野末


また次の日もいつもの丘に行く

しかし今日は来なかった
…いや、今日も来なかった

何かあったのかな?

攘夷志士だから
何かと忙しいのかも…

そんなことをぼんやり考えながら
江戸の街をみつめていた

    カサッ

後方から誰かが近づいてくるのがわかる
来てくれたのだろうか

小さな期待をしながら
ゆっくり振り返る

しかしそこには高杉ではなく
見知らぬ女の人だった

「あんたが小柴しぐれっスか」

問いかけ…というより
一応確認のためといったかんじの口調だった

「はい…そうですけど…」
「晋助様から言伝っスよ」
「高杉さんから…?」
「“もうここには来れない”って言ってたっス」
「そう、ですか…」

女は用件だけを伝え
さっさと帰ろうとした

「あの…!待ってください!」
「なんスか?」

ピタリと歩くのをやめこちらを向く

「私からも、伝えてほしいことがあるんです」
「……」
「“ずっとここで待ってます”って」
「…わかったっス」

女は再び歩きはじめた



あなたは
何を思って
いなくなるのですか



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