君一路

咲かぬところに味がある


「あれ、またいる」



ビクゥ!と肩を揺らしながら振り返る彼の行動はもはやお決まりのものだった。



「せやから、もう少し霊圧出して登ってきてくれへん?」
「だってここ私が見つけた絶好のサボり場所なんだよ?屋根の上なのにいい感じに木陰があってさ。教師にバレたら嫌じゃん」



よじ登りつつ話す彼女に手を差し出せば、ありがとうと素直に手を握ってきた。その思わぬ柔らかさに一瞬驚いて力が抜ける。彼に体重を預けていた彼女は不意の浮遊感にエッと声をあげて倒れる。ここは屋根、後ろに地面はない。



「……………っぶな、いやろ。しっかりせえ」
「どう考えても今の私悪くないよね!?」
「思わぬ重さに驚いたんや」
「はいダメー女子の禁句ー」



寸での所で平子が彼女の腰に腕を回して引き留めた。そのまま言い争いを始める彼らは今の体勢に気がついていない。


「なんで真子が女子にモテないか、今その真髄を見た」
「アホ、俺モッテモテやぞ。そりゃもー毎日毎日女の子寄ってきて敵わんわ」
「真子が女の子の間で何て言われてるか知ってる?おかっぱ出っ」
「それほんまに傷付くやつ」



本当に落ち込んだようで、天音の肩に顔を埋めてグスグスと鼻を鳴らす真子。勿論嘘泣きだと分かってはいるが、流石に少し言い過ぎたなと反省する。




「あー、他の子はそんなこと言ってるけど、私は真子の髪意外と好きだよ」
「それ褒めとんのか?複雑や」
「褒めてる褒めてる」


間近に居るのを良いとことに、天音はスッと綺麗な金髪に指を通した。見た目通りサラリと溢れる金色が眩しくて、少し目を細める。



「初めてこの場所で真子を見つけた時、私が見上げた状態だったじゃん?」
「……おん」




“あれ、太陽が二つある”って思ったんだ





「真子耳赤くない?」
「うるさいボケ黙っとれ」
「真子耳赤くない?」
「だあああ!てか何やねんこの体勢!アホか!近いねん!金取るで!胸当たっとんねん!」
「それむしろ私がお金貰うべきでしょ」
「しゃあしゃあと言いよるわこの女…!」



その次の休日、本当にお団子を奢らされている真子を拳西が目撃したとか、なんとか