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「昨日見ちゃったんだけどさあ」

ニヤニヤと笑いながらそう言って私を見つめる柚宇ちゃんに、何だかとてつもなく嫌な予感がした。だって昨日って。昨日、って。

「咲菜ちゃん、二宮さんとデートしてたよね?」

投下された爆弾に顔を覆った私とは対照的に、女性陣の黄色い悲鳴が上がった。





放課後共同戦線





どうでもいいことを言うと、デートという単語は恥ずかしいので、私は二宮さんとのデートのときは「お出かけ」という言葉を使っている。なんて現実逃避をしていないと、この色めき立つ女の子たちの勢いに負けてしまいそうだった。

「デートって!?デートってどういうことなの!?二宮さんと付き合ってるの!?」
「いやっ、ちょっ…!ノーコメントでお願いします…!」
「ちょっと聞いてないわよ!?じゃあ何、鋼くんが言ってたことは本当だったわけ!?」
「ノーコメント!ノーコメントで!」
「咲菜ちゃん耳真っ赤ー」

顔を覆っていた手は無理矢理引き剥がされ、今ちゃんと加賀美ちゃんにがっちり押さえ付けられた。どうして教えてくれなかったのと口々に責める彼女たちに、こうなるから言いたくなかったんでしょうが!と叫びそうになる。

「ねえどっちから告白したの?」
「二宮さんのどんなところが好き?」
「全然イメージ湧かないんだけど二宮さんって彼氏としてどうなの?優しいの?」
「お願いだから勘弁して…」

私も含めてだけど、どうして女の子たちって恋バナ好きなんだろう。羞恥心から涙が出そうになるのを必死に堪えていると、そんな私を見て流石に不憫に思ったのか、摩子ちゃんが真面目そうな顔で「分かった、じゃあひとつだけ質問させて」と言う。

「ひ、ひとつだけなら…」

そう答えるや否や、摩子ちゃんが私の両肩をガシッと掴む。

「もうキスした?」
「きっ!?し、してない!するわけないじゃん!!」

そんな大真面目な顔して何てこと言うわけ!?と憤慨して大声を出す私とは対照的に、みんなは白けたような顔で「つまんないの」と口々に言う。

「前からずっと仲良かったからもうキスくらい済ませてると思ってた…。でもまあ、咲菜ちゃんがこんなんじゃ二宮さんも大変よね」
「だねー。でも彼女のペースに合わせられるって流石二宮さん。太刀川さんとは大違いじゃない?」

柚宇ちゃんの言葉に全員がうんうん、と頷いた。太刀川さんへの風評被害が酷すぎる。

「も、もういいでしょ…!?質問はひとつだけって約束だったもんね!」
「えー、まだ聞きたいこといっぱいあるんだけど」
「もっと咲菜ちゃんとおしゃべりしたいなー」
「私は話すこと何もないんだけど!」

そう叫んで立ち上がろうと腰を浮かす。と、後ろから誰かの手がぬっと伸びてきて私の首に巻き付いてきたので、私はそのままソファに腰を下ろした。ふわり、香水のような、いい匂いが鼻孔を擽る。

「随分盛り上がってるわね。私も入れてくれる?」
「ひっ!?」
「あ、加古さん」

さすがに年上の腕を振りほどく度胸はない。固まった私を後ろからホールドしたまま、加古さんが楽しそうに燃料を投下し始める。

「二宮くんったら、本当に山室ちゃんが高校を卒業するまでキスしないつもりかしら?見かけによらずヘタレよね」
「ええーっ、何ですかそれ!詳しく教えてください!」
「二宮くんがそう言ってたのよ?ねえ山室ちゃん?」
「その件に関しては本人から聞いたわけではないのでコメントできません…」

この後私は、通りすがりの東さんが加古さんたちを止めてくれるまで、延々と質問攻めに遭う羽目になった。

title/花洩


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