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今日は二宮さんが作戦室まで迎えに来てくれると言っていたので、私はコタツの中でぬくぬくとしながら、二宮さんのお迎えを待っていた。
最初は二宮さんから借りた文庫本を読んでいたけれど、半分ほど読み進めたところで、コタツの誘惑に逆らえなくなってしまった。文庫本に栞を挟みゴロリと横になると、本格的に睡魔に襲われる。

「おい咲菜、寝んな」

カゲの呆れたような声を聞いた。
それ以降の記憶はない。





据え膳とぼくの努力賞





咲菜と俺が揃って本部に居るときは、何かしら約束を交わすことが多い。今日は咲菜を家まで送り届けるつもりで、「任務が終わり次第迎えに行くから作戦室で待っているように」と告げていた。

「咲菜はいるか?」

約束通り影浦隊の作戦室を訪ねれば、影浦がひどく面倒臭そうな素振りで自身の背後に親指を向けた。それ以上何も言わなかったため、勝手に入れと言うことだろうと都合良く解釈する。俺が影浦隊の作戦室に足を踏み入れるのとすれ違うように、帰り支度をした影浦と絵馬が作戦室から出て行った。

作戦室に入ってすぐに、仁礼が持ち込んだというコタツで横になりスヤスヤと寝入っている咲菜を見つけた。こんなところで寝て風邪でも引くつもりか。ため息を一つ溢し、マットに膝をつく。

「起きろ」

肩のあたりを軽く揺すると、咲菜は唸るような声を上げて寝返りを打った。横向きになった拍子に顔に掛かってしまった髪を耳に掛けてやったが、咲菜が目を開く気配はない。そのまま髪を梳くように、咲菜の柔らかい髪に何度か指を通した。

「咲菜」

耳に触れたのは完全に無意識だった。そのときの自分がどんな声色で咲菜の名前を呼んだのかも、正直言ってよく分からない。人差し指で耳のふちをなぞると、咲菜の肩が小さく揺れた。薄く開かれていた唇が引き結ばれて、ん、と小さな声が漏れる。そのまま誘われるように、上半身を傾けて――ピタリと動きを止めた。

「……おまえ、起きてるだろう」

そう言って頬を軽く抓ってやると、バツが悪そうな表情を浮かべた咲菜が、ゆっくりと目を開いた。咲菜の真っ赤になった頬には気付かないフリをして、わざと髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き乱してやる。

「わ……、あ、の」
「廊下で待ってる。身支度が終わったら出てこい」

そう言い残して一人廊下に出た俺は、ため息と共に悔いるような声を吐き出した。

title/すてき


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