この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ ひとりひとり

庭に出れば、拳を強く握り締めているリクオがいた。俯いているため、どんな顔をしているのかは分からない。泣いているのかもしれないし、怒っているのかもしれない。


「お嬢…」


雪女たちが助けを求めるようにこちらを見る。
いやー、ごめんよ私の可愛い弟が心配かけて。


『リクオ、学校で何があったの?』


優しく問いかければ、ポツリポツリと今日学校であったことを話してくれた。
おじいちゃんを馬鹿にされたこと…
妖怪をクラスの皆が嫌っていること…
言い返したら皆に嫌われてしまったこと…
取り敢えずあのワカメ坊主は今度絞めてやる。


『偉いねリクオ…よく頑張った。
うちの皆のことを想って、言い返したんでしょう?それは凄く勇気のいることだよ。』

「…でも、信じてくれなかった。それどころかクラスの皆の言う通り…悪い妖怪ばっかりだった。」

『まぁ、確かに総会にいた妖怪はどうしようもない奴らだったねぇ。でもさ、雪女や毛倡妓、青田坊に黒田坊も、首無も、弱小妖怪も…悪い妖怪だと思う?』

「…思わない。」

『じゃあ、昨日のニュースに出てた、元彼女を殺した人は?それとか、万引きした集団少年のことどう思う?』

「…悪い奴だと思う」

『うん、そうだね。結局はさ…
世の中に良い人と悪い人がいるのと同じで、妖怪にも良い妖怪と悪い妖怪がいるってことだよ。妖怪だから、人間だからって区別しないで?ひとりひとり皆違うんだから。』

「……うん」

『ほら、皆心配してくれてるよ?』

「雪女、みんな、ごめんなさい…」


シュンと謝るリクオに、笑顔で気にするなと励ます皆。優しいね〜、そしてリクオはシュンとしてても仔犬みたいで可愛いね〜。
え?姉馬鹿だって?何を今更言ってるんだそんなの百も承知だフハハハハ。

可愛いリクオの頭をワシャワシャしてやりながら、明日のことを考える。きっと明日はガコゼが動く日だろう…バスのトンネル事故があるかもしれない。例の時間のバスに乗るか乗るまいか…どうしようと悩むが、考えるのが途中で面倒になったのでその時の気分に任せることに決定です。

(『そうだ、リクオ。次のイタズ…嫌がらせのターゲットが決まったよ。』)
(「誰?」)
(『木魚達磨。』)




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