▽ 情報交換
ゆら達と話した後、私はお父さん達の元へ戻り、早速情報交換することになった。
しかし…
「お嬢、二代目…
いつからここにいらっしゃるんですか?」
「あの時…お2人がいれば!
リクオ様はまだ…勝てたかもしれなかったのに…っ!!」
「まー、2人にも何か事情が合ったんじゃないの?
首無ー」
毛倡妓、首無、そして河童が口々に言う。
そして…
「おいこら首無ぃ!どういうことだ!?」
「リクオ…? リクオに何かあったのか!?」
首無の言葉に焦りをみせるお父さんと青…一方悔しそうに顔を俯かせる首無。お父さんの反応を見て、やっぱりあの場に居させなくて良かったと思う。アレじゃ絶対止めてたな…。
『お父さんも青も、首無も落ち着きなよ。
取り敢えず、こちらから報告するわよ。
こっちはね、稲荷伏見神社で私の学校の担任に会ったの。だから安全な所に先生を送ろうと思って…花開院家に向かった。ゆらちゃんならきっと保護してくれると思ってね。
そしたら青と清十字団も花開院家にいたってところね。後は見ての通りよ。』
私の説明に毛倡妓と河童は納得する。先生がいたなら仕方ないですねー、無事で良かったですー、と言ってくれる。
逆に首無は納得しきれてない様子だ。
『んで。そっちはどうしたの?』
その言葉に苦虫を潰した様に答える首無。
「…土蜘蛛に会いました。百鬼はバラバラにされ、リクオ様が集中的に狙われてしまい…お守りすることがっできませんでした…」
「…リクオはどーしたんだ」
「リクオ様は…牛鬼に連れて行かれました。
鍛えるとのことで…。」
なんとも言えない雰囲気に包まれる。お父さんは難しい顔をしており、首無たちはリクオを守れなかったことに対して罪悪感を感じてる。青は青で、怒っているようだ。
『…あのさ、今さらあーだこーだ言ったって仕方ないでしょ。それに、奴良組大好きな牛鬼が自ら鍛えるって言ってんだから大丈夫よ。リクオも心配しなくても大丈夫。お婆ちゃんの遺伝を引き継いで、あの子傷の治りが早いから。きっと今頃牛鬼と元気にドンパチやってんよ。
それよりアンタらはそんな腑抜けた顔でリクオに会うつもり? 鬱陶しくて仕方がないわ。』
「おい…言い過ぎだろ…鯉菜」
私にはみんなの気持ちが分からない。
先を知ってるから、先を知らない皆の気持ちを想像はできても…理解することはできない。
でも先を知ってるからこそ、分かることもある。
『今回リクオが負けたのは、あんた達が弱いからじゃない。リクオがまだ弱いからよ。まだ三代目を継ぐって覚悟決めて3カ月くらいだから…弱いのは当たり前。でも大将が弱ければ、百鬼も弱くなるのは事実…。
だから牛鬼がリクオを鍛えに来たんでしょ。
だいたい…リクオを守れなかったって言うけど、別にリクオが死んだわけじゃないんだし。今度は守れるようになればいいじゃない。』
「…お嬢…」
『そもそも守るって言うのも私は個人的に違和感感じるけどな…』
そう言えば、どういうことだと目で聞いてくる首無。
『百鬼ってのはさ、大将を守る為のガーディアンじゃなくて、一緒に戦うための仲間っしょ。
…まぁ、今のリクオは確かに守ってやらないと心許ないけどさ。』
…何で皆ポカンとしてんの。
私が予想外にも良い事を言ったからポカンとしてるのか…それとも常識外れな馬鹿な事を言ったからポカンとしてるのか…分からないんですけど!!
『………と、取り敢えず、毛倡妓!
傷の手当しよう!!
さっきからずっと気になってたんだよね!!』
「えっ…あ、ありがとうございます…」
『そんで、傷の手当が終わって、陰陽師達の出る準備が出たら出発しよう。』
出発という言葉に気が引き締まったのか、さっきまでの謎の空気がなくなる。
『にしても…もうすぐ、決戦だね。』
その言葉に、お父さんと首無、青の表情が暗くなる。決戦…つまりは乙女さんの姿をした羽衣狐と戦わなくちゃならないのだ。
『…見た目に惑わされないでね。
今はもう完璧に羽衣狐なんだから、油断したら…』
「大丈夫だ。」
一応釘をさしとこうと言えば、途中でお父さんに遮られる。
「大丈夫…アイツのためにも迷わねぇ。
まずは羽衣狐を倒してからだ!」
目を見る限り、悩んでいるようではない…むしろ覚悟を決めたような目をしている。
『……お願いだから、死なないでね。』
リクオを羽衣狐の攻撃から庇ったり、晴明から乙女さんを守ろうとしたりして…死ぬのではないかと不安が拭えない。だが私のそんな不安を見透かしたように、お父さんは私の頭を撫でる。
「言ったろ?
オレは…お前やリクオ、若菜を置いていくような真似はしねぇって。
約束したの、もう忘れたのかい?」
ニヤッと言うお父さんに出発前の事を思い出す。
そうだ…そういえば約束したんだった。
あの時は乙女さんの元へ行く事が不安だったけど、今は死んでしまわない事が不安だ。
『…忘れるわけないじゃない。
約束破ったら一生私にこき使わられるのよね。』
「待て。前ボコボコにするっつってたよな?
罰が悪化してんじゃねーか。」
こんなやり取りがずっと出来たらいいと願いながら、いつでも出発できる準備をする。
「鯉菜…お前も死ぬなよ」
『勝手に死亡フラグたてないでくれる。』
次に向かう場所は相剋寺…その先には羽衣狐。
鵺、安倍晴明が産まれるまであと少し…。
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