つるりん


「プッ…アハハハハ! 考えたなツナのやつ!!」
「確かに…1本つっても何を取るかは言ってなかったもんな!!」

沢田が持田先輩の髪の毛を毟ったことで、剣道道場に笑いが沸き起こる。
いやいやいや、皆笑ってるけど…あれ絶対に痛いよ!? 想像しただけで鳥肌が立つよ!?

「これでどうだ!!」
「ヒィッ!?」
『…沢田コワッ…』

毟った髪の毛を掴み、審判にどうだと見せる沢田だが…鬼のような恐ろしい形相に審判は顔が真っ青である。仕方がない…あれは奴良組にいるモノホンの鬼達でも泣くと思う。
だが、
沢田は審判が判定を下さなかったことに怒ったようでー

「くっそ〜!!
うおおおおおおおおおおお!!!!」
「こ、こわっ…」
「あれホントにダメツナかよ…!」

ブチブチと草むしりでもするかのように…持田先輩の髪の毛は毟り取られてゆく。
鬼だよ…もう大魔王のすることだよアレは。
つぅかアレ…ある意味犯罪の域じゃね!?

「全部本!!」
「赤っ!!」
『…つるぴかだ。』

結局、沢田は非情にも持田先輩の頭をつるピカにし…勝利を手にした。
そして審判が旗を挙げたことに、会場が一気に歓声で響き渡る。沢田のもとへ皆駆け付け、「見直したぜ!」「カッコ良かったぜ!」などと熱くなって褒めちぎっているのだが…

『…私、コワくて沢田に近づけないわ。逆に皆スゴイね。』
「……私は未だにアレが沢田だなんて信じられないわ。」

私と花ちゃんは頬を引き攣らせて遠くから見守る始末である。何故皆平然として沢田と接してられるんだ…!!

「…花ちゃん、菜也ちゃん! ちょっとここで待ってて!!」
「! 京子!?」
『…京子ちゃん?』

どこか興奮した様子で沢田のもとへ行く京子ちゃん。
そしてー


「ツナくん、
昨日は怖くて逃げちゃって…ごめんね!」
「…えっ!? あ、えっと…!」
「私、友達によく言われるの。笑いのツボが分かってないって…!」


沢田にあたふたとしながら謝る京子ちゃんだが…
京子ちゃんやい、沢田の顔を見てみて。
いかにも「ジョークだと思われてるー!!」ってショックを受けたような顔をしてるよ!!

「ツナくんってスゴイね!! ただ者じゃないって感じ!!」

京子ちゃんの言葉に、沢田は少し照れ臭そうに笑う。顔が緩んでるぞ。

結局、その後はチャイムが鳴ったことで皆各々の教室に戻り…いつも通りの一日を過ごすことになった。ただ、一つだけ違うことと言えば、沢田への目線が変わったことである。






(『…っていうことが今日あったんだけど、どう思う? お母さん。』)
(「そうねぇ…その子も妖怪じゃない?」)
(『…お母さん。何でもかんでも妖怪のせいにするのは良くないよ?』)
(「そうだぞ鯉菜。きっとその沢田とかいう男はアレだ…精神的に問題のあるやつだな。」)
(「あぁ…そうかも。溜まりに溜まって遂に爆発しちゃったのよ。ほら、大人しい人ほどキレるとコワイって言うじゃない?」)
(『…うーん…そんなもんかなぁ。』)

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