▽ ようこそ奴良組へ
『…目ェ腫れてる…ヤだな』
お父さんとお母さんに見送られ、庭に向かっている途中なのだが…
散々泣いた為、私はおそらく酷い顔をしてるだろう。この顔を皆の前に晒すと思うと…足取りが少し重くなる。
「あ、お嬢が来やしたぜ! 若!!」
「おい姉貴、いつまで待た………
デメキンみてぇに目が腫れてっぞ」
『デメキ…!? …例えがあんまりだろ…』
「そ、そうですよリクオ様!
鯉菜様だって女の子なんですから言葉を選んで下さい!! お嬢、氷出しますのでこれで冷やして下さいね!!」
『…デカイ…デカイよ氷麗…』
氷麗に手渡された氷は1メートルサイズの立方体。1メートルだぞ。1メートルの立方体って…何処を冷やそうとしてるの氷麗ちゃん。
私は目だけで充分なのよ?
そんなこんなで…グダグダな流れが多々あったものの、遂に出撃の準備が始まる。
「いよいよ決戦だ! 奴良組以下賛同する妖よ、
総攻撃の時が来た!!
子の刻に葵城の寅の方角に向かう!!
準備はいいか!?」
「「「おおおおおおおおーーー!!!!」」」
各自武器を天に掲げ、気合を入れていれば…
「リクオ様! 空を!!」
「な…アレは!?」
「こっちに向かってきてるぞー!!」
空から奴良組本家に向かって来る大量の妖怪および6本の大蛇。家を喰う蛇に、慌てて中に居た清十字団とお母さん・お父さんが出てくる。青や黒達と共に皆の安全を確保するや否や…
「久しぶりだな…ぬらりひょんの孫よ」
私とリクオの前に現れたのは茨木童子と鬼童丸。
この2人が来たということは…晴明が復活したという事だ。
「この時を…待っていたぞ」
「親父は母さんを頼む!!」
『猩影もお父さんの側にいて!!』
襲いかかる2人に…
茨木童子はリクオが、鬼童丸は私が相手をする。
いつもだったら氷麗や黒達が直ぐに来るのだが…いかんせん…清十字団の保護もある上、大蛇が邪魔している。
突然の奇襲に騒ぎ立てる奴良組…
だが、
「情けないわね…それでも私の娘なの?」
「フフ…相変わらずじゃのう雪麗。怖い女じゃ」
大蛇を一瞬にして凍らす程の冷気、次いで懐かしい畏の気配を感じる。
アレは…
「お…お母様…!」
「氷麗、初代のお帰りよ…
まずそちらに挨拶なさいな」
氷麗の母・雪麗さんだ!! めっちゃ美人!!
そして
「よぉ皆、待たせたな…」
「しょだい…?」
「しょ…しょだいだぁ…」
「総大将が!! 帰ってきたぁぁぁあ!!!!」
おじいちゃんだ。
雪麗さん以外にも昔の戦友がたくさんいる…かっけぇ! そして言わずもがな、突如現れたおじいちゃんに一ッ目や牛鬼の士気が上がる。
『…やっぱスゲェな、おじい…
!? …あっぶね!』
「…余所見とはいい度胸だな、娘。」
あちゃーどうやら鬼童丸を怒らした模様である。
怒っちゃいやーん!
…だなんて口には決して出せないけど、内心そんな事思いながら相手しておれば、首無と毛倡妓が2人を足止めしてくれる。
「リクオ様! 鯉菜様!!」
「そいつらの相手は私達にお任せを!!」
「ありがてぇ!」
『気を付けてね!!』
結局頼もしい2人に茨木童子と鬼童丸の相手を任せ、リクオと共にその場を離れたのだが…
その時ー
「な、何だ何だー!?」
「地面から変なのが生えてきたぞー!!」
ボコボコとあらゆる所から生えてくる太い蔓。しかも大きな棘が沢山ついていて、当たったら大怪我をしそうである。
「くそっ…あいつ大蛇だけじゃなくこんな事もできんのかよ!!」
そう言うリクオに、ふと違和感を感じる。
原作であの女は…こんな技を使っていなかった筈だ。
となるとこれはきっとー
「久しぶりだな…奴良鯉菜」
『…やっぱりアンタか、我輩野郎…!』
太い蔓に乗る御門院泰具、そしてその隣にはやはり先生の姿をした兄がいた。
「うっわーお家ボロボロじゃん! 可哀想〜」
『…本当、カンに障るクソ兄貴だね…』
ケラケラと笑う兄を睨みつけていれば、姉貴…とリクオが心配そうに話しかけてくる。
…どうやらここまでのようだ。
『リクオ、悪いけど私はあのバカと決着つけなくちゃならないから…一緒に晴明のところまで行けないわ』
本当はゆらのロン毛も見たかったし、リクオが晴明を倒すところを近くで見たかったのだが…仕方がない。
「…それはいいが…姉貴は大丈夫なのか」
『…心配すんなって!
そりゃリクオほど強くはないかもしれないけどさ…
姉ちゃんだって戦えるんだから!!
それに言ったでしょ?
三代目補佐として、リクオが安心して戦えるよう家にいる家族を護るって!』
そう笑って言えば、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をするリクオ。…もしかして覚えてないのか!?
「…あぁ、そうだったな。
それに…約束だけは守る…
それが姉貴の取り柄だもんな!」
『否定はしないけど、それしか取り柄がないみたいな言い方やめてくれない!?』
ちょっとグダグダだが…最後にお互いお父さん譲りの笑みを浮かべ、背を向ける。これからリクオの戦いを見ることは出来ないが…
私はまず自分が蒔いた種を、自分でちゃんと刈り取ろう。
『…さてと、ちゃちゃっと片付けましょうかね!』
(「(姉貴…死ぬなよ!)」)
(『(リクオと羽衣狐の共闘シーン見たかったなぁー…)』)
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