この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 特急列車でGo

「も〜イタクったら!
素直に電車乗ればいいのに…」


そう窓の外を覗いて言うのは氷麗…
その視線の先には、電車と並んで全力疾走するイタク。…電車と言っても、特急列車だが。


「妖怪のプライドじゃないのか…
文明の利器には屈しない的な。
お前も走ればどうだ、雪女…」


呆れた様に言う氷麗に、竜二がそう提案する。


何故こんな状況になったかと言うと…
会議の途中に乱入してきた竜二が「恐山に行くぞ」と言い出したのだ。どうやら秋房に頼んでいた祢々切丸が完成したとのこと…ただし、連絡が途切れた為にこうやって大急ぎで向かっているのだ。
特急列車に乗ってー。


「キャァァァァー!!」

「鎌を投げないでイタクー!!」

「もしかして私に怒ってるのー?うそぉ!?」


妖怪なのに電車に乗っているのが気に食わないからか…イタクが走りながらも鎌を投げ飛ばしてくる。器用だな。そして、そんなイタクにリクオは…


「イタク!! 分かってくれ!!
氷麗や父さん、姉ちゃんはともかく…ボクと竜二さんは人間なんだ…急ぐには電車が一番なの!!」


そう窓に張り付いて、熱心に説得するが…


『リクオ…周りを見てごらんなさい?
あの子、外に向かって何を変なこと言ってるのかしら…って皆思ってるわよ。』


車内であんな大声出してたら…誰だって驚きだ。一般からしたら外で並行疾走しているイタクの姿は見えないし、更に言えばこれは特急列車。普通の電車に比べて車内はシーンとしているのに…ある意味勇者だな。


「にしても…本当に速ぇな。オレが走っても追いつけれるかどうか…オレも歳だしなぁ」


顎に手をやりウンウンと頷くのは鯉伴。
アンタは走りたくないから適当に理由作ってるだけだろ…。結局イタクのみが走り、アタシ、鯉伴、リクオ、氷麗、竜二の5人が椅子にゆったりと座っている。
ちなみに鯉伴が来た理由は…「怪我が完治してない2人を放っておけるか! オレも付いて行くぜ!!」…とのこと。


「あ…日が落ちる…。」


氷麗の言葉に窓の外を見れば、確かに山に隠れていく夕日。そして、妖怪へと変化するリクオ。
そこに列車は駅にナイスタイミングで止まる…


「…行くぞ」

「え、ええ!? 本当に走るんですかー!?」


下車してイタクと共に走ると言うリクオ。一方、氷麗は嫌そうだが…リクオの頑固さに負けて共に走る事に。


「…おい、姉貴…アンタは走らねぇのか」


夜リクオにそう聞かれるが…
まさかアタシが走るとでも?


『…ふぁ………眠いからパス。』

「…そうかい、親父は?」

「オレはこいつの御守りするんで…ここに残るぜ」

「…分かった」


最終的に、走るのがリクオとイタクと氷麗…対して列車がアタシと鯉伴と竜二の3対3に、綺麗に別れる。


『…くぁ…っ……』

「…眠いンなら寝ていいぜ?」

『……ん』


とてつもなく眠い…
普段は昼のアタシに任せて、精神世界でダラダラと寝てるからかな…。あまりの眠さに我慢ができず、鯉伴の言葉に甘えて目を閉じる。

意識が落ちる前に思い出すのは…最後に昼のアタシと交わした会話。泰具や兄貴達が去った後、精神世界で会った時のことだ。


『……晴れてっと…いいなぁ…』

「ん?」


アタシの呟きに、
鯉伴が聞き取れなかったのだろう…聞き返してくるがそれを無視して眠りにつくー。



(「…一応聞くが御守りってなんだ。」)
(「あん? …可愛い娘を狼から守るのが父親の役目…ってね」)
(「けっ、誰がそんなじゃじゃ馬に手ぇ出すか」)
(「ふっ…じゃじゃ馬の良いところが分からねぇとは…お前さんもまだまだケツが青いねぇ」)
(「滅すぞ」)
(「そりゃおっかねーなぁ」)




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