凶変ーキョウヘンー

……………
……………
 田舎の交番に、5名の子供の捜索願が出されたのは、朝のことだった。
 中学生――ちょうど遊び盛りだったこともあり、家族は朝になれば帰って来るだろうと、大して心配もせず夜を過ごした。だが、いくら朝になっても帰っても来なければ、連絡もない。さすがに不安になった家族は、心当たりを訪ねたが、一向に行方がわからなかった。そのため、警察に届け出ることにしたのだ。
 初めは、ただの家出かと考えていた警察だったが、聴き込みを続けていくうちに、その5名の誰にも家出をする理由がないことが解った。
 とすると、何か事件に巻き込まれた可能性も考えられ、家出人捜索から、行方不明事件として取り扱うこととなった。その捜査には、場数を踏んできた老年の刑事の中に、一人の新人刑事が含まれていた。
 その刑事は、5名の同級生から話を聞くにつれて、ある噂に辿り着いた。その刑事は他市からの配属だったこともあり、この噂を聞いたことも噂の発端とされている事件についても知らず、ただの噂とあまり本気にせずに聞いていた。だが、この年頃の子供が噂に便乗して肝だめしをすることも十分ありうると考え、老年の刑事に、その噂の廃校を捜査することを提案した。最初は相手にしていなかった老年の刑事だったが、その刑事の真剣さとその根拠から、一度なら…と捜査を許可し、噂の廃校を捜査することとなった。
 その廃校へ踏み入った刑事たちは驚愕した。
 すっかり荒れ果てた廃校の廊下に、一人の少女が倒れ込んでいた。
 無事を確認しようと駆け寄った刑事は、少女に声を掛けることもなく、その場に立ち尽くしてしまった。
 その少女が倒れ込んでいた場所には、血の手形がべったりと付いており、少女の右足首と両肩にも、同じような血の手形がべっとりと付いていた。そして何より、刑事が駆け寄るのを躊躇ったのは、その少女が握り締めているモノのせいだった。



 少女は、右手でしっかりと、誰かの左手を握っていた。




 その後の捜査で、廃校の音楽室からは、まだ新しいと思われる大量の血液が発見された。
 その量は致死量に達していると思われたが、結局死体が発見されることはなかった。






[ 13/17 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -