▽ 生きて守れ(鯉伴side)
「…すげぇ盛り上がってんな」
宝船に乗り、リクオの元に近づくにつれ歓声がでかくなっていく。
あんなに盛り上がって…リクオは周りに恵まれてんなぁ。息子が皆に愛されてることに心から喜んでいればー
「!? お…おい…」
「なんだよ…あの怪我…」
近づくにつれより良くなる視界…
そして見えたのはボロボロになったリクオの姿だった。
「リクオ!!」
「に、二代目!?」
「リクオ様が…すごい怪我を…!!」
慌てて船を降り、リクオの元へ走る。
「おいおい…こりゃあ怪我ってレベルじゃ…!
畏が消えかけてるじゃねぇかっ…」
慌てて治癒能力を使うが…回復が間に合わない。
このままじゃリクオの命が危ねぇ…
嫌な考えが頭に過ぎり、背筋が凍る。それでも治癒をがむしゃらにしていれば、目の前に誰かが来た。
「奴良鯉伴…
この子は…妾が半妖の里につれてゆく」
「羽衣狐!? おま…何で半妖の里のこと…
!! そうか…親父がアンタを復活させたのか!」
誰が羽衣狐を復活させたのか気になっていたが…
ようやく分かった。半妖の里の場所を知ってるのは若菜と親父しかいねぇ…。晴明戦の始まる前から、親父が度々姿を消していたのはこういうことだったのだ。
一人納得するオレをよそに、羽衣狐がオレの目を見て言う。
「この子にもう畏などない…時は一刻も争う。
それに…姿が見当たらんということは、鯉菜に何かがあったのだろう…?」
「…お前を…信じていいんだな?」
「……もはや京妖怪だけではない。
リクオも…鯉菜も…妾の子じゃ…。」
「…お前…」
変わった…
前までは京妖怪のことですら〈部下〉や〈下僕〉としか思っていなかった羽衣狐が…今は〈我が子〉だと言っている。
…もしかすると…乙女の影響か?
「………リクオを…頼んだぜ、羽衣狐。」
そう最後に言えば、リクオを抱き上げて歩み出す羽衣狐。そして途中、振り返って辺りを一望し…
リクオに語りかける。
「リクオ…見えるか…? おぬしのうしろ…」
「…見えないけど…
戦いで感じたから…分かるよ…」
「そうか…そうだな…
おぬし…立派な百鬼夜行を作ったのう…
生きて…守れ…な」
「…ああ……」
リクオの返事を最後に…喋らなくなった二人。
そして、見えなくなるまでその後ろ姿を皆で見送る…
リクオの無事を祈りながら。
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