この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 拉致(リクオside)

「青に黒!お帰りなさい!
晩御飯の用意できてますよ!」


花開院さんを含めた清十字団が帰った後、雪女こと氷麗は大変元気になった。まぁ、雪女だけじゃないけどね。


「今日は私のお手製じゃないけどね!うふっ」


本当分かり易いな…明日また学校で会うってこと分かってんのかな?雪女の変貌ぶりに苦笑いして見ていれば、後ろからコンコンという音が聞こえる。


「若…リクオ様…」


ネズミ…?
外からコッソリと話し掛けてきたのは1匹のネズミだった。


「お初お目にかかります。
私、旧鼠組の下っ端でございます。」

「旧鼠組…?(知らないな…)」

「はい、実は私…見てしまったのです。御友人の花開院ゆら様と家長カナ様がホストに拉致されていますのを…。」


そんな…!なんであの二人が!?
ネズミの報告に、ぼくの頭は混乱に陥る。取り敢えず、皆に言って助けてもらわないと…!!


「ちょっと待ってて、今皆に…」

「いけません!
ゆら様は陰陽師。皆が進んで助けるはずがございません。大丈夫。私の組の者がいますので、どうぞお一人で…」


…確かにこのネズミの言う通りだ。
カナちゃんだけならまだしも、陰陽師である花開院さんがいるんだ。多分皆も断るだろう…。
ーそうだ!


「じゃあ…せめて姉ちゃんを!
って、あれ…そういえば姉ちゃんって二人を送ったんじゃ…」

「…鯉菜様はご無事です。
先ほど家に帰るところを見かけました。お姉様が一緒に捕まっていれば皆も動いてくれたでしょうが…。仕方ありません。急いで二人を助けに行きましょう!」


姉ちゃんは無事なんだ…良かった。
でも送るならちゃんと責任もって送って欲しいよ!本当あの人は適当なんだから!姉ちゃんが最後まで送ってくれてたらきっとこんなことにはならなかっただろうに!
姉ちゃんに対する不満を抱きながらも、僕はネズミの道案内に従って走る。二人共無事だといいんだけど…!


「あ!ここのお店です!」


ネズミの言うお店を見れば明らかに大人のお店だった。…どういうことだ?
だが不意に、疑問に思ったその隙をつかれ後ろから襲撃される僕。二人を助けなくちゃいけないのに…遠のく意識に僕は逆らえなかった。





そして、目が覚めれば見慣れぬキラキラした空間が目に入る。


「ここは…?」

「お目覚めかい?自称…三代目さんよぉ…」

「誰だ…君?もしかして君、妖怪?
奴良組の人なの?」


そうハッとして聞けば頬を勢い良く蹴られた。
痛い…!何でこんなこと…。


「今てめー旧鼠を下に見やがったな!
俺たちは夜の帝王なんだよ!」

「夜の…帝王?」

「今妖怪の世界はな、古の妖怪と変わり…多種多様な《悪の組織》になってんだよ。俺達はもっともっと悪行をでかく展開する。そのためにゃあ…お前みたいなヌルイ奴に継いで欲しくないんだよ」


その言葉と同時に、目の前にカナちゃんと花開院さんが縛られた状態で放り出される。本当に捕まってたんだ…!


「てめえの率いる古の妖怪じゃ生き残れねぇ。俺たちが三代目を率いる。てめぇは手を引け。」

『お兄さん、逆にアンタには不釣り合いだよ。
三代目はお前には荷が重過ぎる。』


その声にハッとする。今の声は…!


「…ああ?」

『三代目は私の弟が継ぐ。
お前は今宵…その土台になってもらうよ。』

「なっ…姉ちゃん!?」


カナちゃん達とは離れたところに、縛られている姉ちゃんの姿があった。殴られたのだろうか…頭から血を流している。
無事に帰ってたんじゃなかったのか!?


「変化もできねぇような才能無しは黙っとけや!」

『いっ…!げほっ』

「や、やめろよ!三代目なんかどうでもいいから!姉ちゃんを…皆を放してよ!!」

「あぁん?
テメーなんかがトップになるってだけで死ねるわ!」

『じゃあ死ねやこの糞ドブネズミが!
汚ねえ足で私の弟に触れるんじゃねえドカス!』


ちょっ、そんなこと言ったらまた蹴られるのに…!頭の他にどんどん傷が増えていく姉ちゃんに焦りを覚える。何であの人は火に油を注ぐような真似をするんだ!
とにかく早く何とかしないと…!


「それ以上やめてよ!三代目は継がないから!」


そう叫べばまた蹴られる僕。


「軽々しく言ってんじゃねえぞ!
どれだけ重い代紋か分かってんのか!?」


こんな奴が…奴良組の妖怪…なの?


「本当だ…いらないよ」


だから早く皆を…!


『リ、クオ…駄目よ。お父…さ…悲しむ……』


姉ちゃん…でも!それ以外に方法が…!


「さっきからうっせーんだよてめぇは!!」


蹴りどころが悪かったのか、意識を失くした姉ちゃんに危機感を覚えてる。
早く助けないと…手遅れになってしまう!!


「本当だな…じゃあ今夜中に全国の親分衆に回状をまわせ!もし破ったら、この娘達ぁ…夜明けと共に殺す!」


その言葉と同時に僕は家へと走った。姉ちゃんを、カナちゃんと花開院さんを助けるために…!


「早く…早く回状をまわさないと…!!」


何度も何度も転びながら、僕は足を止めずに走った。皆の無事を祈りながら。




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