期待の眼差し


「今日バレーボールのトーナメントがあるんだってよ。」
『ふーん。』
「…アンタね…もう少し興味を持ちなさいよ。」


どうも皆さんこんにちは。菜也です。
今日は遅刻をせずに学校に来れたため、午前の授業が始まるまでの時間を花ちゃんと潰してるなう!

「ウチんところのチームさ、一人怪我して足りないんだって。」
『あーぁ…可哀想。』
「ね。結構練習して強くなったって聞いてたのに…現実って辛いわよね。」

…花ちゃん、あなた何歳ですか?
そんなこと言ったら拳骨を貰いそうだな、なんて思いながらも水筒のお茶を飲んでいれば…


「おい皆! 沢田がバレーボールのトーナメントに出てくれるってよ!!」
「マジか! じゃあ試合に出られるってことか!」
「あん時のツナ凄かったしな…もしかしたら勝てるんじゃねーの!?」

ガララッと勢い良く戸を開けて入ってきたのは、嬉しそうな顔をしたウチのクラスのバレー部員。彼の言葉にクラスの皆も盛り上がる。

「ダメツナなんて前まで呼ばれてたのに…」
『うん、随分な変わりようだね。
…あ、京子ちゃんだ。おはよー。』

ワイワイと賑やかな教室を見守っていれば、教室に入ってきた京子ちゃんの姿が目に入る。
そして興奮気味な様子でやって来たかと思えば…

「菜也ちゃん、花ちゃん、おはよう!
ツナ君、バレーボールの試合に出るんだって! 一緒に応援しに行こう♪」

…という応援のお誘いだった。

というわけで、
結局いつも通り平和な授業を受けた後、バレーボールのトーナメントの時間がやってきたのだが…


『京子ちゃんや、花ちゃんが見当たらないんだが…彼女の居場所を知らんかね。』
「花ちゃん?
花ちゃんは、バレー興味ないから帰る、って言ってさっき帰っちゃったよ!」
『あれれ?
アイツ…私に冒頭で「もう少し興味持て」って言ってなかったっけ?』

おっかしいなー
そう一人ボヤキながらも、どこかワクワクした京子ちゃんと一緒に体育館へと小走りで向かう。
え? 何で小走りなのかって?

『それはねぇ、もう直ぐバレーが始まってしまう時間だからさ。
そしてこんな時間帯にアソコでふらついているのは沢田じゃないかい?』
「え? あ! 本当だ! ツナくん!!」
「ッ!!」

私達の目線の先には…廊下で夢遊病のようにフラフラした沢田。試合前に好きな子に声掛けられて良かったじゃないかハッハッハー!! どうせニヤニヤとだらしのない顔をしてるんだろ…う…、…アレ?

『…何で顔死んでるの?』
「ハハ…ハ…」
「?
ツナ君、今日の試合出るんだよね? 会場はあっちだよ! 皆楽しみに待ってるし、急がないと遅れるよ!」
「う、うん…」
「ほら、行こう!」

…沢田綱吉、全く持って理解出来ない。
いつも京子ちゃんに話し掛けられたら鼻の下伸ばすくせに、今日は白目向いてたぞ。新しい愛情表現か?
それにしても…

『(随分と試合に出たくなさそうな顔だな…)』
「…な、なに?」
『あ、いや…バレーの試合、
「オレに任せといて」って今日1日言ってたのに、今は随分と消極的だなって思って。』
「そ、そうかな…アハハハハハ…」

何だその「この世の終わり」みたいな顔は。
どこか様子がおかしい沢田に違和感を抱きながらも、京子ちゃんと沢田の3人で会場へと向かう。

そして、辿りついた会場…

ガララッと沢田が扉を開けば、一気に歓声が沸き起こる。

「よっ! ヒーローのお出ましだぜ!!」
「頑張れよツナー!!」
「頼りにしてるぜー!?」
「またスゲェの見せてくれよ!!」

前回の持田先輩の件で、ガラリと沢田へのイメージが変わった皆。今度は何をして驚かしてくれるのか…期待の眼差しを向けるのは何も皆だけではなく、


「わぁー、歓声が凄いね! 菜也ちゃん!」
『……うん…楽しみだね。』


私も、その皆のうちの1人だった。

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