▽ 謝りに行きます
「あれ?姉ちゃんもう帰ってたの?
…早過ぎない?」
『自主休講したからね。』
「な!駄目だろ!?立派な人間になるのにそんな事したら!バレたらどうするんだ!」
いやいや、サボりから妖怪を連想する変わり者なんかいねぇよ。それはお前だけだ馬鹿者め!
『それよりほら、鴆の所に行きなさい。私はもう二人で話したから、リクオも久しぶりにたくさん話してきなよ』
そう言ってリクオの背中をポンと押す。お願いだからあんまり鴆を怒らせないでやってくれよ?
そう願うものの、
リクオと別れてしばらくして…
「クルルゥアァァァァ
何してくれとんじゃいアマァァ」
という鴆の素晴らしき巻き舌が聞こえてきました。つうかお前病弱なんだよな?何でそんなにデカイ声が出るんだよ!
「ふざけんじゃねえー!
聞いてるぞリクオよ!てめえがふぬけで…誰一人賛同を得られず三代目を継げんでいるのを!!どういうことか説明してもらおう!」
あんまり怒るなよって言ったのになー…
これじゃ吐血するかもな。
…助けに行くか。
『失礼しまー…』
「死ねぇいいこのうつけがー!
いつの間にそんな軟弱になりおったー!」
って、はぁ!?毒羽根が飛んできてるーー!?
スッと障子を開ければ飛んでくるのは鴆の毒羽根。当たると大変危険なので要注意です。
『ぎゃああああ!!』
「うわーーーー!!だ、誰かとめてー!!」
「くそ!
オレは…こんな奴のために…生きているわけじゃないわー!ええい帰る!!」
興奮したせいか、咳をしだす鴆。
少し血も吐いている。
慌てて鴆の元へ向かうものの…
『っ鴆!!』
「鴆くん!?大丈夫!?」
「くそ、近付くなバカモン!ごほ…
ゴボーーーーーっ」
大量に吐血する鴆…そして、
『…………鴆、大丈夫…?』
「…………姉ちゃんも大丈夫?」
『大丈夫に見えるか?』
「…見えない。」
「わ、わりぃ…鯉菜」
その血をシャワーのように浴びた可哀想な私。
『ちょ、本物のシャワー浴びてくるわ。』
風呂場までの道のりで、皆に「誰にやられたんですか!?」「今すぐ治療を!」「鴆様を呼べ!」って勘違いをされ大変でした、丸。
そんなこんなでー
シャワーを浴びた後、廊下を歩いていればリクオの声が聞こえてきた。
「鴆くんは動いちゃいけない体だってのに!
ひどいよ!」
「ひどい…?ふん…そう思うのなら、ワシの奴良組…やっぱお前にゃ譲れんわ」
どうやら部屋の中でおじいちゃんとリクオが口論になっているようだ。盗み聞きのつもりではないが、そのまま耳を傾けていると…
『あ』
「…何じゃ、おったのか」
『うん…。ちょうど今、鴆君の血を洗い流して来たところ。』
部屋から出てきたおじいちゃんとフェイストゥフェイスなぅ。まるで盗み聞きがバレたような心地だ。つらい。気まずい。
「鯉菜…ちぃと付き合え。」
『…うん。』
正直言って、私はおじいちゃんが時々苦手だ。
特にこういう時。真剣な顔をした時のおじいちゃんはハッキリ言ってこわい。別に禿げで顔がこわいって意味じゃないからね?
まるで、全てを見透かすような…、嘘をつくのを許さないような…、怒って見捨てられるような…、色んな恐怖と悲しさが混ぜ合わせになって…息苦しいんだ。
ーそして時は過ぎ、夕方…
おじいちゃんとの話を終え、歩いていればリクオに会った。
「あ、姉ちゃんいたいた!」
『…なに?』
「鴆君のところに行くから一緒に行こうよ。お酒も用意してあるから、それ持って行こう!」
ということで、お酒を取りに行けば青と黒がいた。その手にあるものは…妖銘酒じゃないか!
「おい見ろ!黒田坊。台所に大事そうに桐の箱にしまってあったんだ。」
「こりゃー妖銘酒、呑もう呑もう。」
そう言って嬉しそうに笑う2人だが、直後リクオによってそのお酒は没収される。
「こらっほんとお前らは。」
「え…これ若の?なんで酒?」
「鴆君に謝りに行くんだ!
結果的に無理強いさせた事は悪いんだし!」
リクオは偉いなー、やっぱりお前は優しい奴だ。
「それに…ちゃんと説明しなきゃ!
僕が人間だってこと!きっと分かってくれるよ!三代目は継がないって!」
リクオは酷いなー、昔からお前は容赦を知らない奴だ。
(「誰か…道知らない?」)
(『え、朧車に乗っていくんじゃないの?』)
(「ええー…」)
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