この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ お嬢様二代目の娘様ぬらりひょんの孫娘様!

「坂本はもう死んでいるのだよ。」 


泰具から出たその言葉…
確かにコイツの言う事は的を得ている。
だがー


『証拠は?』

「…証拠?
貴様の兄があの体に入っている事が既に証拠であろう」

『いいや、それだけじゃまだ…
先生が生きている可能性は消えないね!』


握りしめた刀を泰具に振りかざせば、何かに跳ね返される感触。…刀ではない。黒田坊とよく稽古するが…鉄の武器でもない。なんだこりゃ。
不思議な感覚に相手を見れば、


『…薔薇の鞭…』


棘が沢山ある薔薇の鞭を構える泰具。
…なんというか…非常に残念だ。
女の子やイケメンが持ってたら、可愛いしカッコ良いだろうけど…仮面を被ってて雰囲気的にブサ面なコイツが持つと非常に気持ち悪い。
そんなことを思っていれば、雪麗さんの叫びが耳に入る。何事だと慌てて振り返るとー


「あ…ちょ!! あんのバッカ!!」

「雪女…初代は何を…!!」

「本気で今度こそ死んじまうよ!!」

「!? お…大蛇が…二匹いっぺんにだと!?
な…なんだお前は…!! 」


そこには…
若かりし頃のぬらりひょんの姿をし、大蛇を二匹いっぺんに倒したおじいちゃんがいた。


「ごぞんじ 魑魅魍魎の主ぬらりひょん様じゃ」


リクオにそっくりだ…
いや、リクオがおじいちゃんに似たんだけどね。
突如若返ったおじいちゃんの姿に、牛鬼や一ッ目、お父さんまで吃驚している。ちなみに、お父さんはお母さんや清十字団の保護にまわっております。


「自分でもワクワクするのう。
さて、どんだけもつか…」


顎に手をやり、ニィと笑う姿はとても様になってる。
でもね…


「おぬし、なかなかいい女じゃの…
ん? まぁ珱姫にゃ劣るが。」


敵の女を口説く暇があるなら倒せよな。
だが、おじいちゃんのこの若返りに奴良組の士気が上がったのは事実で…「初代に続け!!」「奴良組、盛り上がれ!!」と、一気に勢いが出てくる。
そんな様子をみせつけられちゃあ、


『こっちも負けてらんないわね…
明鏡止水…〈桜刀〉!』


刀が燃えているのを想像しながら、刀身を2本の指でなぞる。泰具の武器を見て閃いたのだ。植物そのものが泰具の武器なら…私のこの刀が燃えてたら楽に倒せそうだよね、と。それで実際に駄目元でやってみれば、幸運な事に…見事に成功した。
これぞ妖怪クオリティ!!


「…ふん、そんなもので吾輩に勝てると思うてか」

『やってみる価値はあると思うけど?』


お互い武器を握り締め、地を蹴る。
互いに攻撃して、相手の攻撃を防ぎ…時には躱し…、
暫くの間どっちつかずな戦いが続いたのだがー


「…くっ! ぬぅ…っ!!」

『…いくら植物を再生できるとはいえ、それが間に合わなけりゃあ意味はないわね』


鞭も所々滅びてきたうえ、邪魔してくる周りの大きな蔓も再生が遅い。
…もう少しでコイツを倒せそうだが…余りに拍子抜けで却って嫌な予感がする。まさかワザと…やられているのか?
優勢に立っているものの、なんとなく疑わしくて考え込んでしまう。
そして、命のやりとりの時に考え事をするのは…
命取りになりやすくー


「!? 何だこの大蛇…!」

「急に向きを変えたぞ!!」

「おい! そっち行…、鯉菜様!!」

「お嬢!! そっちに大蛇がー!!」


急にワーワーと私を呼んで騒ぐ妖怪たち。
一体何なんだと振り返れば…時既に遅し、目の前には大きく口を開けた大蛇がいた。

そしてー


バクッ


『…あり?』

「えええええええーー!?!?」

「鯉菜さまーーーーー!!」

「お嬢が大蛇に食べられたぞ!?」


アッサリ大蛇に食べられました☆
まだ蛇の口の中に居るため…外の声が少ししか聴こえないが、皆が騒いでいるのが分かる。
…うん、早くこっから出よう。心配してるかもしれん。


『つぅか私を食べるとかいい度胸してんじゃん、蛇の分際で。』


え? 何様のつもりだって?
お嬢様二代目の娘様ぬらりひょんの孫娘様だ!!


『私を食べた事を後悔しやがれ!』


飲み込まれないように注意しながら喉元へ行き、そこで円を描くように刀で斬る。


「!! おい、あの蛇急に首が取れたぞ!?」

「ありゃあお嬢を食べたやつじゃねぇか!!」

「てことはァ…お嬢がやったのか!?」

「鯉菜様も蛇倒したぞー! やるぅー!!」


わぁ、蛇の切断面が見えるーなんて悠長に独り呟きながら外に出る。首を切断したからか、体の方もバタンと倒れる大蛇…食べられたけど大蛇を一匹倒せたなら結果オーライだ。つぅか血がベトベト!!


「いやったーまた倒したぞー!!」

「牛鬼一ッ目すっげー!!」


応援係(非戦闘員)の言葉に、辺りを見渡せば…


『牛鬼かっけぇー…』


なんと、二刀流で蛇を倒したじゃあありませんか!!
一ッ目は…見つかりませんでした!!


『…これで大蛇は全部倒したのか…』


…それにしても、今更だが大蛇に食べられたせいで泰具と離れてしまったじゃないか。しかも場所を変えたのか…どこにいるのか見当たらない。
何を企んでいるんだ…あの吾輩野郎は。

そんなことを考えていれば、ぬらりひょんと御門院雄呂血が言葉を交わす。


「不思議じゃのう…戦力では負ける筈ないのに」

「そりゃー百鬼夜行戦じゃからな。
大将の力が百鬼の力になる」


そう言いながらおじいちゃんが見る先には、百目の目玉が映し出す映像。そこに映し出されていたのは、刀を構えて横に並ぶリクオと羽衣狐。二人の後ろには土蜘蛛とイタクもいる。そして向かう相手は、沢山の鬼を引き連れた安倍晴明だ。
…どうやらリクオと羽衣狐が共闘して晴明と戦うようだ。


「ホホホ…まるで自分が当然、妾より上だと言いたげだね…。だが忘れないでもらおうか…この雄呂血がこの世で最も偉大なる〈式神使い〉だということを…!!
最後の…奥義だ…!!古代大魚悪樓!!」


そう言って、大きく醜い大魚へと変貌する雄呂血。
まだこんな技があるのかと皆が驚く一方…


「牛鬼! 雪麗! 一ッ目! 邪魔すんな!!
こいつァワシの…えものじゃああ!!」


何十倍…いや、何百倍もあるデカイ大魚に飛び込むおじいちゃん。そしてそれをたったのひと振りで倒す。


「こんなもんワシ一人で十分じゃい!!」

「お…の…れ…」


悪樓の姿が消え…ボロボロと消えてゆく雄呂血。
圧倒的な力の差に、正に開いた口が塞がらない。


『…凄い…』


つい言葉がポロりと口から出るほど…いとも簡単にそれをやっつけてしまった。最終奥義ということは、大蛇よりも強い筈なのに…あっという間に悪樓をやっつけたおじいちゃんに感嘆せざるを得ない。


『…ハハッ、敵じゃなくてよかったわ…』





(『…うわ、鳥肌立ってる…』)




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