…酷すぎる…」
「…持田先輩を倒したヤツと本当に同一人物か?」

期待していた声から不信な声へ。
あの時の沢田はどこに行ったんだ…
とでも言うかのように、観客はどよめいている。

一方、試合をやっているバレー部員では…

「ツナ! お前やる気あんのかよ!!」
「ちゃんとやれよ!!」
「オレ達は真面目にやってんだよ!!」
「お前やっぱりダメツナだな!!」

沢田の連続したミスに激おこである。
…まぁ、無理もない。普通はミスしないようなところでミスしまくっているのだから。

そんなこんなで、
前半の第1セットが終わったのだがー

『…何話してるんだろう。喧嘩かな。』
「喧嘩には見えないけど…どうかしたのかな。」

押され気味な我がクラスのバレー部員。
沢田のミスでイライラMAXな彼らに、勇敢にも何かを話し掛けている沢田綱吉。
コートから離れているため、何の話をしているのかは全く聞こえない…。
だが、しばらくしてー

「どうしたんだ?」
「また逃げるんじゃねぇの?」
「やっぱダメツナだな。」

足を引き摺り、ヒョコヒョコと沢田は体育館を去っていく。その様子に、今度は落胆の声で響き渡る館内。そして隣からは不安気な顔をした京子ちゃんの声がもれる。

「ツナ君…」
『…まぁ、そう気落ちしないでよ。持田先輩の時のはまぐれだっただけで、今日のがむしろ通常通りでしょ。』
「…え? 菜也ちゃん心配じゃないの? ツナ君、多分怪我してるんだよ?」
『え? あ、そっち?』
「え?」
『いや、何でもない。沢田なら大丈夫っしょ。きっと保健室に行って直ぐに戻るよ。』
「そうかな…」
『うん、(多分サボってお家の方に)戻る戻る。』

…嘘は言ってないぞ。
戻って来るのは体育館へではない、きっとお家へ戻るのだ。足を引き摺り、負傷したように見せていたが…多分アレも演技だろう。

『怪我するところなかったしね。』
「何か言った?」
『ううん。ただ、後半戦に間に合えばいいなって呟いただけ!』
「そうだね!! 無事だといいね!!」

ごめんね、京子ちゃん。
私本当は『間に合えばいい』どころか『早く試合終わんねーかな』って思ってる。

そして、
心の内で謝ったと同時に、ポケットで振動するスマホ…

『…?』

誰からだろうと思いながらも画面を付ければ、メールが1件。
相手は…





From 花の嬢王
Sub 試合どうだった?
ーーーーーーーーーーーー
Contet なし





『………………件名で済ますなよっっ!!!』
「わっ!? びっくりした〜、急にどうしたの?」
『何でもないよ、うふふ〜』
「そっか! なら良かった♪」

ニコッと笑って何事もなかったようにする私に、天然な京子ちゃんはまんまと騙される。無邪気に「うちのクラス、勝つといいね!」って天使な笑顔で見せているが…
ごめんね、京子ちゃん。
私は今、内心とても荒れています!!





To 花の嬢王
Sub Re:件名の使い方違う。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
試合なんかに興味ない人には教えませーん☆
(ザマァ!!)




『…送信、と。
…って、早っ!! もう返事来た!! あいつどんだけ文字打つの速いんだよ!!』
「あっ! 菜也ちゃんの言う通りだ!!
ツナ君帰ってきたよ!!」
『へぇー、そっかぁ…

……はああぁぁ!!? 沢田がぁあ!!?』



まさかの沢田の登場に、私は今まさに信じられないという顔をしているだろう…。
目からウロコだ、使い方合ってるか知らないけど。

『………まさか戻って来るなんて……』

そう呟きながらも、視線をゆっくりと沢田からスマホへと移す。

『…そして見なきゃ良かった…』




From 花の嬢王
Sub Re:Re:私あんたの理科の教科書間違えて持って帰ったから。取りに来るついでに話してってよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
Contet なし



相変わらずの中身のないメール。
ちなみに…

『ねぇ京子ちゃん。
今日って理科の宿題、出てたよね?』
「うん! 確か教科書の問題を解くんだよね!」
『だよねー、アハハ…取りに行かない選択肢が消えたじゃん。』

宿題をやるためには花ちゃんから理科の教科書を奪還する必要があるようです。



(『絶対コレわざとだよね。なんて計画的な犯行なんだ…』)
(「? よく分かんないけど…もうそろそろ後半戦始まるし、応援しよう♪」)
(『…ういっす。』)

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