木曜日


「来てくれたんだ。」

翌日、公園に来てみると傘を弄ぶ神威の姿があった。

「待ってると言われたら、来るしかないでしょう。
それにしても貴方、こんな所で油売っていてもいいのかしら?」

風の噂で聞いた内容を昨晩思い出した。
たしか、宇宙海賊春雨第七師団団長がその名前だった。

「知ってるんだ?」
「噂で耳にした程度だけれど。」
「知ってて今日来たなら尚更、しぐれは変わってるね。
それとも不老不死だから何ともないのかな?」
「そうね。そうかもしれないわ。」

月の民であることは分かっているのだろう。
それについては自分では触れなかった。

「それで?そんな天上人がこんな所で何をしてるのかなって、気になるんだけど?」
「色々あるのよ。貴方の言う天上人だって、分かりえない次元で苦悩してるのよ。」

実際の所、月の民は不老不死ではない。
ただ、人より少し長寿なだけだ。

自分を除いては。

月の都の繁栄の為にあらゆる事をした。
技術的にも、環境的にも、そして民のためにも。
いつしか自分が民に祭り上げられていて、何故こうなっているのか自分でも分からない。

このままずっとこうしているのも飽きてしまった。
生きる意味を探そうと思ったが、いっそ一思いに月で前例のない事をして死ねたら面白いかと思ってここに来た。

なんて、そんな事を言うわけにも行かないだろう。

「偉い人って大変なんだね。」
「貴方もそうじゃないからしら?」

そろそろ時間だわ。
今日も楽しかった。ありがとう。

「じゃ、明日もまたここで。」
「えぇ、また明日。」


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