イケメン四天王 | ナノ
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自分から連絡なんて恐れ多くてできなかった。岩泉さんの連絡先を入手したはいいものの、果たしてこれはいったい…と困惑してしまう。
そりゃあ、嫌いな人間の連絡先をわざわざ聞くはずはないから、今の所嫌われてはいないとしてもだ。

じゃあ、これはいったいどんな意味なんだ。
考えてもわかるはずもなく、もやもやとした気分が募っていく。

彼から連絡は来なくて、何度も何度も自分から連絡しようと思って文章を作ってみたりもしたけれど、毎回それを送ることはできなかった。金曜日もそんな調子であっという間に過ぎていく。こんな気分のままバイトかぁ。でも、多分、岩泉さん来る…し。おそらく。

「なまえ、もう帰るのー?」
「今日バイトなんだ、ごめん」
「あー、そっか。気をつけてね」

シフトの時間よりも早めにバイト先に向かって、休憩室でメイクを直す。アイラインもグロスも新しく作り直したし、いつもは適当に下の方で一つに纏める髪も、キュッと耳の高さで纏めて、流行ってるって噂のバレッタまで付けて。

仕事中に何度時計を確認しただろうか。何時くらいにいらっしゃいますかって聞けばよかった、とひどく後悔した。18時から今まで、ずっと緊張しっぱなしで。18時なんて、岩泉さんはまだ部活中だってわかっているのに、それでも誰かが入店してくるたびに彼じゃないかなって期待して、バカみたいだった。

当たり前だが時計はコンスタントに時を進めている。間も無く22時になろうというところだ。このパターンだって随分想像した。忙しいだろうし、忘れちゃってるかもしれないって。人影はパラパラと疎らだが、そこに岩泉さんの姿はない。はぁ、と肩を落としかけた時だった。

「…あ、」
「こんばんは」

こんばんは、と言葉を繰り返す。Tシャツにパーカー、ストレートのデニムとスニーカー。予想していなかった姿なので、数秒ではあるが岩泉さんだって判断するのに時間がかかった。

彼は私にそれだけ言葉をかけると、飲み物を2本、レジに持ってくる。時計の長針はほとんど一番高いところを指していた。

「あのさ」
「はい、」
「待ってるから、」
「…はい?」

2つの商品のバーコードを読み取れば、機械がすぐに合計金額を計算する。表示されたその金額を彼に伝えるのが私の仕事なのに、そんなことをしている余裕はなかった。どきりとうるさい心臓が恥ずかしくて。

「その、…送ってくわ」
「…送って、え、いや、でも、時間遅いし」
「遅いから、送ってく。そこで待ってるから」

彼は店の出入り口を見てそう言ったが、何がなんだかわからない私はしどろもどろで。そんな私を見て彼はちょっと笑って言う。

「迷惑?」
「ちが、います。そうじゃない、んですけど」
「じゃあいいべ」

チークなんて塗らなきゃよかった。どうせそんなもの付けなくても、彼の言葉に、表情に顔を赤くしてしまうのだから。

2016/02/21