永久迷走ーエイキュウメイソウー

 ……………
 
 ……………
 
 ……………、おかしい。
 さすがにこれだけ走っていれば、出口に辿り着いていてもおかしくないはず。
 それなのに、未だに辿り着かないというのは、一体どういうことだろうか。
 それに、先程から――
「……静か過ぎる」
 五人もの人間が走っていれば、当然足音や呼吸音が聞こえているはず。
 にもかかわらず、先程から聞こえてくるのは、己の足音と呼吸音だけ。
 僕は、全力で走っていた足の動きを緩めた。
 次第に、スピードを落としていき、止まる。
「おいっ、みんな、いないのか?」
 声をかけるが、返事は無い。
「四谷、泉!…灯屋!皿屋敷!」
 呼びかける声は、虚しくその場に響いた。周りの様子に集中しても、やはり自分以外の気配は感じられない。あたりは真っ暗で、自分の数メートル先の様子すらわからない。永遠に闇が続いているようだった。
「…………」
 何か得体の知れない恐怖を感じ、無意識に肩が強張る。
「はぐれた、か?」
 喉の奥から掠れた声が出てきた。
「……、」
 うん、大体の状況はわかった。僕がみんなとはぐれたか、みんなが僕とはぐれたか、多分そのどちらかなのだろう。――恐らく後者だ。僕はここの構造を知っているから、僕が道を間違えるはずがない。とすると、みんながパニックになりすぎて、どこかに行ってしまったのだろう。はぐれたのだとしたら、ここで待っている方が無難なのだろうけれど、それは山とかで遭難した場合の話。ここは学校だ。学校なら歩いていればいずれ外に出る。ならば、校舎内で待っているよりも、外で待っている方が、落ち合える確率は高いはずだ。
「……とりあえず、進むか」

 闇の中へ吸い込まれるように進んでいく雨月の後ろ姿を、1つの影がずっと見つめていた。
 その視線に、雨月は気付くことなく進んでいく。
 後ろ姿が完全に闇に溶け込む瞬間――


 ――――影が嗤った。




 『  まず は


       ひとり    。 』





[ 6/17 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -