この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 男心

「…何だそのガキ。」

『え? 達也…って言ってもわからないか。元先生だよ。転生したんだって。』


どもども、おこんにちは。
チビ達也を膝に乗せて縁側にてまったりしている奴良鯉菜です。ただいまイタクが遊びに来ています。


「…<先生>?
…あの時死んだ男か?」

『うん。あの時私が殺した男パート2。』

「はい、鯉菜先生!」

『何だね達也君。発言を許可しよう。』

「はい、ありがとうございます!
お言葉ですが先生! オレを殺したこと、最早ネタにしていませんか!?」

『ふむ、それは君の気のせいだ。』


いやー、何だかんだ言ってイタクも優しいよね!
私が先生を殺したことには変わりないのに、気を遣って「死んだ」って言うんだもの!
まっ、そこはちゃんと訂正させて貰うけど!!
にしてもそんなツンデレなイタク…マジで、


『萌え萌えキュン☆』

「何? オレの可愛さに燃えたの?」

『違ぇよ鼻垂れ小僧。また輪廻したいの?』

「いや、もうオムツは勘弁です。ごめんなさい。」

「……………。」


何だコイツらと言わんばかりの目で見てくるイタクに、改めて説明する。私達は達也と会ってだいぶ会ったけれど、イタクは確かに達也に会うのは初めてかもしれない。あんまり奴良組に来ないし。


「ふぅーん…輪廻、か。」

『あれ、もしかして信じてないの!? ここに2人も輪廻した人がいるのに!!』

「別に信じてねぇわけじゃねぇけど。」

『あ、隣座る? 立ってるのキツいでしょ。』

「(聞けよ人の話…)」


ポンポンと隣を叩けば、何故か微妙な顔をしながらイタクは隣に座った。
え、何なのその顔は。


「奴良姉ー、お菓子おかわりー。」

『はいはい、…つぅかアンタ、人の膝の上にお菓子のカス溢しすぎでしょ。
わざと? わざとなの?』

「いやいやいや! オレ子供だから! そこは多めに許せよな!!」

『中身は大人だろうかハゲ。』

「ハゲてますぇ〜ん!!」


イラッとくるわ。地味に。
達也の頭を掴み、グググッと力を込めたら痛いと喚く小さな男の子。元から精神年齢が低いせいか、年相応にしか見えないのは達也クオリティかもしれない。


「…つぅかお菓子くれぇ一人で食べられるだろ。膝からおろせばいいだけの話じゃねぇか。」

『…うーん…まぁ、それはそうだけど。』


イタクの言うことは確かに的を得ている。縁側でのんびりしていたら達也が来て…何やかんやで達也を膝の上に乗せることになったのだが、うん、あまりに達也が年相応にしか見えないもんだからね。ついつい本当の子供のように扱っていたわ。


「もしかしてお前…」

「あ?」

「ヤキモチ妬いてんのか?」

「あ"? こんなじゃじゃ馬に誰がヤキモチなんか妬くかよ、ふざけっでねぇ。」

『ふん…イタクは頭上に気を付ける事ね。ボーッとしてたら馬の蹄に潰されるわよ。』

「やってみやがれ。そんな蹄なんかこの鎌鼬のイタクが破壊してやる。」

「やめろよお前ら。動物愛護団体に訴えられるぞ。」


元はと言えば、お前が原因なんだけどね?
その後も何だかんだ言って、縁側にて3人で談笑した。時には達也が、時には私が誰かをからかい…毎度毎度イタクはマジレスする。イタクはもう少し冗談への耐性を身につけた方がいい気がするぞ。
そんなことを思いながら、チラッとイタクと達也に目を向けた。先程まで私の膝の上にいた達也は、今はイタクの膝に立って、イタクのバンダナを取ろうとしている。


「いいじゃん、ちょっとぐらい貸せよ!」

「バーカ。欲しいなら力ずくで取ってみろってんでぃ。」


あぁ…何だろう、この感じ。


『…フフッ…何だか二人…』

「「?」」

『親子みたいね!』

「…はぁ!?
こんな短気のやつがオレの父さん!?」

「こんなクソガキの父親なんかやってられるかよ。」

『アハハッそれこそ本当に親子みたい!
2人が親子なら…私はイタクのお嫁さん、かな?』

「「!!」」


ニッと笑い、イタクの肩に手を添えて『ね、アナタ♪』と言えば…直ぐに横やりを入れてくる達也。
オレは母ちゃんの再婚なんて認めないからなっ!!なんて言ってるけど誰が母ちゃんだ。しかもバツイチ前提かよ。

…というか、何でイタクはさっきからそっぽ向いてんだ。やけに静かなイタクの顔を覗き込もうとすれば−


『…イタク?』

「…ばっ、コッチみんでねェ!
オレァもうリクオの元に行くからな!」

『え? あぁ…いってらっしゃい。稽古は程々にね。』


コッチ見んなとか酷い言われよう!
でも、玄関から聞こえてくる「お帰りなさいませ」という声に、リクオが帰ってきたのだと察する。
頑張れリクオ!
今からお前を待ってんのはお師匠様の特訓だど!!


「…お前さ−、」

『ん?』

「男心をもう少し勉強した方がいいぞ?」


何それ。何で急に小さい男の子にそんなことを言われなくちゃならないんだ。
そもそも、


『そんなもん勉強しなくても分かってるよ。私の心はオッサンだもの。』

「いいか? 奴良。よおく聞け。
男心とオッサン心は全く違うから。」

『マジでか。』


その後、何故か達也によって男心についての講義が開かれたのは言うまでもない。




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