▽ 久しぶり!
『今日はなんて良いサボリ日よりなんだ…』
こんにちはー、ポーカーフェイスがそこそこ得意な鯉菜だよ!え?それ自慢になってないって?
ちっ、バレたか。
『実を言うと、ポーカーフェイスどころかむしろ顔と雰囲気にに出やすいタイプだけど。』
「何をブツブツ言ってんだい?」
何てこった…あのお父さんが!
ここ大切だからもう一度言うよ?
あのお父さんが!玄関先を掃除している…!!
『明日は槍が振りそうだね。』
「どういう意味だコラ。」
『ただいま♪』
「おかえり♪ …じゃねぇよ。学校はどうしたんだい?随分と帰りが早いようだが。」
『今日は昼までなの。』
「そうなのか?
リクオと一緒に帰ってくりゃ良かったのに…。」
ふふん。これだからお父さんは…!
『私は確かに昼までとは言ったけど、皆も昼までとは言ってないわよ』
「要はサボりか。」
『違う。午後からの自主休講よ。
…あれ?誰か来てるの?』
お父さんと玄関に入れば、玄関に男物の草履がある。誰のだろう。つーかお父さん掃除はどうした、もう止めたのか?
「あぁ、鴆が来てるぜ。
会うのは久しぶりだろ?挨拶してこい。」
『マジか。行ってくる。』
どうしよう、鴆が来たよ。やばい。
何がやばいって…あのエロい胸板さんが来てるんだよ!前世の時からずっと思ってたんだけど、鴆の胸板…エロすぎて鼻血出るわ!お父さんとかリクオとは違って…何だろう。
上手く言えないけど…
『病弱なくせに胸筋しっかりしてて、体型が細くも太くもないところが良いんだよ。』
「…お嬢?」
『あっ、鴆だ。久しぶりー!ちょうど今挨拶に行こうと思ってたところなの!』
いかんいかん。
危うく聞かれるところだった。てか聞いてないよね!?
「お久しゅうございます!鴆でございます!」
『…………』
「……………」
『いや、知ってますけど。
てかその話し方止めてよ気持ち悪い。笑ってしまうじゃん。』
「てめぇ…相変わらずだな。」
頬が引き攣ってますぜ、兄貴。
って私のせいだけどね。はははー。
『体ん調子はどう?やっぱ…悪いの?』
「…まぁな。正直言って、あんま良くねぇ。」
『そ…か。…私やお父さんの治癒も鴆には効かないんだったよね。』
鴆のこと結構好きだからな…できたら長生きして欲しいんだけど。
「やめろよ。コイツァ俺自身の毒だ。
いくら病気や怪我を治すその治癒の力でも、こればかりはどうしようもできねぇんだ。」
『……うん。』
「それより鯉菜…
お前は三代目を継ぐ気はねぇのか?」
『ないね。』
「…っ!」
ヒーッ!下向いてプルプル震えてらっしゃる!!
しかもオーラも半端ない、殺されそうってか私殺されるんじゃね!?
待て!怒るな!早まるな!
そしてリクオよ…すまぬ!盾になって貰うぞよ!
『三代目は…私の弟であるリクオが継ぐ。』
「だが聞いたぞ。
リクオは三代目を継ぐ気はねぇってな。
…本当なのか。」
『今は、まだ…ね。』
「…俺は長くねぇ。いつになるんだ。
お前じゃダメなのか?」
『…私の何を買って、私を三代目に推してるのか全く分からないな。』
いや、本当は分かっている。
分かっているが、でもそれは…
『お前達は私を買い被り過ぎだ。』
「そんなこたァねぇ!
お前は小さい頃から頭がきれて…」
当たり前だ。中身は大人だったんだから。でも実際は普通なんだよ。むしろ普通どころか中の下もしくは下の上だと思うけど。
『私が継いだら、奴良組は終わりを告げる。私じゃ駄目なんだ。私とは反対に、リクオは三代目に向いてる。今はまだ継がないといえども、その時は……近い。』
「…近い?お前…何か知ってんのか?」
『…何か、とは何でしょう。
鴆様は変な質問をなされますなぁ。』
扇子で口元を隠し、敢えて、わざとらしく笑いながら言う。誤魔化すのも、嘘をつくのも、得意だ…。
「…ハッ!気色悪い話し方すんなよ。
血反吐が出るわ。」
『アンタの血反吐はリアルだからやめろ。』
空気が和んだところで、席を立つ。
そろそろリクオが帰ってくる頃だろう。…あ、ほら。ちょうど帰ってきた。
『鴆。リクオは三代目を継がないって言うだろうけど…それでも、リクオを見離さないで待っててくれたら、私…嬉しいな。』
怒りで体を壊さないようにね、と一言だけアドバイスをし、私は部屋を出た。
さて…どうなることやら。
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