この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 天照大神

「全国の妖怪…そして奴良組の面々よ、聴け!」


到着した宝船に乗るリクオと玉章、獺祭。
他の妖怪が乗るかどうかを決めかねてる中、甲板からリクオが指示を出し始める。


「清浄は1箇所で起こるとは限らない!
青、黒、首無、河童、毛倡妓…お前達は各組に同行し清浄に備えろ!
鴆、牛鬼、達磨は連合本部を本家に設置! 他の可能性や時間差攻撃に備え、その他武闘派は待機!
氷麗は…母さんを頼む。そして奴良組の帰る場所になれ…」

「私が…帰る場所に…?」


最後の言葉に氷麗が聞き返せば…頼むぜ、と返すリクオ。
うん…氷麗や若菜さんが待ってると思うと、飛んで帰りたくなる。2人がいる家を想像し、1人静かに納得していれば…


『………なに?』


リクオと目が合うも、何故かただジーッと見られる。無言でそんなに見つめられても困るわ…
結局、アタシが我慢出来ずに問えば、何故かリクオは鯉伴の方に目を逸らしー


「…親父。
親父は…姉貴を頼むぜ?
いい加減、三代目補佐としてしっかり働いてくれにゃあ困るからなぁ」

「! ククッ…
違いねぇ! うちの天照大神もそろそろ出てくれなきゃなぁ…太陽がねぇから皆も元気がねぇ!!」

『…彼女を天岩戸から出すことはできないけど、天岩戸へ鯉伴を案内することはできるわよ』


そんな会話をしていれば、他方の妖怪が大きな声で騒ぎ出す。


「ま、待たんか小僧!!」

「勝手なことを…ウチのシマはウチで守るわい!」

「まぁよい…そのかわり、うちから〈百目〉を使ってもらおう。おい。」

「へい!」


〈百目〉と呼ばれたその妖怪は、粘土のような体に目玉がビッシリと埋まっており…
そしてー


「うわ!!」

「すげぇ勢いで目玉が飛んでったぞー!!」

『…キモッ……(ボソッ)』


一斉に飛び出す大量の目玉。飛び出た所は蓮の実のようで、ポッカリと黒い穴が空いている。
…気色悪いけど、観てるとクセになる…。


「こいつの目が見たものは他の目で見ることができる。情報を共有しよう。これでうちは貸し借りなしじゃ…」

「うわっ、映った…!」

「すげぇ!! けどキモッ!!」


宙に浮く目玉が壁に映し出したものは…宝船に乗ったリクオ達。目玉に気を取られて気が付かなかったが、どうやらいつの間にか出発していたようで…周りの風景は空一色である。


「よし!! いくぞてめぇら!!」

「各々が大将だ、緊張してしくじるなよ…!!」

「そーだぞ猩影」

「オレっすか!?」


青や黒達…先ほどリクオに指示された者達が出撃する中、


「み…みんなー!! 戻ってきてよ!!
本家で…待ってるからーーーーー!!」


それを見送る氷麗や鴆。
各自が各々の仕事に取り掛かり始め、奴良組本家が騒がしくなる。



「ーんで? どうやったらオレは天照大神に会えるんだい?」


こちらをチラッと見て問いかける鯉伴に、黙ってついて来るように告げる。向かう先はアタシの部屋。
部屋に入り、次いで鯉伴も部屋に入ったことを確認して…ゆっくりと口を開く。


『…出来るかどうかは正直分からない。でも、可能性があるならそれに賭けようと思う。』


徐々に早鳴る心臓に、思いのほか自分が緊張しているのだと気付く。


「…その方法ってのは?」
  

初めてだから、正直上手くできる気がしない。
でも、成功したらきっと…


『…鬼纏わせて貰うよ、奴良鯉伴』

「ーは? え、ちょっ…待っ…!」


鯉伴の言葉を無視し、畏を衣のように羽織るイメージをする。
…あぁ、これが〈鬼纏〉か。
背に畏が乗るような感覚がしたかと思いきや、内になにかがストンと収まったような心地がした。


『…天照大神…か。』


原作で鯉伴が黒田坊を鬼纏った時、黒は人間の鯉伴と確か対話をした筈…
なら、きっと鯉伴も〈昼〉のアタシに会うことが出来る筈だ。
後はー


『鯉伴が…天照大神を外に出せるかどうかの問題だなぁ…』




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