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※モブ視点(二宮の大学の同級生)です。





本当にたまーにだけど、私のバイト先に二宮くんがやって来て、ケーキを買っていくことがある。最初はクールな二宮くんが実はケーキ好きなんて意外だなと思っていたけど、いつもたくさん買っていくから個人で食べるためではなくボーダーの後輩たちへの差し入れなのかもしれない。何にせよ二宮くんはいつもケーキをたくさん注文するし、その中に必ず含まれているのがチーズケーキだった。





そんな午後、お相手はわたくしでした





チリンチリン、という来客を告げる合図と共に、二人のお客様が入ってきた。ガラスケースを拭く手を止めて「いらっしゃいませ」と頭を下げる。顔を上げたところで、そのお客様が二宮くんと、普通校の制服を着た女の子だということに気付いた。あんまり似てないけど妹さん……かな?

「わー、どれにしようかなあ」
「チーズケーキじゃないのか?」
「チーズケーキは好きですけど、いつも二宮さんが買ってきてくれるし違うのにしようかなあと」

妹さんじゃなかった。二宮さんって呼んでるしボーダーの後輩かな。なるほど、二宮くんがいつもチーズケーキを買っていくのはこの子のためか。わざわざ店に連れてくるってことは余程仲の良い後輩なんだろう。失礼にならない程度に二人を観察しながらそう思った。

「これ、これにします。季節のフルーツをたっぷり使ったフルーツタルト。……ああ、でもこっちも美味しそうですよね?名前にプレミアムって付いてるし!」
「……両方とも頼めばいいだろう」
「どっちも食べたら太ります!ただでさえ佐鳥にふくよかとか言われるのに……!」

憤慨する女の子を宥めるように二宮くんが頭を撫でた。撫でられた女の子はくすぐったそうに肩を竦めつつ、嬉しそうに頬を染めて笑う。ああ、この子二宮くんのこと好きなんだなあ。とか思ってたら、二宮くんも二宮くんで見たことがないような柔らかい表情をしていた。
……マジか。あの二宮くんが。へえ、ふぅん。
なんて思っていたら、思い切り二宮くんと目が合って気まずそうに視線を逸らされた。それから唸るように、一言。

「……今言ったやつ二つ、持ち帰りで」
「えっ」

私が畏まりましたと言う前に女の子が声を上げた。二宮くんの手を頭に乗せたまま、「太るから両方はダメって言ってるのに!」と訴える。どうしようかしらとガラスケースのドアに手を掛けて待っていると、視線を逸らしたままの二宮くんがぼそりと呟いた。

「半分やるから半分寄こせ。それでいいだろう」
「わあ、いいんですか!?」

女の子の表情がぱあっと明るくなる。何だこれ。何だこの可愛いカップル。こんなやり取りを見せられて無反応を貫けと言う方が無理な話である。私はニヤニヤしながら…失礼、にっこり笑って、二宮くんではなく彼女さんに話しかけた。

「よかったら店内で召し上がって行きませんか?二階がイートインスペースになっているんですよ」

女性に人気の内装なのできっと気に入っていただけますよ、と付け加える。彼女さんは窺うように二宮くんの顔を見上げた。食べて行きたいと顔に書いてあるのが私にでも分かる。

「…………上で食べて、行く」

苦々しくそう言った二宮くんに了承の返事を返して、私は二人に先に二階に行くように促した。
面白い二宮くんを見せてもらったお礼に、サービスでコーヒーくらい出してあげることにしよう。


title/花洩


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