自分の出せる最速の瞬歩で双極に向かう。速く、速く。気ばっかり逸って脚が縺れそうになる。やがて双極が近くなり、感じとることができた霊圧は七つだった。藍染一味と阿散井副隊長に朽木ルキア、旅禍と思われる少年、そして霊圧が小さくなってる狛村隊長。まさか、あの狛村隊長がやられたのか。
ギり、と奥歯を噛み締める。私が到着する一瞬前に、藍染を拘束する影があった。砕蜂隊長と……ああ、百年経っても彼女は何も変わらない。
次々到着する隊長達。もはや藍染達に逃げ場はないも同然だった。三人はこのまま拘束されて処罰されるだろう。しかし…
私にはどうしても、知りたいことがある
「…お主、天音か………!?」
スタン、と藍染の前に降り立つ。驚く砕蜂隊長と夜一さん。名前まで覚えてくれている夜一さんにも、本当は話したいことは沢山ある。聞きたいことも沢山ある。だけど、
「やあ、鏑木天音大鬼道長。何か言いたげな顔だね?」
ピクリ、と反応したのは夜一さんで、やめろと叫んでくる。そっか、夜一さんも知ってるんだね。あの百年前の真実を
「ひゃく、ねんまえ……隊長格八人が姿を消したのは…」
藍染の笑みが深くなる。ああ、やっぱりだ、そうなんだ、
「彼らは素晴らしい実験体だったよ」
「おいコラいつまで髪触ってんねんイタタタひっぱんなや!」
「ああそういえば、私の上司でもあった平子真子は」
「ほわっほわな顔しおって、力抜けるわ」
「君の恋人だったね」
「好きや、天音」
ドンッ!と跳ね上がった霊圧で大気が震え、大地には亀裂が走る。コイツだ、コイツだった。私の幸せを奪ったのは、仲間を奪ったのは、
真子を奪ったのは
「止せ、落ち着くのじゃ天音!」
「一体何をそんなに怒っているのかな?既に居ないものの為に意識を向けてなにになる?」
「口を閉じろ藍染!天音よいか、あやつらは…っ」
「死神としての彼らは、百年前に死んだというのに」
パチン、と何かが弾け視界が白に染まった
大好きな友人、信頼できる仲間、尊敬する先輩、親のような上司、見守ってくれる恩人
愛する人
あの日私が失ったものは、あまりにも多すぎて
「藍染…貴様を殺す…ッッ!!」
卍
解
「乱閃万華鏡」