この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ プリクラとストール(達也side)

「オレも大きくなったろ? センセ♪」

『…身長だけ大きくなって、中身は全く変わってないクソガキのまんまよ。』

「ひっでー!! 年増のくせに!! …イダァっ!?」


どもども!!
皆大好きたっ君こと達也君どぅえす!!
もう分かっているとは思うが…オレは今、元生徒であった奴良鯉菜と一緒にいる。


『…それで? わざわざ人混みの多い中に呼び出して一体何の用よ。』

「またまたぁ〜
そんなツンツンしてるけど、本当はオレと一緒にお出かけできて超happyなんだろ??」

『あっ、雨降ってきたから私帰るわ。』

「ちょいちょいちょい!!
雨降ってないから!! オレが悪かったから!! だから一緒についてきてつかぁさい!!」


来た道をリターンバックするアイツを慌てて止め、どさくさに紛れて手を繋ぐ。驚いた顔をする奴良にニッと笑いかければ、何を企んでるんだと目を半目にして問いかけられた。
…オレ泣いてもいい?


「この前、賭け事をしてオレが勝っただろ?」

『…負けたら勝った人の言うことを一つだけ何でも聞く…。』


オレの言葉に眉を寄せて答える奴良。
先週、ようやく高校を卒業したオレを祝って奴良組では宴が開かれたのだが…その時になんやかんやでコイツと賭けをした。
ちなみにお酒で勝負したのだが…どうやらオレはお酒に強いらしく、奴良に勝ててしまったという衝撃の事実!! お酒にあまり耐性がないのは知っていたが…まさか勝てるとは思いもしなかったぜ!!


「…てわけで、オレの命令は一日デートだ!!」

『別にいいけど…何するの?』

「そうだな…取り敢えずプリクラ取り行かね?」

『お前は女子かっ!』


ビシッとツッコミを入れる奴良を無視し、そのまま手を引いてゲーセンへと向かう。土日のせいもあってか…沢山の女子の群れで溢れかえるプリクラコーナー。人混みをかきわけ…空いている所に入って奴良と写真を撮る。
そして落書きコーナーへと移り、撮れた写真を見ればー


『…なんていうか…達也はいつからオネェになったの?』

「…お前こそ、いつからこんなにケバくなったんだ?」

『口紅でも塗ったの?』

「お前こそ目の矯正でもしたのか?」


これぞプリクラミステリー。
大きくなった目と赤い唇に…お互い軽口を叩く。そして大人気ないオレ達は時間ある限り落書きをした。
ここ重要だからもう1回言うぞ?
〈落書き〉をしたのだ…


「おい。
何でオレの頭サザエ〇んになってんだよ。」

『何で私の顔がド〇クエのスライムになってんのよ。』

「オレいつから肌の色緑になったんだ?」

『私パンツ被る趣味ないんですけど。何でTパン被ってんだよ。』

「…やり過ぎたな。」

『…1枚もマトモなの残ってないじゃん。』


可愛らしい落書きなんざ一枚もなく、全て悪意がこもっているのが一目見て分かる。そんな写真をしばらくの間じっくりと見て…そして顔を見合わせれば、プッと同時に吹き出して笑う。ゲラゲラと写真を見ながら笑い泣きし、ようやく落ち着いたところでゲーセンを出る。

3月になったとは言え、まだ肌寒いこの時期。
ゲーセンを出た後…
喫茶店や本屋、雑貨屋などを見て周ったが、あっという間に夕方になり、辺りは既に暗い。




『帰りは朧車で帰りなよ。』

「おぅ、サンキュ!」


奴良組本家に着き、朧車が来るまで玄関先にて他愛もない話をする。デートらしい事は特別していないが…それでも楽しく過ごせたと話していれば、朧車がガラガラとやってきた。
それを見て、『気を付けて帰ってね』と言う奴良。
そんな彼女の後ろをオレは指差し…


「おぅ。
…あっ、あそこ。親父さんが呼んでるぜ?」

『え?』


オレの言葉に後ろを振り返る奴良。
その隙を突き、後ろから彼女の肩に腕をまわしてギュッと抱きしめる。


『っ!?』

「今日はありがとな、鯉菜。
…これお前に似合いそうだから、やるよ。」


オレより背の低い奴良の首周りには…花弁が描かれた藤色のストール。抱きしめた拍子に、さり気なく巻き付けておいたのだ。


「そんじゃっ、またな!」


後ろから抱き締めた為、彼女が一体どんな顔をしているのか分からない。それを確かめるのが恥ずかしいオレは…言い逃げするかのように直ぐに朧車へと乗り込む。
そしてオレが乗るや否や…空へと飛び立つ朧車。


「…お嬢、今頃きっと喜んでいますね。」

「ハハッ…そうだといいけどな。」


朧車の言葉にそう返すオレの心臓は…
しばらくの間、ドクンドクンといつもより速く高鳴っていた。







*********


『………今のは反則でしょ。』


達也が去った後、たった1人玄関先にて残された私。しばらくして漸く覚醒しだした頭は…私の顔を一気に赤く染めてゆく。


『……可愛い…』


弛む頬を隠すように、貰った藤色のストールで口元を覆う。私の好きな藤色に…多過ぎず少過ぎず描かれた花弁は正に私の好みである。


「あっ、おかえり姉さん。」

『…ただいま。』

「…あれ、そのストールどうしたの?
よく似合ってるね!!」

『…………あ、ありがと…。』

「(この反応は…)…男の人から?」

『……別に。』


この後、
イヤに鋭いリクオによって…直ぐに達也から貰ったことがバレてしまった私。どういう経緯で貰ったのかと皆に質問攻めをされ、しばらくの間逃げ回る羽目に合うのであった…。




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