この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 戦いは始まったばかり

「お前に先生の姿をしたオレを殺れるのか?」


憎たらしい笑みを浮かべ、刀を片手に降りてくる兄。
正直…先生を助けられる算段はついてない。
だからと言って、諦めるつもりもない。
まずは、プランAの一か八かだ!


『滅!!』


ゆらに貰った護符を兄の額に貼り付け、ゆらの言っていた通りに言葉を発する。
ゆら曰く、護符が兄に反応すれば先生から出ていくとのこと…だが逆に効かなければー


「…ハッ! ただの紙くずかよ」


何も起こらず、ただの紙で終わるとのこと。
…失敗か。
ならば、プランB!! 先生にひたすら話し掛ける!!


『…先生! 目ェ覚まして下さい!!』

「無駄だぜ? そんな事したって…」

『目ェ覚ましたらっ、先生の言う事を一つだけ…
何っっっでも聞きます!!』

「グッ!……ほ、本当か!? 奴良!!」

『!! さ…坂本先生っ!?』

「な〜んちて☆
諦めろって。この体はもうオレの物になったんだよ」


うっぜェェエエ!!
昔からこのクソ兄演技が上手いの知ってたけど…
クソうぜぇぇえ!!
両方のプランが駄目になったところで、早速だがもうネタ切れです。あとは花開院や秀元に見てもらい、何か良い案がないか模索してもらうしか手はない。


『!! …邪魔くさい蔓だな…』


襲ってくる兄の攻撃を躱し、どうしたもんかと考えていれば、泰具の出した大きな蔓に攻撃されそうになる。
兄は人間である為戦うぶんには何も問題はない。攻撃も簡単に躱すことができるし、先生のことを諦めれば倒す事も簡単だ。問題はそうー泰具だ。


「おぅ鯉菜、元気そうじゃなー!」

『おじいちゃん…』

「お前らしくないのう〜躱すばっかで全く攻撃を仕掛けてないじゃろうが、つまらん!」


突如、大蛇を相手しながらコチラにそう叫ぶおじいちゃん。いやいやいや、つまらん!って言われてもねぇ…?


「そいつぁ確かワケありの兄じゃったなぁ?
どうするつもりなんじゃ」

『兄だけ滅して先生の身体を取り戻したい』

「じゃあ早くそうせんか!」

『方法が何も分かんないんだよ!』

「じゃったらそんな鼻くそ小僧無視して…
先に大蛇と蔓を片付けんかいこの馬鹿孫め!!」


…おぉ…それもそうだ。
兄と先生をなんとかしないとって頭の中にずっとあったから、その考えが完璧に消えていた。


「このアンポンタンが!!」

『言い過ぎだぞこの老いぼれ爺!!』


変顔して「阿呆う〜!」とか言う暇があるなら蛇倒せよ、あの爺!! 地味にイラッと来る!!


『でもやっぱり…
歳食った人の言う事はよく聴くべきよね…!!』

「…ぇっ…鯉菜ちゃん!?…珱姫ぇえ!?」


大蛇と蔓を散らすのなら、やはりここは攻撃力が1番強い攻めの畏でしょう! そう思って珱姫そっくりな攻めの畏姿になったのだが…1分も立たずに後悔。


『せ、雪麗さん…寒いですよ!?』


冷気が…冷気が私に直進してくるぅぅう!!
ジーッと睨まれてるだけなのに寒いです!!


「あなた…珱姫にそっくりなだけで鯉菜ちゃんなのよね?」

『そ、そうです…』

「………そうよね、あの娘はもういないもの…
全く! 急にフラッと現れたかと思いきやあのバカを横取りしてって!! いつか会ったら凍らせてやるわ!!」


そう悪態つく雪麗さんだが、目には薄らと涙が浮かんでいる。何だかんだ言ってやっぱり珱姫は愛されてんなぁー…なんてクスッと笑えば、雪麗さんから何笑ってんのよ!!…と氷が飛んできた。
すいません、その氷を是非とも大蛇に投げてくれませんか。


『取り敢えず…まずはこの太い蔓を狩りますかねぇ…
ねぇ納豆ちゃん。悪いんだけどそこのバカ兄貴を足止めしといてくれる?』

「ガッテンです!! おいオメーら!!
お嬢から任務が与えられたぞー!!」

「この不届き者を足止めすりゃあいいんだな!?」

「お嬢の担任に取り憑いてるとはいえ…所詮人間だ!!」

「どうする破壊蛙!?」

「破壊じゃ」

『破壊はしちゃダメー!!
動けないように足止めするだけでいいから!!』


意気揚々と兄に納豆やら石粒を投げる小妖怪達…
有り難いけどイジメみたいだな!
それを鬱陶しそうに「邪魔するな!たたっ斬るぞ!!」と刀を振り回す兄だが、残念…
そいつら避ける&逃げるプロだから!!
小さい体を利用してちょこまかと逃げ回るからな、お前にその子達を倒すのは無理だ!!


そんなこんなで…
小妖怪達vs兄の可愛らしい攻防を横目に、次々と蔓や鬼を明鏡止水〈斬〉で倒していく。
やっぱ蔓は植物だからよく燃える。あともう少しで蔓は全滅だ…なんて思っていれば、


「〈恵みの雨〉」


泰具の声と共に、パラパラと降り出す雨。
その雨に火も弱まり…斬った筈の蔓も再び伸び始める。


「言っただろう。吾輩は木と水を操ると…
水は火を消し、木に生命を与える。
貴様が蔓をいくら倒そうと…
雨が降り続ける限り何度でも再生する。」


周りを見れば、またもや元気に動き出した蔓に押され気味な奴良組。しかも雨のせいで土はぬかるみ、服は水を吸って重くなる…
思ってた以上に押されている奴良組の様子に、冷や汗が出た。リクオが晴明を倒しても、ここが潰されたら意味がない…


『…何度でも蔓が甦るなら…
根本のアンタを先にやればいいだけの話よ、泰具。』


雨で滑りそうになりながらも大蛇の背を走り、泰具の元へと駆け抜ける。ようやくたどり着けば、ゆっくりとこちらを振り返り…泰具が口を開いた。


「…何故貴様の兄を殺さない。
貴様なら簡単に殺れるだろう?」

『……そうね。兄は簡単に殺せるけど…
世話焼きな恩人まで殺すつもりはないわ。』

「坂本…という者か。
憐れな奴だな…もう助けることは不可能だというのに、まだ助けるつもりでおるとは。」

『助けることは不可能…ねぇ。
どうしてそう言えるのかしら?』


泰具の言葉にそう返したものの、私の直感がさっきから〈聴くな〉と警報を鳴らしている。
だが、ドクンドクンと速鳴る心臓に気付いてないフリをし…泰具の答えを待つ。
すると、返ってきたのは1番恐れていたものだった。


「一つの体に魂は一つ。
貴様の担任教師…坂本の魂はもう消えている。
つまり、
坂本はもう死んでいるのだよ。」





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