携帯と睨み合う時間が増えた。文字を打ち込もうとして、やめる。がっつき過ぎだよな、俺。
チラリとあの3人を見て考える。相談したいのは山々だが、からかわれるのが気にくわない。まぁいいや、明日会うし。とりあえず今は我慢しようとそれから意識を外して木曜日を乗り切った。
朝が来ても、頭の中はそれでいっぱい。色々、自分なりにではあるが考えてみた。送ってく、なんて気味が悪いだろうか。一日中1人でぐるぐる考えて。
「岩ちゃん、1人でなにブツブツ言ってんの」
「いいなー、岩泉。あんな綺麗な子見つけてさ」
部活前。部室で喧しい2人がニヤリとしながらこちらの様子を伺う。なぜ急にその話をするんだ、と呆然としていると松川が口を開く。
「岩泉、わかりやすいよねぇ」
「…何がだよ」
「なんか考えてんじゃないの。相談してみ、多少助言するわ」
「そうだよ岩ちゃん、俺を誰だと思ってんの」
「…松川、ちょっといいか」
はいはい、と笑うこいつは、師匠か何かだろうか。異常な頼り甲斐があって、同級生とは思えない。
及川と花巻がギャーギャーとやかましいのは放置して、ことの経緯を話してみると、真っ先に言われたのがこれだ。
「いや、とりあえず連絡してやりなよ」
「…うざくねぇの?」
「だって、岩泉から聞いたんでしょ、連絡先。突然聞いてごめん、とかさ。連絡先教えてくれてありがとうとかさ。なんかあるじゃん」
こいつやっぱり賢いな、と感心した。多分向こうも不安なんじゃない、と一言付け足される。
「不安て、何で」
「え…だってあの子岩泉のこと好きじゃんか」
「はぁ?!」
自分でも驚くようなでかい声がさして広くない部室に響く。松川はきょとんとしていたし、及川と花巻は何事だ、と近付いてくる。
「…びっくりした、何よ」
「いやそんなんじゃねーんだって!」
「なになに?」
「いや…なんつーか、想像以上…」
呆れた目で俺を見る松川。でもそれはないんだって。そんな関係じゃない。だってまだ何も知らねーんだぞ?と言いたかったが、及川と花巻もいるので口を動かすのはやめておく。
「ねぇ、まっつんばっかりずるいよ!」
「及川に教えねぇのはまだわかる!何で俺にも言わないんだよ!」
「…綺麗だって言ったじゃねーか」
松川以外は意味がわからないと顔を見合わせて、恋愛マスターはにやりと笑って。
「岩泉のだもんなぁ、あの子は。お前に取られちゃ困るんだよ」
「え、なに!付き合ったの!ちょっと!」
やっぱり、相談するべきじゃなかった。この話は松川と2人きりの時だけにしよう。
2016/02/21