▽ 表裏一体(鯉伴side)
『…ぶっ壊しても復活してくるとか…まじダリぃわ』
「そう言うなよ…
それに、壊してダメなら灰にすりゃぁいいだろ?
…ってことで、明鏡止水〈桜〉!!」
リクオが男を追って去った後…
氷麗は氷麗組のお涼ちゃん達と、イタクは紫ちゃんと、竜二は竜二で各自屍の殲滅を頑張っているのだが…
『なしてついてくるん、鯉さん』
「お前さんとオレとの仲だろ?」
いつもオレがお前さんを護衛して、お前さんはオレを護衛してるじゃねぇかい。そう答えれば、オレの顔をじっと見て『青ピクミン…?』と首を傾げる鯉菜。可愛い…眠そうにしているから尚可愛い!! だが、何が青ピクミンなんだ!?
『いや待て…火を出すから赤ピクミンか?』
「何の話だ」
『働いて、戦って、家族が増えて…でも最後には死ぬ話…』
「………その話…聞かないとダメか?」
自分で聴いておきながら後悔。
何がどうなってそんな悲しいことを考えているんだお前さんは!
そんなやり取りをしていれば、先ほどオレの火でできた灰が宙に舞いだす。
『…なんか…人っぽい形になってる』
「おいおい…灰にしても復活すんのかよ…」
出来上がったのは先ほど葬ったはずの屍。どうやら何をしても復活するようである。
「…ただでさえやる気のねぇ怠け者がここにいるのに…これ以上コイツのやる気を削がねぇで欲しいんだがねぇ…」
ハァ…とため息を吐きながら隣に立つ者の顔をチラッと見れば、キョトンとした顔でオレを見あげてくるソイツ。
だが…その顔が、徐にニヤッと口角を上げる。
『…やる気を削がれる…?
バカ言うんじゃないよ鯉さん。バラしても灰にしても復活するなんて…これ程壊しがいのある敵はいないわ。
むしろ…何回でも壊したくなる…!』
そう言いながら鉄扇を取り出して構えを取る娘に、オレの頬が引き攣るのを感じる。さっきまでのやる気のなさはどこへ行った!! というか、お前のやる気スイッチは何なんだ!? 急にノリノリで暴れだしたんだけど…何この子、怖いっ!!
『…鯉伴、場所を替われ』
「? おう…いいけど、どうしたんだい?」
『別に…』
突如、オレと場所を替わるように言う鯉菜。
苦手なタイプの敵でもいたのだろうか…そう思って大人しく替わるも、特に変わったことはない。
さっきまでオレの右側にいたのに…何故急に左側に来たんだ?
そんな考え事をしていたせいか…
「グおおおおおっっ!!」
「チッ…!」
急に左側に現れた敵に遅れをとる。避けるのはもう間に合わねぇ…なら、オレに食いついて来たところを狙うか。右手の長ドスを握り、襲いかかる痛みに準備していれば…
「がぁぁっ…!!」
『後ろ、そっち来てるよ』
オレに食らいつく前に、鯉菜によって壊される屍。
一方、オレは鯉菜の言葉に慌てて後ろを向き、襲いかかってくる敵を一掃する。
…そうか。
オレの左腕が動かねぇことを考えて、コイツはオレと場所を替えたんだ。
理由を言わずにそういうことするのがまた…
「クスッ…お前さんらしいな…」
そんなこんなで…
どのくらい時間が経っただろうか。各自、終わりの見えない死霊と戦っていれば、突如大きな斬撃がそう遠くない所からやって来る。
「きゃ…」
「死霊が…散っていく!?」
「……………なんだこりゃ…」
今まで何度でも復活してきた死霊が、本格的に消されていく。
「…こりゃあ…退魔の力だな」
ついに、祢々切丸が完成し…それがリクオに届いたという事だ。退魔の力の影響だろう…暗雲が広がっていた恐山に日が差し込んでくる。
「流石リクオ!
やっぱオレの息子だねぇ〜、そう思わねぇかい?
…………鯉菜…?」
いつもだったらツッコミが来るだろうその反応がないことから、訝しげに鯉菜の方を見る。
するとそこには…
日の光に照らされながらも青白い顔色をした鯉菜がおり、そして小さな声で呟く。
『……りがった……』
「…どうした」
『〈忠告〉…したのに…っやりやがった…!』
「どういうこ…
お前っ!? もしかして胸がいてェのか!?」
胸元をギュッと握り締め…苦しそうにする鯉菜に、もしや兄貴に刺された傷が開いたのではと嫌な予感が過ぎる。だがオレの予想は外れたようで、『そうじゃない』と首を横にふる鯉菜。
「どうしたんだ…何があった!?」
体を支え、何が起こってるのかと問えば…小さな声で返される言葉。
その内容に…オレは後頭部を鈍器で殴られたような衝撃を受ける。
「…何でそんなこと…っ!」
精神世界にある…あの1本の、大きな桜の木。
アレを〈昼〉の鯉菜が傷付けたと言うー
「このままじゃ…お前ら…」
アレは…ああいう空間は、オレ達のような人間と妖怪の両方の血を持つ者には必須なものでー
「〈昼〉と〈夜〉…お前らのどちらかが…」
精神世界にある木は…あの空間を作るための鍵なのだ。その木が死ねば、あの空間も消える。
すなわち…
「どちらかが…居場所をなくして、消えるってことだぞ…!!」
〈裏〉の居場所がなくなるため、〈表〉に出ない方は必然的に消滅するのだー
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