赤ん坊
『ふぅ…やっと帰れるー!』
「やっぱ授業ってダルイわ…」
「そう? 私は今日も楽しかったよ!」
今日1日の全部の授業が終わり、ようやく帰宅時間になる。正直授業は嫌いだ。
学ぶことは楽しいから好きなのだが…学校の授業は少し退屈なのだ。
『1時間も集中力続かねっての!!』
「何怒ってんのよアンタは…」
「ふふ、菜也ちゃんはいつも元気だね!」
呆れるように言う花ちゃんとは逆に、楽しそうに笑う京子ちゃん。花ちゃんはともかくも…京子ちゃん、あなたの方がいつも楽しそうですよ!? いつも笑顔じゃないですか!!
「そういえば…京子、今日一緒に帰れるの?」
「もちろん! どうして?」
「昼休み持田先輩と一緒にいたでしょ? 何か約束してたし…帰りは持田先輩と一緒に帰るのかなと思って。」
『持田先輩て…あの剣道部の人か。』
「持田先輩とはすこし話しただけだから大丈夫! 皆で帰ろう!」
持田先輩とは剣道部の主将である。顔はイケメンの部類に入っているが…チャラい人だという噂をたまに聞く。
そんな彼は京子ちゃんに気があるようで、最近ちょこちょこ彼女を休み時間に呼び出してはまとわりついているのだ。
『そんじゃ…帰りますか!』
各々の鞄を持ち、教室を出る。
下駄箱で靴に履き替えて校門を出て、帰路につく私達が話すことは色々な事。学校での出来事や最近のニュースやドラマの話…3人で仲良く話しながらも歩き続ける。
「…んじゃ、また明日ねー。」
「バイバーイ!」
『また明日ー!』
ここで1人、花ちゃんが抜ける。
彼女の家はここの曲がり角を曲がったところにあるため、ここでお別れだ。一方、私と京子ちゃんの家はまだ先の方…今度は2人だけで話しながら歩く。
『でさー、私のいとこ滅茶苦茶カッコイイんだよね。』
「そうなの? 私もその凍夜さんに会ってみたいなー!」
『今度京都に来たら紹介するよ!
…ん?』
「どうかしたの?」
京子ちゃんと凍夜兄ちゃんのことについて話していれば…前方に変な赤ちゃんを発見。
赤ちゃんなのかコレ…人形か?
そんなことを思っていれば、私の視線の先を見た京子ちゃんが黄色い声をあげる。
「きゃーっ、可愛い!!」
「チャオっす」
『喋った…!?』
…赤ちゃんだ、紛れもなく赤ちゃんだ。
私達の目の前(目下か?)にいるのは、真っ黒いスーツを着た赤ちゃん…しかもちゃんと二本脚で立っている。赤ちゃんは普通まだ立てないぞ!?
「どうしてスーツ着てるの?」
「オレはマフィアだからな。」
「わぁーっ、カッコイイ〜!」
…何故だ。
何故赤ちゃんが二本脚で立って、普通に喋って、スーツを着ているのだ。しかもマフィアって…何言ってるんだコイツ。
『…妖怪…?』
「誰が妖怪だ。ドタマぶち抜くぞ。」
そう言ってカチャッと私に向けられたのは銃。
…あれ、それ本物っぽいと思うのは私だけ?
「わっ、スゴーイ!」
「まぁな。」
『…………。』
私がおかしいのか!?
何で京子ちゃん何も反応しないの!? 赤ちゃんだよこの子! スーツ着てることもおかしいけど…喋って二足歩行してることに何で疑問を感じないの!?
「じゃあね、バイバーイ!」
「チャオチャオ」
『…………。』
私が混乱する一方、京子ちゃんは手を振りながら赤ちゃんにお別れを言う。私はと言えば…頭にはてなマークを沢山浮かべながら、ただ京子ちゃんの後ろを慌ててついて行く事しかできなかった。
この時はまだ深く考えなかった。
まさかこの赤ん坊が本当にマフィアであること…
そして私がこの先、面倒くさいことに巻き込まれるなんて…思いもしなかったんだ。
これがー
私と小さな殺し屋・リボーンの出会い。
(『…妖気はしなかったし…妖気が隠すのが上手い妖怪かな。』)
(「ようき?」)
(『あ、何でもなーい。』)
(「? それにしてもさっきの赤ちゃん可愛かったね!」)
(『…そうかなぁ。』)
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