歪曲した楽園
「………ぅっ、…は、ぁ……」
「「!!」」
まさかの可能性に行きついてしまった衝撃から私は暫く動くことができなかった。それは目の前のローも同じで、彼は私がこことは別のどこからか来たということに気が付いているようだった。
そんな私達の硬直を解いたのは後ろから聞こえてきた微かな呻き声。ハッと二人で顔を見合わせてから急いでベッドへと走った。呻き声の主は眉を顰めて息苦しそうにしながらも、僅かに目をあけていた。
「コラさん!!ゴラざぁぁぁん!!」
「凄い、意識が回復するまで一週間はかかると思ってたのに…!」
あれだけの重症、あれだけの血を失っていながらなんという回復力だろう。まだ焦点が合わないようでボーッと宙を見ているが、それでも意識を取り戻した。知らない間に入っていた肩の力がスッと抜けていく。
「よかっ、よがっだ、コラざん…っ!おれ、おれぇ…」
「ろ、ぉ…なの、か…」
「そうだよ、おれだよ!!イトさんっ、コラさんが…っ」
「うん、ローのこともちゃんと認識できてるみたいだし…昏睡状態だったけど脳にダメージは今のところ無さそうだね」
「!あん…た、は…」
「安心してください、私はあなたの敵じゃない」
意識が朦朧としているだろうに、ここまで会話ができるなんて。コラさんの生命力の凄さを目の当たりにしながらも、まだ身体は休息を求めているはずだ。これ以上無理をさせるのは禁物。それを自分自身の身体が一番理解していたのか、簡単な幻術で眠ってもらおうと印を組む前にコラさんはまた眠りについた。
「ロー、よかったね」
「う゛ん、うんっ!」
「さあ、ローももう少し寝よう?身体はまだ辛いはずだよ」
「わか、った…」
グスグスと鼻をすするローの口元は緩んでいた。コラさんが一時でも目覚めたことに安心したのか、ローは先程よりもはやく、そして穏やかに寝息を立て始めた。きっとコラさんもこのまま順調に回復するだろうし、あとの懸念はローの病気と、
「当面の生活、ね」
この廃墟にはボロボロだが家具はあっても、水や食料が全くなかった。あったとしてもきっと衛生面的に食べられたものじゃないだろうが。しかし、回復には栄養が必須だ。人間は飲まず食わずで生きてられるようにはできていない。
「影分身、私には不向きなんだけど…」
兵糧丸で回復したチャクラで、なんとか一人分の影分身を作ることに成功した。この島にはいくつか町があるようなので、念のため変化もさせた影分身の方に食料調達を頼み、私はいつでも診れるようにこの二人に寄り添う。
さっき聞いたコラさんの声、擦れてたけど優しいテノールだったな。ローも笑顔だったし、きっとコラさんが起き上がればもっと笑ってくれるだろう。もっとコラさんと話してみたい。もっとローの笑った顔が見たい。
だから二人とも、早く元気になって
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