イケメン四天王 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
合わせて、離して、また合わせて。
なにしてるんだろ。保健室で、集会サボって岩泉さんとキスして。あまりの心地よさに小さく声が漏れると、少し強い力できゅうと抱きしめられる。熱い身体が密着して。

「嫌じゃねぇか?」
「…いやじゃないです、」
「そっか、」

言葉の数はそう多くない彼だが、なんとなく感情を読み取ることはできるようになってきた。自意識過剰かもしれないが、ちゃんと思われてるって、そうわかる。

「ごめんなさい、わがままで」
「あー、いや、こっちこそ」

なんとなく恥ずかしい空気が漂って、2人おずおずと保健室を後にする。あのままあそこにいたら、あの微睡んだ雰囲気に溺れてしまいそうだったから。肩を並べてゆっくりと廊下を歩く。ちょうど向こうも終わったようで、自分の教室へ戻る生徒たちでごちゃりとしていた。

「岩ちゃん!」
「岩泉〜、勘弁してくれや」
「おー、わりぃ」

条件反射で彼の背中に隠れる。一直線の廊下で、イケメン四天王が合流。間近で見ると余計に圧巻である。

「…岩泉何してたの」
「保健室にいた」
「誰と?」
「こいつと」

ちらり、こちらを見下ろして。急に自分に目線が集まるのがどうしても恥ずかしい。

「え…なにそれ、2人きりで?」
「まぁ、そうだけど」
「すげぇいやらしい匂いする」
「…変なこと言うのやめろや」
「いや、こっちの台詞だから。学校で何してんの」
「なっ、いや、なんもしてねーよ」

嘘下手だな、って可笑しくて。私の方がもうちょっと上手く誤魔化せそうだった。松川さんが腰を屈めてこちらをずいと覗き込む。

「よかったね、みょうじちゃん」
「、は、はい、」
「だからさ、なんでまっつんだけ仲良しなの?!」
「いや松川となまえちゃんは仲良くねぇよ。すげぇびびってんじゃん」
「そう、仲良くない。いま初めて話したわ」
「いやなんなの君たちの関係」

岩泉さんは少し考えて込んで、それからあまり迷わずに言葉を発するから。

「なまえちゃんは俺の彼女」

その場にいる全員がぽかんとしていた。というか、おそらく、私以外の3人が私よりも驚いていた。そしてまだ全校生徒がうようよとしている廊下で大きな声を出して。

「ちょっと待って!急!!」
「まぁつい最近の話だからな」
「いや、そうじゃなくてだな岩泉…なんか…もっと…こう…あったろ」
「何が」
「付き合ったのは知らなかった…」
「松川にも言ってなかったか?」

わりぃ、って全然悪くなさそうにそう言って、私をぐいと引っ張る。目の前にはなんとも表現し難い顔色の3人。

「左から松川、花巻、及川」
「ぞ、存じ上げております…2年の、みょうじなまえと申します…よ、よろしくお願いいたします」

反射的に自己紹介をすれば、どうも、と彼らもぺこりと頭を下げてくれる。恥ずかしくて呼吸の仕方さえわすれてしまいそうだった。

「岩ちゃん初カノじゃん」
「そうだっけ?」
「そうだよ、言わずもがな童貞」
「…てめぇ、おい」

黙れや、って及川さんに突っ掛かりそうになるのを他2人が止める。なんか、賑やかすぎてついていけやしないが、脳内に残る言葉が一つだけ。冗談なんじゃないかって。だってこんなにかっこいいのに、そんなわけないって、そう自分に言い聞かせる。自分が彼の初めてだったら、どんなにいいことか。キスだってあんなに慣れたようにしていた。こちらは初めてで、あれで正解なのかどうなのかすら採点できないから。

「行くぞ」
「えっ、でも、」
「ホームルーム始まるだろ。こいつらに構ってるとキリがねぇ」
「岩ちゃんの奇想天外な行動と発言のせいだよ!!」
「今日ばっかりは及川に同感だわ」
「わかる、それな。俺は全部知ってると思ってたのによ…」

彼は私の手首を引きながら廊下をずいずいと歩く。繋がっているのはほんのその部分だけなのに、じんじん熱くて、胸がとくりと弾むのがわかった。

2016/02/29