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詐欺者の女神

ローの外傷を治して毛布で暖かくして寝かせた。二人の額に濡れたタオルを置いたところで、私の身体がドッと重くなった。



「…あ…こ、れ…やばいかも…」



思えばここに来てから私は医療忍術を使いっぱなしだ。それに塞がりかけていた胸の傷が再び開きだして、着ていた白の白衣には赤い血が滲んでいた。


「あー、…これ…私の悪い癖だなぁ…」



昔から目の前のことに夢中になるとつい自分のことを二の次にしてしまいがちだった。よく木の葉病院でも手術の予定入れすぎてチャクラ切れを起こしぶっ倒れたことがあったっけ。医療忍者が自己管理できなくてどうするのってシズネさんにめちゃくちゃ怒られたなぁ。あれは怖かった。


傷を治す体力もチャクラもなく、私の意識はそのまま遠くなった。




*****




─────…ぃ、ぉい、



んー、なに?そんなに耳元で叫ばないでよ



─────ぉい、おい!



もうすこし、もうすこしだけ、





「…い、おい…!イト、さん!」

「…え、あれ…ロー……?」

「!!!」



慣れてないようなたどたどしいさん付けで私の名前を呼ぶ声と身体を揺らす振動に目をうっすら開けば、目の前にはどアップのローがいた。



「イト、さん!アンタも怪我してんじゃねえか!何で言わねえんだよ!」

「あー、いやー、…なんか、アドレナリン出てたっていうか…怪我のこと忘れてたっていうか…」

「はあ!?馬鹿じゃねえのか!?しっかりしろよ、おい!」



こんな小さいのに知り合ったばかりの女のこと心配してくれるなんて、ローは優しい子だなあ。そんな事を思っていたら知らない内に顔が弛んでいたのか、こんな時に何笑ってんだよ!とローに怒られてしまった。



「ロー、身体は大丈夫?」

「おれのことより自分のことだろ!血が…!」

「患者のこと気にするのは当たり前でしょ…?ちゃんと寝れた?」

「…っ、ああ、寝たよ!寝たから!」



どうやら私が倒れてから半日ほど経っていたらしい。いつの間にか血は止まっていたけど私の身体の下は血の海。これを起きた直後のローに見せてしまったのか。それは申し訳ないことをしたなあ、ビックリしただろうに。というかこんなに血を流してまだ生きてる私の生命力、なかなか凄いと思う。


「ごめん、私のポーチ…丸薬が入ったケースがあるから…とってくれる…?」

「わ、分かった!…これか!?」


ローから手渡されたケースの中から兵糧丸と増血丸を取り出して口に含んだ。自身の生命を維持するギリギリの量しかなかったチャクラがみるみるうちに回復していく。私はあまり丸薬には頼りたくなかったんだけど緊急事態だからこれは不可抗力だ。なんとか起き上がれるところまで回復したので今度は自分の治療にとりかかった。



「…やっぱ、刺されてるよねぇ」

「?」


白いグルグルに刺された箇所はやっぱり心臓付近に存在していた。こんな急所近くを刺されたのに生き残り後遺症もないとは。意識を失う直前にこの土地に飛ばされたことといい、不可解なことばかりだ。ここは結局どこなのだろう。


「ロー、この国の名前はなんていうの?」

「国?ここはノースブルーにあるミニオン島だ」

「のーすぶるー?」

「…まさか知らないなんて言わないよな」

「いま島って言ったよね?ならここは水の国とか雷の国とか、海に近い国じゃないの?」

「水の国?かみなりのくに…?」

「「……」」



タラリ、と冷や汗が伝った。五大国を知らないなんて有り得ない。どんなに小さい隠れ里だとしても名前くらいは知っているはずだ。ローは多分物を知らない子どもじゃない。嘘をついてるとも思えなかった。


「あの、ローさん…つかぬことをお聞きしますが…」

「ああ…」

「チャクラって知ってます?」

「?」

「第三次忍界大戦は?」

「?」

「…国を守ってる存在は…忍に寄るところが大きいよね…?」

「国を守るのは軍隊と政府だろ…?」

「政府…?」

「…昨日から思ってたけど、なんでアンタ医者っていうくせにそんな戦闘員みたいな格好してるんだ?それに俺の知っている医者は…手から光なんて出ねぇ」

「え、病院に医療忍者は必須でしょ?居ないの?一人も?」

「にんじゃって…あのニンニン言うやつか…ワノ国の…?」


今度はローの額からもタラリと冷や汗が垂れた。お前なに言ってんの?と顔に大きく書いてある。ちょっと落ち着け私。そんな馬鹿な。いくら時空間忍術があるって言ったって、そんな馬鹿な。


違う文化、違う生活様式、世界の根幹ともいえる知識が噛みあわない




ここは、私が居た世界とはまるっきり違う世界だ、なんて


冗談が過ぎるよ神様




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