×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

去年の定期試験で大いに役に立った過去問やらプリントやらを二宮に貸したら、その礼にと二宮が昼飯を奢ってくれた。これが太刀川だったら「ごめん風間さん!金欠だからまた今度!」と言われるのがオチである。別に太刀川に期待などしていないが、二宮の前で太刀川を引き合いに出すのは懸命なことではないと思い黙っておいた。
二宮と2人で昼食をとるのは久々だった。自然と話題は大学の話になり、ここは先輩らしく後輩の大学生活についてアドバイスをしてやろうとあれこれ話し込んでいると、ふと二宮が何かに興味を示したように視線を余所に向けた。

「……すみません風間さん。もう一人いいですか」
「ああ」

頷くと、二宮は「呼んできます」と言って立ち上がった。昼時のかなり混雑している食堂で空いている席を探すのは大変だろう。犬飼でも見つけたのかと視線だけで二宮の後ろ姿を追いかけて、辿り着いた視線の先に思わず首を傾げてしまった。





だって分かる





「すみません風間さん、お邪魔します」

二宮に連れられてやってきた山室はそう言って二宮の隣に腰を下ろした。そういえば最近二宮と山室の仲があまりよろしくないと加古から聞いていたが、二宮がわざわざ呼びに行ったところを見ると加古の勘違いだったのだろうか。

「あ、今日は唐揚げなんですね。美味しそう」

既に二宮が半分ほど平らげていた皿を見て山室が羨ましそうな顔でそう言った。山室の昼食はそれで足りるのかと聞きたくなるほど小さな弁当である。二宮も同じことを思ったのか、それともただ単に山室が自分の唐揚げを見て羨ましげな声を出したからか。仕方ないと言わんばかりに溜め息を吐くと、二宮は山室に一つ食べるかと尋ねた。

「そんなつもりで言ったんじゃ……。そもそも人の食べ物を分けてもらうほどひもじくなっ」

山室が急に押し黙った。もごもごと口を動かして突然口に入れられたそれをごくりと飲み込むと、済ました顔で食事を再開した二宮の腕を掴む。

「何で話してる途中で急に入れてくるんですか……!私の話聞いてました!?」
「食べたかったんじゃないのか?」
「そんなつもりで美味しそうって言ったんじゃないです!ていうかい、いまの……」

山室が恥ずかしそうに口元を押さえる。言い淀む山室に代わって「間接キスだな」と呟くと、山室と二宮がビシリと固まった。

「なんだ、おまえたち付き合ってたのか?」
「えっ!?……えっと、」

山室が助けを求めるように二宮に視線を向けた。が、二宮はぴくりとも動かない。山室は切羽詰まったような声で二宮の名前を呼びながら二宮の体を揺すった。

「付き合ってるんだろう。むしろ無意識とは言えあんなことをしておいて、付き合ってないと言われた方が心配する」
「…………は、あの、風間さ」

可哀想に、羞恥心からか山室は顔を真っ赤に染めて視線をさ迷わせている。二宮はやはり微動だにしないままだった。こんな二宮は初めてだと、思わず笑ってしまう。

「二宮」
「……は、い」

ようやく二宮が反応した。自分が無意識に犯した失態が今になって恥ずかしくなったのか、片手で顔を覆っている。

「大切にしろよ」
「…………はい」

普段は済ました顔か仏頂面しか見せない後輩が耳まで真っ赤にしているのは新鮮だ。この様子だと付き合い始めてまだそんなに日が経っていないのだろう。お邪魔虫は退散しようと、俺は食べ終わったトレイを持って立ち上がった。

title/twenty


[ prev / next ]