イケメン四天王 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
今年のトレンドはタッキーといういやに派手な柄を組み合わせたコーディネートらしいが、そんなことを言われても真似のしようがないと思った。早朝のコンビニエンスストアに客はおらず、私は最近店頭に並んだファッション誌に視線を落とす。朝の6時半になろうというところだ。あと3時間半もここにいなければならないというのはかなり精神的に苦痛だか、給料の為なら仕方ない。友だちとカラオケにも行きたいし、新しいヘアアクセサリーもほしい。おしゃれなカフェの甘ったるい飲み物だって飲みたいからやるしかないのだ。

「いらっしゃいませー、」

扉が開いたことを知らせる音が店内に響く。雑誌を閉じて、レジの前。それなりに背の高い男は、あっという間にレジにやってきた。白いジャージ。同じ色の大きなエナメルバッグ。同じ高校だな、というのはすぐにわかったが、呼吸の乱れた彼の顔をちらっと見ても見覚えがないので他学年だろう。こんなに背が高くてかっこいい人はうちの学年には残念だがいない。何部だろうか。

「4点で、お会計478円です」

スポーツドリンクとおにぎりが3つ。小さな袋にそれを入れようとすると頭上で大きな音がした。彼の声だ、という判断をするのに数秒ラグがあった。

「すみません、それやっぱいいです。本当すみません」

彼のエナメルバッグはぐちゃりと荒れていた。あぁ、財布ないのか。たまにいるんだよね、そういう人。いつもならかしこまりましたって言って商品を戻すのだけれど、すごく急いでいる彼に同情したのか、はたまた同じ学校に通っているから親切にしたくなったのかは定かではないが、念のため、と提案をしてみる。

「あの、私払っておきます。行ってください」
「…え?」
「っ、その、私も、同じなんです。青城に通ってて。部活…試合、ですよね。これ、持って行ってください。私が払うんで」
「…なんで、」
「えっ、だ、だって、急いでるのにわざわざコンビニ寄るって事はこれがどうしても必要なんじゃないんですか」

こんな会話をしている場合なのだろうか、と疑問に思うが、彼は事の成り行きについていけていないようで。袋をもう一度差し出す。

「大丈夫なんで、行ってください」
「…何年?」
「え?」
「3年じゃねぇだろ。2年か?」
「はい、2年です」
「レシートだけちょうだい。わりぃ、月曜に絶対返すから。ありがとう」

彼はそう言い残すと店内から出て行った。手のひらは変な汗でびしょりと濡れている。3年生…だよな。多分。タメ口だったし。
朝から部活だなんて大変だなぁって、他人事のように思ってまたファッション誌に目をやった。あぁ、早く帰って寝たい。

2016/02/19