▽ 勝利
小妖怪達に怪我がないのを確認した後ー
「そっ…総大将……!!」
バアンと大きな音を立てて開かれた戸…
そこには先程倒れたおじいちゃんが立っていた。
「何やっとんじゃいてめーら!!
ワシがいないだけで屋敷をこんなボロボロにしやがって…リクオたちが帰った時に合わす顔がないぞい!!」
「親父…!」
「は、はいっ!!」
戸を開けていつもの元気そうな姿で叫ぶおじいちゃんに、お父さんがホッとするのが見て取れる。私も勿論ホッとしている。…良かった、おじいちゃんが無事で。
だが、その安心も次の瞬間消え去った。
「だいたい…鯉伴と鯉菜は何をしとったんじゃい!!
オメェらそれでも二代目と三代目補佐か!?
しゃんとせんかい、この馬鹿息子と阿呆孫娘!!」
最もな事なので、私もお父さんもその言葉に何も返さないが…だが思うことは一緒。
『(勝手に暴れて倒れて…)』
「(何があったか知らねぇくせに…!!)」
そんな私達をいち早く察した鴆が、「落ち着け」と冷や汗を流して言うが…もう遅い。
『…鴆…怪我人の応急処置を頼んだわよ』
「あ、あぁ…」
チラッと部屋の中を見れば、怪我人が結構たまっていたため…鴆に手当を頼む。そして、頷いて怪我人の元へ向かう鴆を確認し…今度は隣にいるお父さんを見上げた。
「…鯉菜、」
『…お父さん、』
「『残党狩りだぁぁああああ!!!!』」
頭に怒りマークを浮かばせて、鬼妖怪へ突っ込む私とお父さん。丁寧さも優雅さも何もないが、バッタバッタと周りの敵をなぎ倒していく。
ハッキリ言って、ただの八つ当たりだ。
そして、鬱憤を晴らすかのように敵を一掃していればー
『!! リクオ…』
「…あの羽衣狐を…鬼纏ったのか…!」
視界に入った百目の映像。
それには…ちょうどリクオが羽衣狐を畏襲した姿が映っていた。
もう直ぐだ、もう直ぐリクオが晴明を倒す!!
だが同時に…晴明が天文操作で重力を操っているのだろう。身体に押し潰されるような感覚が襲い、一部崩壊し始める建物。家の中からは清十字団の悲鳴が聴こえ、奴良組の者達も動きが鈍る。
「なんだっ…!? 何が起こって…」
「か、身体が…重たい!!」
「ひるむんじゃねぇ奴良組!!
大将のつむぎ出した力…自分達の畏を信じろ!!」
おじいちゃんの言葉に再び勢いを取り戻す皆。
そして遂に…
鬼童丸や茨木童子率いる鬼妖怪らを全て倒し、重苦しかった重力も消えた。
『…葵城が…消えた』
「リクオのやつ…晴明を倒したんだな…」
空中に浮かんでいた葵城が消えて、空が晴れ渡る。
「オレ達もいこーぜ!!リクオ様のもとへ!!」
「おーい!! みんな乗れ乗れー!!」
やってきた宝船に、皆ボロボロの姿で意気揚々と船に乗る。おじいちゃんや牛鬼、木魚達磨達に次いでお父さんも乗ろうとするが…
「? 何してんだ、置いてくぞ。」
『…私は…ここでリクオが帰ってくるの待っとくよ…。お父さんは行ってあげて、父親なんだから!』
足を止めるお父さんの背を押し、無理矢理宝船に乗せる。
「あっ、おい! 鯉菜!!」
そんな私に慌てて声を掛けるお父さん。
その声を聴こえないフリして家の中へと向かう。
ー 向かう先は、清十字団と眠っている先生がいる部屋…
(『羽衣狐もお父さんもいるし…誰かがリクオを半妖の里に連れてってくれるよね、きっと。』)
(「…鯉菜のやつ、どうしたんだ…?」)
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