この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ ぽん酢

「それじゃあ、奴良くん。僕たちはもう帰るよ」

「今日はその、ホンマにごめんな。私まだまだやわ…。」

「い、いいよいいよ!気にしないで!それより気をつけて帰ってね、皆!」


玄関先に行けば、靴を履いて帰る準備をしているゆら達を発見。


『リクオ、私お母さんにぽん酢を買うように頼まれたから。お使いついでにゆらちゃんとカナちゃんを送って帰るわ。』

「分かった、よろしくね。」


リクオの髪をクシャクシャと撫でながら、いい子でお留守番してろよーと言ったら手を叩き落とされました。地味に痛い。お姉ちゃん泣いてもいい?


『そんじゃ、行きますか。
ゆらちゃんは家どっち?』


そう聞けば「こっちです」と言って歩き出すゆら。そのままカナちゃんとゆらと3人並んでたわいもない話をしながら歩く。


「あ、私の家こっちなんで!お姉さんはゆらちゃんを送っていってあげてください。私は大丈夫だから!」


途中、笑顔でそう言うカナちゃんに甘えてサヨナラを済まし、ゆらと2人で歩く。
そしてどのくらい経っただろうか…
しばらくして、


『…ゆらちゃん?』

「…はい…」

『もしかして道迷った?』

「……すみません…」


一番街に入ってキョロキョロと慌て出すゆらに、もしや…と思ったけど、見事にビンゴだな。


『いや、謝らなくていいよ。でもここ危ないから…取り敢えずここを出よう。』

「そ…そうですね…」

「ゆらちゃん!お姉さん!」


あらら…やっぱりカナちゃん来ましたか。
これはもうホストこと窮鼠が出てくるパターンですね。私も一緒に捕まるかもしれないパターンですね。どうしようかな…って、
あーーーーー!!!傘…忘れた。
いや、雨降るのに忘れちゃったっていうんじゃなくて、護身刀忘れたってことね!しまった。何で今日に限って忘れるんだ私のバカ野郎。


「私って…まだ修行が足りひんわ。本当にいると思ったのに、奴良くん家に失礼なことしてもーた。」

『そんな気にしないで。そりゃあ勝手に人の家を歩き回るのは良くないけど、でも私達のことを想ってやったんでしょう?ありがとうね。』


ニコっと笑ってそう言えば、ありがとうとゆらにお礼を言われた。微妙に照れて言ってるところが可愛い。傘を忘れたことなんかどうでもよくなっちゃうね!


「わっ!女の子が落ち込んでるー!」


何だお前。せっかくゆらの可愛さに癒されてたのに、お前のせいで一気にテンション下がったわ。萎えぽよ。


「僕と一緒に遊ぼーよー!」


気持ち悪っ。
リクオが僕って言っても何とも思わないのに…こいつが言うと気色悪っ!ママに遊んでもらえよ。気持ちわりーな。
カナちゃんと一緒にドン引いてたら、ゆらの空気が一変する。どうやらこいつらの正体に気付いたようだ。


「下がって…二人共」

「え…ゆらちゃん?」

『カナちゃん、ここはゆらちゃんに任せよう』


戸惑うカナちゃんに、安心させるよう優しく言う。


「つれなくすんなよ仔猫ちゃん。
アンタら…三代目の知り合いだろ?夜は長いぜ…骨になるまでしゃぶらせてくれよぉおおおお」


チャラついた男の顔が鼠になる。


「長い夜の始まりだ。」


そう言って複数の窮鼠に路地裏に追い詰められる私達。さて、どうしたものか…服の上から胸あたりを触れば硬い感触がした。どうやら番傘は忘れたものの、ちゃんと鉄扇は装備していたようだ。流石私だ、偉いわー。


「なにこれ…ゆらちゃん!」

「妖怪変化…昼間説明した通り、獣の妖怪よ。
…鼠風情が粋がるんちゃうわ。
後ろに下がって、家長さん。」

「え…でもっ!」

『カナちゃん、ゆらちゃんは陰陽師よ?』


ゆらの邪魔にならないよう、カナちゃんの手を掴み一緒に後ろに下がる。


「やれ お前ら」


その言葉を合図に窮鼠とゆらは動き出した。


「出番や私の式神!貪狼!」


ゆらの持っていた札が狼に変わり、次々と窮鼠を食い散らかしていく。うへーグロッキー。
だが、徐々に追い込まれる部下に何を思ったのか、リーダー的存在が人間の姿に戻ってゆらに近づく。


「そんな物騒なもんしまいなよ…」


何をするのかと思いきや、そう優しくゆらに言う馬鹿ネズミ。アホだろコイツ。頭湧いてんのか。人間の姿で言えば大人しくそれに従うとでも?冗談はその顔だけにしろよ。


「さわるなネズミ!」


もちろん、陰陽師であるゆらが騙されるわけもなく、ヤツの手を叩き払った。そしてその行為にキレたのであろう窮鼠が指を鳴すと、一斉にどこからかわいて出てる沢山のネズミ。ゆらちゃんに勝てないと悟ったからか…後ろにさがっているカナちゃんと私を人質にするようだ。大量のネズミが私達に襲いかかってきた。


「キャアっ!!」

『…てっめ!』


女の子らしく悲鳴をあげるカナちゃんに対して、男らしく怒る私。どうだ勇ましいだろう…!だなんて馬鹿なことを考えている場合じゃない。カサカサと体中を這い上がってくるこのネズミ達をなんとかせねば!


『チッ!気持ちわりーなっ!』


女子力なんて知るかこんちくしょう。
何だよこのネズミら、気持ち悪っ!捕まえようとしても避けるし、動きがすばしっこくてどうにもできない。さっきから服の中入ってくるし変態かよ…って痛い!誰だ今噛んだやつ!後で握り潰してやるからな、青田坊が!


「ゆらちゃん!」


カナちゃんの声にハッとしてゆらを見れば、殴られたようで気絶している。ゆらを殴った奴はどいつだ…分からないから連帯責任でお前ら全員後で死刑な!


「きゃっ…!」

『…!カナちゃ…っ』


横からカナちゃんの悲鳴が聞こえた。
見れば、後ろから布で鼻と口を押さえられている。おそらくクロロホルムだろう…だなんてのん気に分析していれば、後頭部に痛みが走る。
あぁ…何かで殴られたんだ、なんて思いながら段々と意識が朦朧としてくる私。私が目を覚ました時は覚悟しとけよお前ら、と後でボコボコにすることを誓いながら…私は意識を落とした。





(『(私もクロロホルムが良かった…痛い)』)




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