私の友達


「…ふあぁ…」
『随分と眠そうだね、花ちゃん。』
「まぁねー…
………っはぁ!!?」
『シーッ! 声でかいよ!!』


朝礼が行われている教室に気配を消して入り…自分の席にコッソリと座れば、隣の席の黒川花が大きく欠伸をした。
その様子にクスッと笑いつつも声をかければ、返ってきたのはこっちが驚く程の大きい声。そんな大きい声出したら皆が注目しちゃうよ。

「ちょっと! アンタいつからここにいたの!? ついさっきまではいなかった筈よね!?」
『え? ここに来て1分はもう経ってるよ?』
「そうじゃなくて!
…はぁ、もういいわ。アンタのこの神出鬼没は今に始まったことじゃないものね。」

額に手をやり、溜息を吐く花ちゃんは小学生からの友達だ。今みたいに、業を使って急に現れる私を〈神出鬼没〉だと彼女は言う。本当はぬらりひょんの業が原因だから当たり前だが…それは秘密だ。

『(妖怪の血が混ざっているだなんて知られたら嫌われるかもしれないしね…。)』

ぬらりひょんの業の特徴を簡単に言うと、相手に認識されないようにすることだ。その業を使ったからこそ、正門を越えることも教室に入ることも…誰にも気付かれずにできたのである。
とっても便利な能力だが…妖怪の血が混じっていることの証明にもなるため、ずっと隠し通しているのが事実だ。

『(しかも妖怪だけじゃなくて…ヤクザ者だしね。バレたらなんて言われるか!)』

小学生の頃から妖怪任侠一家であることを隠し続けているのだ。普通に過ごしていたら、今まで通りバレることなく平和に過ごせるであろう。
そんなことを1人考えていれば、あっという間に朝礼が終わり…各自授業の準備を始める。1時間目から移動教室とは面倒な事この上ない。


「菜也ちゃん、おはよう!」
『あっ、おはよー京子ちゃん。』
「学校来てたんだね! なかなか来ないから…休むのかと思って心配したよ?」
『あっは、ごめんね! ただ寝坊しただけだから…』
「ほらほら2人とも、早く移動するよー。」

笹川京子…彼女はこの学校ではマドンナ的存在で、男の子からは大人気である。あまりの天然さに時々引くこともあるけど…無邪気な可愛い笑顔がチャームポイントだ。ちなみに花ちゃんはお姉さん的存在で、いつも頼りがいがある。

「あっ、チャイム鳴ったよ!」
「急がなきゃ!」
『えっ、走るの!? 待ってー!』

響くチャイム音に、慌てて走り出す花ちゃんと京子ちゃん。そしてその後ろ姿を私は慌てて追いかける。
1日の授業の始まりだ。


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