畑違い


女…小柴しぐれは病に蝕まれていた

毎日病室からしかみれない街
その小さな牢ともいえる病室から
しぐれはこっそり抜け出した

勿論見つかりにくい夜に

夜の風はひんやりとしていて
昼間とはまったく違っていた

病院の服だと目立つだろう
できるだけ人気のないところへと歩を進める

着替えればよかったと思ったが、引き返すことはしなかった
そして、いつの間にか丘に辿り着いていた
真ん中に立つ一本の木の下に座る

ターミナル付近は街明かりで
綺麗に輝いていた

私はただぼんやりと夜景を眺めていた

    カサッ

突然後方から誰かの足音が聞こえ
私は勢いよくふりかえった
誰かに見つかったのかもしれなかったから

「そこで何してやがる」

現れたのは女物の着物を纏い
煙管を吹かした男

「誰…ですか?」
「…ただの通りすがりのもんだ」

少しの間をおいて彼はそう答えた

帯刀しているところをみると
幕臣か攘夷志士だろうと私は推測した

最初は怖い人だと思った
だけど度々こうして話すうちに
実はいい人なんだと思った

そのときに
高杉さんは攘夷志士だとも言っていた

でも決定的に違うところがあった
病人と攘夷志士ということ



あなたと私
同じ人間なのに
住む世界は
まるで逆



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