妖怪ですね。


沢田が戻り、いよいよ始まる後半戦。

『………。』

ハッキリ言おう、暇だ。
沢田が戻ってきたことには驚いたが、沢田はやはり沢田だ。持田先輩の時のはやはり偶然だろう。
そんな事を思いつつも、取り敢えずコートに立つ沢田を見る。
すると突如…

『!!』
「ぎゃあ!! 撃たれたー!!」
「どうしたんだ!? ツナ!?」

ボールも何も来てないのに、意味不明な事を言って床に倒れる沢田。
いや、沢田は何も間違った事を言っていない。

『(血が出ている…しかも脚に2発!)』

妖怪の血筋を引き継いでいる私だからだろうか…微かにだが、何かが沢田の脚に刺さったのが見えたのだ。それに血の匂いも僅かにだが漂っている。
だが、それ以上に謎なのはやっぱり沢田かも知れない。

「あ、あれ?
どうなってるんだ? 何も起こらないぞ…?
でもズボンに穴が2つ開いてるし…何だったんだ?」

…何でそんなに冷静なの!?
何も起こらないって、何が!? しかも脚に何か刺さった筈なのに…普通に立ちあがった!!

『…分からない。』
「菜也ちゃん…?」

京子ちゃんの言葉に返す余裕もないくらい、私の頭は今混乱している。
だが、この後更に私の頭は大混乱することとなる…
というのも、

「ツナ!! そっち行くぞ!! 防げ!!」
「OK!!」

ボールが来るのを防ぐため、ジャンプする沢田。
そしてそのジャンプはー

『…は…?』

軽々とネットの高さを超えたのだ。
あまりの高さのジャンプに、体育館が歓声で響き渡る。

『ネットの高さって…2m30cmくらいはあるよね?』
「凄い!! 菜也ちゃん見た!? 今のジャンプ!!」
『見た見た。でもさ、普通に考えて有り得…』
「やっぱツナ君って凄いね!!」
『凄いレベルを超えてると思うんだけどなぁ…』

だって、飛ぶ直前に何かが沢田の脚に刺さりましたからね? 本人も「撃たれた」って叫んでましたしね? その後にこんなバカ高いジャンプ、普通の人間ならできませんからね?

『!!(もしや沢田って…)』
「この調子なら勝てるかな!? うちのクラス!!」
『妖怪か…!?』
「溶解?」

キョトンと首を傾げる京子ちゃんはきっと何か勘違いをしているに違いない。だがここは敢えてスルーさせてもらおう。

『(にしても、妖怪なら納得がいく…。
仕方無い、同じ妖怪の血が混ざっている身として気付かないフリをしてあげよう。)』

きっと沢田も妖怪であることを隠したいに違いない…凍夜兄ちゃんがそうであったように。
だが、いつかは沢田が何の妖怪なのか…教えて貰いたいものだ。その時には私にも妖怪の血が混ざっていることを打ち明けよう。


これぞ私が沢田を妖怪だと勘違いした決定的瞬間である。
もちろん、沢田は妖怪ではないのだが…私がそれを知る羽目になるのはまだ先の話である。




(『花ちゃーん、教科書取りに来たよ。』)
(「花ちゃん! ツナ君、今日のバレー凄かったんだよ!! ネットを超えたの!!」)
(「…またこの子は…何言ってんの? 菜也、通訳お願い。」)
(『いや、その言葉の通りだよ。沢田が2m30cmあるネットよりはるか上をジャンプしたのさ。』)
(「…あんた達大丈夫なの?」)
(『ふっ、試合を見らずに帰ったから分からないのさ…自業自得ですなぁ?』)
(「うざっ。」)
(『げふっ! …ちょ、人の教科書を勝手に武器にしちゃいけません…。』)

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