この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 2-2)パラレルワールドですね

「さてと、どういう事か整理をせんとのぅ…」


客間に移動し、顎をさすりながら言ったのはおじいちゃん。
今この部屋にはおじいちゃん、お父さん、私、リクオ…そして夏目さん、猫、ヒノエさんがいる。ちなみに天井裏やドアの隙間からは小妖怪らが沢山覗き見しています…お行儀が悪いですね!


「え…と、夏目さん、だったっけ?」

「う、うん…」


リクオの問いかけに、戸惑いながらも首肯く夏目さん。きっとまだショックを受けているのだろう。リクオや皆が彼女らのことを覚えていないのだ…。もし私が『おはよう皆』と朝の挨拶をして、「…誰だお前さん」とか皆に言われたら泣く。絶対泣く。崖から飛び降りる。


『…いや、腹癒せに奴良組本家を消滅させるかも』

「姉ちゃん!? やめてね!?」

「鯉菜が言うと本当にやりそうで怖ェよ…」

「コラてめーら! 勝手に話を逸らすんじゃないわい!!バカモン!!」


そう叱るぬら爺に、リクオとお父さんから「お前のせいでオレ達まで怒られたじゃん」とジロっと横目で睨まれる。…人に責任を擦り付けるのはよくないぜお二人さん!


「えっと…夏目さんは僕達のことを知ってるんだよね?」

「うん…学年は違うけど同じ学校で、友人帳のことでも何度も助けてもらったし…」

「…友人帳…? 何だいそれは…」

「ぇ…っと、祖母の夏目レイコのことは分かりますか?」

「いんや…知らねぇな」

「ワシも知らんのぅ…」


彼女達のことだけでなく…友人帳や彼女の祖母のことも知らない私達に、目を真ん丸にして驚く夏目さん達。
そして戸惑う夏目さんをよそに、猫が面倒臭そうに口を開く。


「…フンッ
友人帳やレイコを知らんなど有り得ん。ここはおそらく私達の知ってる世界ではないぞ。」

「…どうゆうこと? 先生」


先生と呼ばれる猫が言うには…
ここは本来彼女達がいる世界ではないとのこと。夏目さん達がここに存在しない世界、いわゆるパラレルワールドだと予想している。
そしてその考えに夏目さんだけでなく、リクオやお父さん、おじいちゃんなど皆納得の色を見せる。


『…でも何でこんな事に?』


私の言葉にシーンとなる部屋…
だがしばらくして皆の視線がヒノエさんに集中する。


「…私のせいかい!?」

「それしかないでしょっ!!」

「お前が落とすからだ、馬鹿者!!」


えぇっ!?と驚くヒノエさんに、ギャーギャーと怒る夏目さんと猫。
二人の話によると…面白いモノを手に入れたと持ち出してきた箱を、どうやらヒノエさんが落としたらしい。しかも落ちた箱からは真っ白い煙が出たとのこと…。


「…家に居たはずなのに、煙が晴れたら…何故か奴良君の家の近くにいたから…」

「ついでに名前を返してから家に帰ろうって彩乃が言うもんでねぇ…ここに寄ったんだが…
不思議なことが起こるもんだよ。」

「何他人事のように言っとるんだ!!」


ケラケラと笑うヒノエさんに猫は怒り、彩乃さんは2人に暴れないのと注意する。
…何だかお母さんポジションだな。うちでいうとリクオに当たるかもしれない。
そんなことを内心思っていれば、隣にいたリクオが口を開く。


「じゃあ…帰れるまで取り敢えずここに住みなよ! ボク達も役に立てるかどうか分からないけど協力するからさ、元の世界に帰れる方法を一緒に探そう!!」

「リクオ君…ありがとう!」

「無論そうさせてもらうぞ。」

「ちょっ、先生は黙ってて!!
…あの、奴良組の皆さん!
帰れるまでの間…どうかよろしくお願いします!」


そんなこんなでー
どのくらいの期間になるか分からないが、奴良組に新しく3人が加わる事になり…


「宴だーーー!!!!」

「歓迎会開くぞーーー!!!!」

「酒だー! 酒を持ってこーい!!」


…となったのは言うまでもない。







(「ぬっ! 私にも酒を持ってこーい!」)
(「私も貰ってもいいかい?」)
(「…うちの食い意地張った猫とヒノエがごめんね」)
(「あはは…気にしないで!」)
(『奴良組も食い意地に関しては負けず劣らずだからね…』)




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